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最終更新日:2023.09.08 公開日:2023.09.08

SUV版トヨタ・センチュリーがカッコ良すぎる! 日本が世界に誇る超高級車は想像以上にスゴかった。

トヨタは9月6日、SUVタイプの新型「センチュリー」を発表した。日本が世界に誇る最上級ショーファーカーの注目すべきポイントとは? モータージャーナリストの武田公実が解説する。

文=武田公実

写真=トヨタ自動車

トヨタ センチュリー|Toyota Century

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もう一つのセンチュリーが登場

トヨタ・センチュリーのSUVが登場する……? という噂が、かねてより国内外の自動車メディアや、少なからず存在するセンチュリー・ファンを賑わしてきたが、ついにその全容が明らかになる日が訪れた。

2023年9月6日13時30分より、トヨタ自動車の執行役員・デザイン領域統括部長サイモン・ハンフリーズ氏をプレゼンターとして新「センチュリー」のワールドプレミアを実施するとともに、トヨタの公式YouTubeチャンネルでも同時にライブストリーミング中継を実施。

そこには新時代のセンチュリーを提示する、トヨタのゆるぎない姿勢が感じられた。

トヨタ センチュリー|Toyota Century

トヨタ センチュリー|Toyota Century

トヨタ センチュリー|Toyota Century

職人によって精緻な彫刻が施される「鳳凰エンブレム」

今も昔もトヨタの全精力を結集したショーファーカー

新たに登場したニューカマーは、伝統のセダン版と同じく「センチュリー」の単名で呼ばれ、事前に噂された「SUV」などのサブネームはつけられていない。つまりこの新型車は派生モデルではなく、「もう一つのセンチュリー」ということなのだろう。

リヤエンド直前までルーフの伸びたSUV的プロポーションはとるものの、ボディデザインは1967年に登場した初代センチュリー以来の伝統を継承したもの。職人による精緻な彫刻が施された「鳳凰エンブレム」や、塗装面を徹底的に磨き上げ、ボディに圧倒的な光沢をもたらす「鏡面磨き」など、ものづくりを極めた「匠」の手による細部にわたる仕上げも、これまでの歴代センチュリーに貫かれてきた日本式高級車の哲学に即したものといえる。

このボディはTNGA系アーキテクチャーを基幹としつつも、フロント各部の構造強化に加え、リヤサスペンション取り付け部に「ラゲージルームセパレーター骨格」を結合することで、ボディねじり剛性や乗り心地を大幅に向上。ラゲージルームセパレーターの室内側には「遮音機能つきクリア合わせガラス」を採用し、荷室とは切り離されたプライベート空間と圧倒的な静粛性を実現したという。

新型センチュリーにはスライド式のドアも用意されるという。

リヤのドアにはオート電動格納式ステップが備わる。

まさかのスライド式リヤドアを採用

そしてこの骨格に守られるインテリアでは、とくに後席の快適性を追求。リフレッシュ機能やフルリクライニングなど、リヤシートの主がくつろぐことのできる多様な機能を備えた2人掛けリヤシートを採用した。また、長年楽器づくりに携わってきた匠の研ぎ澄まされた音感性、卓越したテクノロジーを専用オーディオの開発に注入。生演奏を彷彿させる、心地よいリスニング空間を実現したと謳われている。

くわえて最大75度まで開くリヤドアと、サイドシルを平らにした掃き出しフロアとすることで優れた乗降性を実現。さらに驚くべきは、このカテゴリーではほかに例を見ない、スライド式のリヤドアを選択することも可能なのだ。

いっぽうパワートレーンとしては、センチュリーの名にふさわしい静粛性と、力強く爽快な走りを両立すべく、V型6気筒3.5リッターのガソリンエンジンを基幹とするプラグインハイブリッドシステムを新開発。リヤアクスルは「E-Four Advanced」と呼ばれる電気式4WDシステムとすることで、日常はBEV、長距離の移動やいざという時にはHEVとして活躍する、ショーファーカーのニーズに最適なパワートレーンとして採用したという。

