クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Lifestyle

最終更新日:2023.12.01 公開日:2023.11.30

タイヤ脱落事故はなぜ起こる? タイヤ交換1か月後には必ず締め具合の点検を!

乗用車の車輪脱落(タイヤ脱落)による事故報道が相次いでいる。国土交通省が発表しているデータをもとに、タイヤが脱落しやすい条件や、今すぐできる点検方法について解説する。

文=岩井リョースケ(KURU KURA)

資料=国土交通省

大型車だけでなく乗用車でのタイヤ脱落事故の報道も増えている。(c)Mono - stock.adobe.com

記事の画像ギャラリーを見る

冬期にタイヤ脱落事故が増える理由とは?

11月14日に北海道札幌市で軽乗用車のタイヤが脱落し、70m先の歩道を歩いていた女児に直撃するという痛ましい事故が起きた。また、同じく11月17~29日にかけても道内で複数のタイヤ脱落事故が起きている。そこで今回は、国土交通省が発表している大型車のタイヤ脱落事故に関するデータをもとに、一般乗用車にも共通するであろう注意事項や自分でできる点検方法を紹介する。

■冬期にタイヤ脱落事故が増える理由
国土交通省の調べによると、ホイール・ボルトの折損等による大型車の車輪脱落事故は2002年4月から2022年3月末までに1188件発生しており、2018~2022年度まででは、11月~1月にかけて事故発生が集中している。

まず、タイヤ脱落事故の時期的な要因として挙げられるのが、冬用タイヤの交換後であるということだ。北海道での事故報道が多いのはこの冬用タイヤの交換時期が早いことが原因であり、12月になると本州での事故が増え始めることになる。

2018~2022年度における、大型車のタイヤ脱落事故発生月別推移表。資料=国土交通省

左後輪が脱落しやすい?

次に、どのタイヤが脱落しやすいかについても確認しておこう。タイヤの脱落は「左後輪」に集中する傾向にある。国土交通省がまとめた各自動車メーカーからの報告によると、2022年度のデータでは、右前輪が2%、右後輪が3%、左前輪が1%、そして左後輪が94%と極めて偏っており、これは過去3年間においても同様の結果が出ている。では、なぜ左後輪が脱落しやすいのか。

・進行方向に回転するタイヤ対し、左側のタイヤはナットが緩む方向に力が働いている。
・道路の形状は道路脇に排水するために中央が高くなっているため、左側がわずかに低くなり、左側走行である日本では左のタイヤに負荷がかかりやすい。
・左折時は旋回が小さくゆっくり進むため、左後輪タイヤがねじれて負荷がかかる。
・右折時は加速して遠心力が生まれるため、左後輪タイヤに負荷がかかる。

このような条件が複雑に作用していると考えられている。ただし、直近の北海道のタイヤ脱落事故においては左前輪や右前輪が脱落しているため、乗用車の場合はまた違う要素が絡んでいる可能性もある。

2020~2022年度における、大型車のタイヤ脱落箇所。明らかに左後輪で発生しやすいことがわかる。

そもそもタイヤ脱落事故はなぜ起きるのか?

国土交通省では、タイヤ脱落事故の発生原因は「タイヤ交換時の作業不備」と「タイヤ交換後の保守管理の不備」の2つの要因と推定している。

前者のタイヤ交換時の作業不備とは、規定の締付トルクで締めていない可能性や、ホイール・ボルト・ナット等の錆やゴミを充分に取り除けていないことを指す。後者のタイヤ交換後の保守管理不備は、増し締めや日常点検が適切に行われていないことを指している。

基本的にタイヤは正しく締め付けを行っても、走行しているうちに緩み(初期なじみ)が発生する。この増し締めを行わない人もいるそうだが、タイヤ脱落はタイヤ交換後から1か月までの間に発生しやすいことが分かっていることから、タイヤ交換後に50~100kmほど慣らし走行をしたら、必ず点検を行うようにしよう。

2022年度における、大型車のタイヤ交換後にタイヤ脱落事故発生までの期間。

増し締めと、すぐに試せる簡易点検

次に、タイヤ交換後に必要な増し締めについて説明する。増し締めとは、規定のトルクよりも強くナットを締め付けるものではなく、ナットの緩みを再確認するものだ。ここで逆に強く締め付け過ぎてしまうと、ナットの破損や、他のナットが緩むことになりかねないので注意が必要だ。

トルクレンチという締め付け値が分かるトルクレンチがあれば、自分で行える。メーカー規定のトルク値を設定し、締めたナットの対角線上にあるナットから順に締めていこう。トルクレンチがなかったり、作業に自信がない場合は、ディーラーや整備工場、タイヤ店に依頼したい。

他にも手軽な点検方法として、油性マジックでマーキングを行い、ホイールに対するナット位置のズレで、調整の必要性を目視判断する方法もある。ただし、乗用車の場合はナットが窪みに埋まっているようなホイールデザインが多いので、やはりトルクレンチでしっかり確認するのが安心だ。

トルクレンチで増し締めをしている様子。(c)Jintana - stock.adobe.com

大型車の日常点検方法。乗用車用タイヤの場合、ナットは窪みに埋まっていることが多いが、ホイールカバーのデザイン次第でマーキング点検は試すことができる。

タイヤ脱落事故は、やはり寒い地域の方が発生件数も多くなる。寒い地域ではタイヤ交換の機会が多いからだろう。また、2022年度に発生した大型車のタイヤ脱落事故140件のうち、73件(52%)が自身での交換後、35件(25%)がタイヤ専業店での交換後、25件(18%)が自動車整備事業者でのタイヤ交換後の事故であった。

プロのタイヤ交換の方が事故数は少ないものの、プロに依頼しても脱落事故は発生している。なぜかというと、交換時に正しい規定トルクで締めてあっても、初期なじみで緩むためだ。これには、素人もプロも関係ない。タイヤ脱落を防ぐには交換後しばらくしての増し締めが欠かせないことを覚えておいてほしい。

また、それ以外にも、ボルト・ナットの錆や汚れ、油分の不足なども脱落事故の原因になる。これらの異変に気付くためにも、日常的なタイヤ点検を習慣化しよう。

2022年度における、大型車のタイヤ交換者別タイヤ脱落発生分布

国土交通省の車輪脱落防止ポスター

タイヤ点検を促すポスター。画像=日本自動車工業会

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)