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最終更新日:2023.11.17 公開日:2023.11.17

交通事故死した野生動物はどう処理される? そのまま燃やせる「ロードキル回収袋」が画期的な理由。

人間の生活圏に出没するようになった野生動物たち。道路上での死亡事故「ロードキル」の増加は深刻なものだ。同時に、道路管理者にとっては、増え続ける死体の処理も大きな問題となっている。ここで、西日本高速道路メンテナンス関西は大嘉産業と共に、現場の要望に応え、野生動物の死体処理に適した「ロードキル回収袋」を開発した。

文=宮本 菜々(KURU KURA編集部)

資料=西日本高速道路メンテナンス関西

道路管理者を悩ませる「ロードキル」の死体回収

NEXCO東日本・中日本・西日本、首都高、本四高速におけるロードキル死体処理件数は、年間5万件(2021年)に及んでおり、特にNEXCO西日本では年間2万800件と、NEXCO3社の中で最も多い件数となっている。

実際、NEXCO西日本の関西地区の高速道路をメンテナンスしている西日本高速道路メンテナンス関西でも、増え続けるロードキルの死体処理に頭を悩ませていた。ブルーシートやダンボールに死体をくるんでいたというが、現場からは「動物の血液がつく」「動物のにおいがつく」「体液が漏れる」「虫(ダニ)がつく」といった声があがり、野生動物の死体処理に適した袋を開発することになった。

実験を繰り返し製品化されたロードキル回収袋

(画像:西日本高速道路メンテナンス関西株式会社)

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「ロードキル回収袋」は野生動物の死体を回収して、処理施設まで運搬し、そのまま焼却できる袋だ。

ロードキル回収袋(大)。左は表側、右は開いた状態。(画像:西日本高速道路メンテナンス関西株式会社)

ロードキル回収袋の特長

ロードキル回収袋の構造。(画像:西日本高速道路メンテナンス関西株式会社)

①収容しやすい3辺ファスナー
②運搬しやすい取っ手付き
③丈夫な高強度ポリエチレン製
④体の体液や臭いが漏れにくい非透水性
⑤内容物を確認できる確認窓付き
⑥金属不使用でそのまま焼却処分できる

なお、当初は確認窓を設けていなかったが、死体の焼却処理施設の要望に応え、その場で虫を飛散させず、内容物を確認できるよう取り付けたものだという。

ロードキル回収袋のサイズ

野生動物の死体の大きさに合わせた4サイズとなっている。

ロードキル回収袋の規格。(画像:西日本高速道路メンテナンス関西株式会社)

製品の規格に対して、収容する野生動物の種類は限定していないものの、大~中はニホンジカ、イノシシ、小~ミニはアライグマ、タヌキなどを想定。ニホンジカより大型のエゾシカは角がなければ収納できる。また、ツキノワグマより大型のヒグマは大サイズでも収納できないかもしれないとのことだ。

ロードキル回収袋は大好評

ロードキルの死体を回収している様子。(画像:西日本高速道路メンテナンス関西株式会社)

ロードキル回収袋の製品化に至るまで、血液・体液漏れの防止や袋閉めでの虫飛散防止など、様々な実証実験と改良を繰り返した。

ロードキル回収袋の液漏れ実験の様子。(画像:西日本高速道路メンテナンス関西株式会社)

西日本高速道路パトロール関西で実験的に取り入れると、ロードキルの死体を収納する現場からは「動物の血液が付着しない」「動物の臭いがつかない」と反応は上々だった。また、焼却処理場まで死体を運搬している西日本高速道路メンテナンス関西や協力会社の社員からも、時間が経過し、虫の発生も拡大している死体をジッパーで閉じ込めた状態で運搬できるうえ、焼却処理施設で内容物の確認もできると、高い評価を得られた。

現在、ロードキル回収袋は、関西、中国、九州の高速道路管理者で使用されている。北海道、東北、北陸、四国などでも実験的に使用する動きがみられている。その他、猟師の購入実績もあり、ロードキルだけでなく、増加する野生動物を駆除する現場でも活用の兆しがみられている。

ただし、ロードキル回収袋は、現在、ほぼハンドメイドで制作しており、価格が高め(9700~2万1800円)のため、普及の足かせとなっているという。西日本高速道路メンテナンス関西によると、材料や工程を見直し、安価で販売できるよう検討しているという。道路事業者や野生動物の処理に関わる人々にとって、手の届く製品となることが期待される。

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