クルマ好きも満足させる、デザインが良いコンパクトカー3選。
クルマの「良いデザイン」って、一体なんだろう? カーデザインの現場で20年にわたり活躍してきた渕野健太郎氏が、コンパクトカー3台を例に解説します。クルマ好きも満足させる人気のクルマにある共通点とは。
デザインが良い、とは何か?
今回は、クルマに興味を持った方が最初に買う「ファーストカー」としても、またクルマを乗り継いで質感などにこだわる方にも満足できるコンパクトカーを、自動車のデザインを20年ほどやってきた筆者が独断で選びました。もちろん他にも良いクルマはたくさんありますが、特にデザイナーのこだわりが感じられるクルマを選んでいます。少しでもクルマ選びの参考になれたら嬉しいです。
ここで言う“デザインが良い”とは、まず「プロポーションが良いこと」。そして「オリジナリティがあること」と定義します。
プロポーションが良いこと
ここで言うプロポーションとは、佇まいや踏ん張り感です。クルマは走るものですから、タイヤがしっかり主張していることが重要なんです。では、タイヤを主張するにはどうすれば良いかというと、まずキャビン(ウィンドウとルーフの部位の総称)とタイヤの関係を適切にし、なおかつタイヤ周りのボディを出来るだけ軽く見せることなんですが、これが設計要件など様々な弊害があり、なかなか理想的なカタチにするのは難しいんですね。
またプロポーションを追求すると必然的にクルマがどんどん小さく見える傾向になるので、クルマのコンセプトによってバランスを決めるのですが、今回は純粋に良いプロポーションのクルマにこだわりました。またプロポーションが良いと、質感にも繋がるんですよね。
オリジナリティがあること
みなさんは最近、動物園行きましたか? 私には小さい子供がいるのでたまに行くのですが、動物園には様々なカタチの動物がいて、例え2歳児でもゾウやキリン、ライオンなど瞬時に見分けることができます。
これは、動物の「シルエット」に大きな特徴があるからなんですね。例え真っ黒に塗りつぶしたシルエットでも、ゾウ、キリン、ライオンを見分けることが出来るでしょう。
クルマのデザインでも、シルエットからの情報はクルマの個性を認知する上でとても重要なんです。これは外で遠くから見る事が多い為で、家電など他のプロダクトにはない性質だと思います。もちろんランプやグリルで個性を出すことも重要なのですが、骨格にオリジナリティを出せれば鬼に金棒です。
この2点を踏まえて、私的に良いと思うデザインのコンパクトカーを3台選びました。
01──マツダ2
現行型は「デミオ」として2014年に発表されました。この記事を書いてて改めて思ったのですが、もう9年前なんですね! 現在のクルマにしては珍しくロングセラーで、大きなマイナーチェンジも2回行っています。このクルマは評判の高いマツダデザインの中でも一番良いと思っています。
コンパクトな車格なのに非常に躍動感がありますね。9年経っても全く古さを感じさせません。若い人はもちろん、クルマを知り尽くした方も十分に魅力を感じると思います。また、インテリアデザインもいいんですよね! 最近どのセグメントでも横基調のシンプルなインパネがトレンドなのですが、このクルマはいち早くやっています。非常にシンプルながらスポーティさと質感も兼ね備えた、秀逸なデザインだと思います。
02──プジョー208
プジョーのハッチバックは、私が若い時から魅力的なクルマがありました。ピニンファリーナがデザインに関与した205を筆頭に、走りを重視する方は106も人気でしたね。懐かしいです。そんな系統がこの現行型208に感じられます。
デザインの基本構成はシンプルで、マツダ2ほど凝ってないのですが、特にリアビューのプロポーションが秀逸ですね。クルマにおいてリアビューというのは重要で、フロントみたいにグリルなどの構成要素が無い分、プロポーションの良し悪しがモロにでます。皆さんも、リアビューがカッコいいなと思ったら、そのクルマは全体的にプロポーションが良いと思っていいです。
03──ホンダN-ONE
軽自動車というのはデザイン的に、ものすごく難しいクルマです。なんせ車幅が1480mm以下ですからね。今やグローバルで販売するクルマだとデザイン的には1800mmでも狭いと感じてしまう中、この車幅で良いプロポーションは望めません。また軽自動車は使われ方の特性上、室内は出来るだけ広くとることも必須です。しかし、その中でも良いなと感じるのがこのN-ONEです。
まずプロポーションにオリジナリティがあります。とてもシンプルなのですが、特にリアゲートやCピラーの傾きが効いてます。本来はもう少し全高を低くしたい感じだと思いますが、広さとデザインの両立をうまく取ったデザインです。私も軽自動車から1台選ぶとしたら、このクルマ一択ですね。
以上私の独断でしたが、もっとも、よりアウトドア志向の方はSUV、より空間志向の方はスライドドアのクルマを選ぶと思いますし、その中でも良いデザインのクルマはあります。今回はデザインの良し悪しがわかりやすいベーシックなクルマを選びました。
また機会がありましたらデザインの解説を行いますのでよろしくお願いいたします。
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