トルコの小型EVバスが日本上陸。BMWのモーターを搭載したカルサン社「e-JEST」の実力や如何に!?
日本の機械商社であるアルテックは、トルコの商用車メーカー、カルサン社が製造する小型ノンステップEVバス「e-JEST」の日本仕様車を2023年12月20日から販売開始した。このトルコ製のEVバスとはどのような車両なのだろうか?
なぜ欧州のEVバスが日本にやってきた?
欧米を中心に最先端の産業用機械と設備を輸入する日本の専門商社アルテックが国内の総販売代理店となり、トルコのKARSAN(カルサン)社製EVバス「e-JEST(イージェスト)」の販売を12月20日から開始した。なぜトルコのEVバスが日本にやってきたのか、それには次のような理由があった。
・国内のEVバスに全長6m未満の現行モデルがなかった
・カルサンが信頼できるメーカーであり、e-JESTの販売実績が充分であること。
・国内では初となる欧州のEVバスであり、日本車にはないデザインが魅力
全長6m未満のコミュニティバスは郊外や中山間地域での需要が今後高まるとされている中、小回りが利くEVバスが日本にはなかったため、アルテックは既に世界22か国で合計1000台以上の販売実績があるe-JESTの国内販売に踏み切ったという。
トルコのカルサン社とe-JESTの実績がスゴイ!
まず、トルコのカルサン社については、1970年代にはフィアットやルノーの生産を行い、90年代には日本の商用車の生産・販売といった、世界の主要ブランドのOEMを行っている会社だ。さらにバス事業では自社ブランドの「カルサン」を展開しており、自動運転レベル4での運用が可能なEVバス「e-ATAK(イーアタック)」や、10~18m級の大型電気バスなど、2022年までに5つのモデルを展開。2019年から現在に至るまでの期間で、EVバス市場で世界シェア5位を獲得している勢いのある企業だ。
次にe-JESTについては、2018年にカルサンが最初に生産開始したモデルであり、欧州、北米を中心に、世界22か国で次々に販売を開始。23か国目となる日本向けに右ハンドルモデルを新たに設計し、今後は右ハンドル圏の国でも販売していく予定だという。日本では現行のEVバスで6m未満のラインナップが欠けていることから、e-JESTには郊外や中山間地域でのコミュニティバスとしての活躍が期待されている。
e-JESTの特徴的な仕様としては、心臓部にBMWのi3と同じモーターを搭載していることや、充電方法にCHAdeMOとCCS type2の2つの規格を採用していること、そして、車重5000kgで前輪駆動方式かつ低重心設計で軽快な乗り心地を実現させていることだ。実際に試乗させてもらったが、最大勾配率25%の登坂能力は伊達ではなく、どのような発進シーンでもパワー不足を感じることはなかった。
e-JESTの販売価格は4300万円で高価に感じるが、国土交通省、環境省、東京都からの補助金対象車としての条件は満たしている状態で、あとは来年度の予算次第で実際の購入価格は変動することになるだろう。
e-JESTはどこで走る? 今後の展望は?
アルテックではジェイアールバス関東と協力体制が決まっており、e-JESTの車両整備も同社が行う予定だ。また、このアフターサービスの観点からも、運用は関東・甲信越地域からスタートする。ちなみにトルコ大使館での発表セレモニーの際には、長野県伊那(いな)市が購入に名乗りを上げている。
アルテックは今後、首都圏でe-JESTの試乗会を毎月開催し、その乗り心地の良さを体験してもらいつつ、2024年に国内販売台数100台を目指す。また、将来的には10m級のEVバスe-ATAKの導入し、自動運転への対応も視野に入れていくという。
■KARSAN 「e-JEST」諸元
サイズ:全長5900×全幅2080×全高2800mm
ホイールベース:3750mm
タイヤサイズ:215/75 R16C
車両総重量:5000kg
最高速度:時速70km
最大出力:135kW(184hp)
最大トルク:290Nm
最大勾配率:25%
航続距離:210km
バッテリー:88kWh(リチウムイオン)
充電タイプ:CCS type2(AC/DC)、CHAdeMO
乗車定員:23名以下(固定席10席+折りたたみシート2席)
価格:税抜き4300万円