さらに4輪操舵システム「ダイナミックリヤステアリング」を設定することにより、低速域では取り回しの良さ、中高速域ではシームレスかつ自然なハンドリングを実現。モーターとエンジンによる力強く爽快な加速性能を備え、ショーファーカーとしてはもちろんのこと、時にはオーナー自身でもドライブを楽しむことのできる、ドライバーズカーとしての走行性能をも確保したとのことである。

フルリクライニング可能なリヤシートを採用。

ショーファーカーとしても、ドライバーズカーとしても、期待を超える走りを実現する、とトヨタは謳う。

SUVになったセンチュリーの狙いとは?

今回の発表を受けてひとつ気になる点がある。それは日本的価値観を供する新型センチュリーは、激動のショーファーカー界においてゲームチェンジャーとなりえるか?ということだ。

かつては大型プレステージセダンやリムジンが担っていた、ショーファードリヴン用車両(お抱えの運転手が運転するクルマ)として、主に都市部で供用されるタウンキャリッジのあり方は、今世紀に入って大きく変容。移動時間をより有効に活用し、車内での休憩や、オンライン会議に参加するなど、ショーファーカーに対するニーズは明らかに多様化している。

とくに比較的若い世代のVIPや富裕層は旧来のリムジンではなく、セキュリティ装備も盛り込みやすいSUVのステアリングを運転手に任せて、自身は後席コンパートメントに収まる事例も多くなったと聞く。

それゆえ、世界最高級SUVとして名高き「ロールス・ロイス カリナン」を頂点として、「メルセデス・マイバッハGLS/EQS SUV」や「ベントレー・ベンテイガEWB」、あるいは「キャデラック・エスカレード」など、オフローダーである以上に新時代のショーファーカーとしての役割も担うべく開発されたSUVが世界各国で続々と出現しているのだが、新生センチュリーもまた、この新しいカテゴリーへと参入を目指した一台と思われる。

ボディカラーや内装など、ユーザーの好みに合ったカスタマイズが可能な、世界で一台のセンチュリーを作り上げるプランを今後用意するという。

レクサスとは違う! センチュリー独自の世界観

ホイールベースはセダン版よりも140mm短い2950mm。全長5205mm×全幅1990mm×全高1805mmと、SUV型ショーファーカーのグローバルスタンダードに適応したもの。ここで希望的観測を込めた予測をすれば、事実上の日本国内マーケット専売車両であった従来のセンチュリー・セダンに対して、この新しいセンチュリーは世界も視野に入れている可能性も否定できない。

つまり、すでにクラウンで着々と進行しているトヨタのサブブランド戦略と同様に、「トヨタ・センチュリー」というブランドから登場した、新たな超高級SUVショーファーカーとしてグローバル市場を目指そうとしており、そのための充分な資質を盛り込んだのが、この新型センチュリーということなのだろう。

そして、日本の伝統的な美を取り込んだデザインと、圧倒的な静粛性・快適性を実現する「人中心」の思想を基本コンセプトとして、日本の技術の粋を注ぎ込み開発された初代以来、唯一無二の「おもてなしの心」を備えた日本を代表するショーファーカーとして半世紀以上にわたって育まれてきたセンチュリーが、新たな局面を迎えたことにもなるのだ。

沖縄県を除く日本国内市場でのベース価格は2500万円(消費税込み)という。またボディカラーや内装など、顧客の嗜好に合わせたビスポーク的カスタマイズを可能とし、ものづくりの匠が技術の粋を込めた「世界で一台のセンチュリー」を作り上げるプランも用意されるとのことである。

同じトヨタから生み出され、すでに世界的にも絶大な評価を受けている「ランドクルーザー300」や「レクサスLX」とはまったく別のラインとして登場した「もう一つのセンチュリー」が、今後世界の新世代ショーファーカーといかに渡り合ってゆくのか……?実に興味深いところである。

ワールドプレミアとなったの東京の会場にて。写真中央がプレゼンテーションを行った、取締役・執行役員 デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏。

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