ゲーマーからリアルのプロレーサーへ! 映画『グランツーリスモ』公開中
9月15日から封切りになった、日本発のゲームをタイトルに冠した映画『グランツーリスモ』。ゲームもレースもよくわからないが、映画は大好きな編集部員が鑑賞してきた。
ブロムカンプ監督がスポ根映画って?
9月15日から封切りになった、映画『グランツーリスモ』。
世界的に人気のドライビングシミュレーションゲーム「グランツーリスモ」のシムレーサーが、本物のプロレーサーになった実話の映画化だ。好きな監督の1人である「第9地区」や「チャッピー」のニール・ブロムカンプの監督作と知って、楽しみにしていた。同時に、これまで撮ってきたSFとの方向性の違いに戸惑いも感じた。作家性を感じられない単なるエンタメ映画になっていないかと不安を抱きつつ、いざ上映が始まってみれば、ブロムカンプらしさ満載の気持ちの良い作品だった。
階級社会の英国(ウェールズ)で労働者階級に生まれて、冴えない人生を送っている主人公・ヤンへのまなざし。富める者のスポーツであるカーレースのレーサーに憧れ続けるブルーカラーのヤンが、人生にたった一度の奇跡的なチャンスに必死に食らいついていく姿と今までのブロムカンプ作品の主人公たちが、ふと重なる。
挫折したかつての名レーサーであり強面で偏屈なチーフエンジニアのジャック・ソルターが、もう1人の主人公とも言えるほどの存在感を放つ。前作の「バイオレント・ナイト」の飲んだくれでバイオレンスなサンタクロースから一転、デヴィッド・ハーバーのシリアスな熱演が素晴らしい。
作中では、友情や恋愛や家族愛と人間同士のさまざまな関係性が描かれている。すれ違っていた父親との和解もさることながら、夢へ向かうヤンの努力によって、「ゲームキッズがレーサーになれる世界じゃない」とほぼ拒絶から始まったジャックと次第に信頼で結ばれていく師弟にも似た絆に、最高に気持ちが熱くなった。
リアルとゲームが交錯するレースシーン
レースシーンは若干迫力不足に感じるものの、ドローンの空撮によるダイナミックなカメラワークやギュンギュン動く内部機構のカットイン、ゲームの演出なども取り入れて、エキサイティングかつ分かりやすく見せてくれる。好きな向きには、ヤンの転戦に合わせて登場する世界各国のサーキットやレースの雰囲気も楽しいのではないだろうか。
ドキュメンタリーではなくエンタメ作品のため、ストーリーは事実と相違があるようだが、それでも一般家庭で育ったゲーマーがプロレーサーになったリアルが胸に迫る。グランツーリスモもカーレースも知らなくても、エンドロールで流れるT-SQUAREの日本語吹替版テーマ曲まで含めて期待以上に楽しめた。
少しでも気になった方には、ぜひ映画館での鑑賞をお勧めしたい。
INFOMATION
『グランツーリスモ』
・9月15日(金)より全国の映画館で字幕版/吹替版が公開中
・監督:ニール・ブロムカンプ(『第9地区』『チャッピー』)
・脚本:ジェイソン・ホール(『アメリカン・スナイパー』)、ザック・ベイリン(『クリード 過去の逆襲』)
・出演:デヴィッド・ハーバー(『ブラック・ウィドウ』「ストレンジャー・シングス」シリーズ)、オーランド・ブルーム、アーチー・マデクウィ(『ミッドサマー』)、ジャイモン・フンスー(『キャプテン・マーベル』)
・日本語吹替版テーマ曲:T-SQUARE「CLIMAX」
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