年間取締り25万件!「ながら運転」なぜ減らない? スマホ使用による事故で一発免停も。
ここ最近、「前を見て運転しよう」や、「運転に集中しよう」といった交通安全メッセージが増えている。大半のドライバーにとっては至極当然すぎてピンとこないかもしれないが、それほど“ながら運転”による事故件数の増加が深刻化している。
全然減らない! ながら運転による事故・取締り件数
2022年時点で、全体の道路交通事故発生件数および負傷者数は18年連続で減少しており、死傷者数も減少傾向にあるなか、事故件数が増えている項目がある。それが、スマホやカーナビ閲覧や通話により、前方不注意事故を起こす「ながら運転・ながらスマホ」である。
■ながら運転による交通事故件数
警察庁の統計データによると、ながら運転による交通事故件数の推移は、2017年(平成29年)に最も多い、年間2832件を記録しているが、2019年(令和元年)にながら運転の罰則が強化されたことや、コロナ禍の影響により2020年(令和2年)には年間1287件に激減している。しかし、翌年からまたじわじわと増え続け、2022年(令和4年)は年間で1424件となっている。
■ながら運転の取締り件数
これが、“ながら運転の取締り件数”になると、さらに数字が跳ね上がる。ながら運転の取締り件数は、2020年の30万9058件から2022年の25万2456件まで減少し続けているが、それでもこれだけの多くのドライバーがながら運転をしてしまっているのが現状だ。
ながら運転で捕まった場合のペナルティーは?
運転中の「ながら運転」などに対する罰則は、2021年12月に厳罰化されている。
■携帯電話で通話や、携帯電話・カーナビなどの画面を注視した場合
・罰則は6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金
・反則金は普通車の場合、1万8000円
・違反点数は3点が加算される。
■携帯電話の使用により、事故または交通の危険が生じた場合
・罰則は1年以下の懲役、または30万円以下の罰金
・違反点数は6点加算で免許停止処分
このような罰則等が定められている。
ドライバーの違反行為のうち、比較的軽微な違反であれば、反則金を納付することで罰則は適用されずに済むが、事故や交通の危険が生じた場合は“非反則行為”で罰則が適用され、一発で免許停止処分となる。
これは、運転中に見るべきではない場所を見て運転する「脇見運転」よりも重い罰則(普通車での脇見運転の場合、反則金が9000円で、違反点数は2点加算)だ。しかしそれだけ、ながら運転は厳罰化しなければ減らすことが難しい違反行為ということなのだろう。
みんなにバレている、ながら運転予備軍
ながら運転の誘惑は、走り慣れた道や、混雑している道に、高速道路のような単調な道を走行している時ほど強くなる。2023年の7月にはNEXCO中日本が猛スピードで工事規制帯にクルマが突っ込んでいく動画をまとめて、その原因であるながら運転やアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)機能の過信に注意するようSNS上でドライバーに呼び掛けていた。
高速道路の規制工事帯に猛スピードで衝突! 前を見ずに走るクルマが増えた理由
ACCは前方車両との速度を自動的に調整するもので、あくまで運転を支援する機能なので、結局は前方を見ずに、スマホなどに夢中になっていたのだろう。その結果、残念ながら高速道路において、停止車両に衝突して死亡した人や、工事規制体に突っ込む事故は、過去5年間の上半期と比較しても、2023年の上半期は増加傾向にあるようだ。
信号待ちしているクルマのドライバーを見てみると、手元のスマホを眺めているドライバーのなんと多いことか。操作や閲覧途中のスマホは、また次の赤信号や渋滞時にすぐ再開できるよう、ハンドルと一緒に握っていたり、すぐ手に取れる位置に置いているのではないだろうか。
そうなると、続きが気になって運転にも集中できなくなり、漫然運転や脇見運転を誘発することにもなりかねない。周囲の歩行者はもちろん、街中や高速道路の定点カメラにも見られていることを自覚し、しっかりと前を見て運転に集中してもらいたい。
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