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最終更新日:2022.03.22 公開日:2022.03.22

チャイルドシート装着を簡単に。ISO-FIXタイプを選ぶ理由が分かった!

依然、装着率が向上せず、ミスユースも多いチャイルドシート。チャイルドシート製品の安全評価テストを実施、公開している自動車事故対策機構(NASVA)は、3月3日、評価テストの説明とともに、ミスユース防止に大きな効果のあるISO-FIX対応チャイルドシートの説明会を行った。チャイルドシートを利用中の方、これから利用予定の方には、ぜひ知ってほしい内容だ。

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チャイルドシートを使わないと、致死率が8倍に

 自動車事故対策機構(NASVA)では、より安全な自動車やチャイルドシートの普及を促進する「自動車アセスメント事業」を国土交通省と連携して行っている。これは、ユーザーが安全な自動車やチャイルドシートを選ぶことができるよう安全性能を評価して公表するとともに、メーカーによる安全な製品の開発を促進する事業だ。

 自動車においては、衝突試験や衝突被害軽減ブレーキ等の試験を行い、衝突したときの安全性と衝突を防ぐ性能の両面から評価される。同様に、チャイルドシートも安全性能試験を行い、その結果を公表している。

 そのNASVAが、33日、日本自動車部品工業会(JAPIA)、育児用品製造会社とともに、チャイルドシートをめぐる使用状況、ISO-FIX対応チャイルドシートなどについての説明会を行った。チャイルドシートの利用が必要なユーザーの方にもぜひ知ってもらいたいので、その内容を紹介したいと思う。

 まず、6歳未満の幼児をチャイルドシートなしで自動車に乗せて運転することは法律で禁止されているにも関わらず、警察庁とJAF2019年に調査した「チャイルドシート全国使用状況調査」では、5歳の子どもへの装着率は5割を下回っていた。ちなみに、1歳未満の子どもへの装着率だと約9割と高くなる。

チャイルドシートの使用状況調査結果(年齢層別・2002年~2019年) 出典=日本自動車部品工業会

 この結果からは、乳児の間はともかく、幼児になるとチャイルドシートなしでも問題ないと考える親が多いと推測できそうだが、事故の際の致死率は、チャイルドシートを適正使用している時に比べると約8.1倍にもなる。幼児なら大丈夫というのは大きな間違いであり、チャイルドシートなしで乗せられる子供にとっては、危機的な状況にあるともいえるだろう。

自働車同乗中(6歳未満幼児)のチャイルドシート使用有無別致死率比較(2016年~2020年)
自動車同乗中(6歳未満幼児)のチャイルドシート使用有無別致死率比較(2016年~2020年) (警察庁「チャイルドシート関連統計(2020年)」より引用) 出典=自動車事故対策機構

 このためNASVAでは、チャイルドシートの使用啓発を行うとともに、ユーザーが数多くあるチャイルドシートの中から適切な製品を選べるよう、「チャイルドシートアセスメント」を実施。結果を「チャイルドシート安全比較BOOK」として公表している。評価対象は、乳児用と幼児用チャイルドシートで、前面衝突時保護性能と使用性の評価を行っている。

 前面衝突時保護性能というのは、自動車の車室を模した台車にチャイルドシートを取り付け、乳児や幼児のダミーを乗せて時速55キロで前面衝突した場合と同様の衝撃を与えるテストである。その際の、頭部の傷害値、移動量等を測定して、チャイルドシートの安全性能を評価するわけだ。

 一方、使用性評価は、ユーザーが自動車の座席にチャイルドシートを適正に取り付けることができるかを調べるもので、取り付けやすさ、扱いやすさ、使い勝手などを評価するものである。

チャイルドシートの使用性評価試験風景

 前面衝突試験の結果は「優」「良」「普」および「推奨せず」の4段階。使用性評価試験の結果は、「取扱説明書有無」「本体表示」「本体の構造」「車への装着性」「着座のさせやすさ」の5項目が各5点満点である。そして、これらを合わせたものが総合評価となる。

チャイルドシートの安全性能評価例(チャイルドシートアセスメント2021年3月「チャイルドシート安全比較BOOK」より) 出典=自動車事故対策機構

不正確な装着方法では、死亡重症率が6倍に

 幼児、乳児を自動車に乗せるときには必ずチャイルドシートを使用する必要があるわけだが、さらにもう一つ問題になっているのがミスユースの多さだ。ミスユースとは、ユーザーが不正確な取り付け方をして使用することで、ある調査によると、乳児用の約4割、幼児用の約6割がミスユースであったという。そして、ミスユースとなる原因の7割は、乳児・幼児用共に「腰ベルトの締付け不足」であった。

乳児・幼児用チャイルドシート取付時のミスユースの内容(2019年) 出典=日本自動車部品工業会

 この締め付け不足があると、急ブレーキや衝突などの際に、チャイルドシートが大きく座席から飛び出してしまい赤ちゃんや子どもを危険にさらしてしまうのである。実際、チャイルドシートのミスユース、つまり不適正使用による死亡重傷率は、適正使用時に比べて約6倍にものぼるという。

チャイルドシート適正・不適正使用別死亡重傷率(2014年)(警察庁「チャイルドシート使用有無別交通事故関連統計2014年版」から引用) 出典=自動車事故対策機構

簡単に正しく装着できるISO-FIX(アイソフィックス)

 そこで国交省やNASVAが強く勧めているのが、ISO-FIX(アイソフィックス)対応チャイルドシートの利用である。

 従来のチャイルドシートは、シートベルトを使用してシートに固定するものが多かったが、この固定方法が複雑であったり、力が必要であったために、ミスユースの原因の一つになってきた。一方、ISO-FIX(アイソフィックス)対応チャイルドシートというのは、予め車両に設置されたシートベルト装着専用の金具に固定するタイプのチャイルドシートのことだ。

 ISO-FIX対応チャイルドシートのメリットは、専用金具に差し込む形で装着するため、簡単に、誰が付けても「ばらつき」がなく装着できることである。ミスユースの原因となる「腰ベルトの締付け不足」などは、そもそもシートベルトを使わないので起こり得ない。NASVAによると、ISO-FIX対応チャイルドシートは、それらミスユース解消の目的もあって開発されたのだという。

 33日の説明会では、このISO-FIX対応チャイルドシートの実際の使用体験や、アセスメントの試験デモも行われた。

 取付体験で実際に装着を体験したところ、ISO-FIX対応チャイルドシートは、カチャンと音がするまで金具を差し込むだけで、腕力にあまり自信のない筆者でも簡単に取り付けることができた。また、正しく装着できているかを確認するインジケーターもあり、表示が赤から緑へと変化したことで装着完了を確認することができる。これはとても安心だ。

ISO-FIZ対応チャイルドシートのインジケーター。(不適正装着時(左)、適正装着時(右)) 

 続いて行われたのは、チャイルドシートの前面衝突試験だ。こちらも使用されたのはISO-FIX対応チャイルドシートで、台座に固定された子供のダミーを乗せたチャイルドシートが時速55キロで後方に打ち出されることで傷害値を計るというものだった。凄まじい威力によりダミーの手足が跳ね上り、頭部は前後に大きく揺れる。一見していかに大きな衝撃であるのかを目の当たりにしたが、試験後に確認した時もチャイルドシートは座席にしっかり固定されたままだった。

チャイルドシートの前面衝突試験風景

シートベルトにおいても、肩ハーネス、バックル部分、そしてトップフェザー(座席とシートベルトを固定するための上部ベルト)のインジケーターには緑の表示の状態が保たれていたことから、いかにISO-FIX対応チャイルドシートが安全であるのかが証明された。

前面衝突試験後も、インジケーターは適正装着を示す「緑」が保たれていた

購入時には「安全基準マーク」を確認!

 説明会では、チャイルドシート安全基準マークについても紹介された。チャイルドシートには、下図のようなEマークがチャイルドシートに表示されている。これは、国交省の安全基準に適合した製品に付与されるものである。ちなみに、Eの横にある数字は当該チャイルドシートを認可した国番号で、43は日本、ドイツは1、フランスは2、イタリアは3、EUは42である。もちろん、どこの国で認可されたものでも使用できる。

チャイルドシート安全基準マークについて 出典=日本自動車部品工業会

 JAPIAによると、昨今、インターネット販売などで、このマークを持たない未認証チャイルドシートが出回っているという。これらは、安全基準マーク付きチャイルドシートに比べると安価であることから購入する人が多く、そのことにJAPIAをはじめ関係各所は警鐘を鳴らしている。

 未認証チャイルドシートでは、安全性能は保証されないため、事故の際に子供を守れるかどうかも分からない。チャイルドシートは交通違反にならないために使うものではなく、子供の安全を守るための道具である。購入の際には、最低限、安全基準マークをしっかり確認し、できればチャイルドシートアセスメントで高評価であった製品を選んでほしいと思う。

未認証チャイルドシート代表例 出典=日本自動車部品工業会

 今回の説明会では、デモを通じてチャイルドシートの安全性を確認すること、そして基準に沿った製品を選ぶことの大切さを改めて認識することができた。今後は、ISO-FIX対応チャイルドシートがさらに普及していくことによって、ミスユースが解消され、痛ましい事故の発生が減少していくことを期待したい。

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