その2/フードセーフティジャパン2016で見つけた 「自動鍋振り中華レンジ」と「刀削麺ロボット」
さまざまな業界関係者向け展示会・見本市という秘密の花園でひっそり咲く、関係者相手に展示される製品の数々。これらの中から専門的な不思議さが心くすぐるものを毎回ピックアップして、白日の下に紹介してしまおうというこの企画。
第2回は、東京・有明の東京ビッグサイトで行われた「フードセーフティジャパン2016」(2016年9月28日~30日開催)に出かけて、展示品を物色してきました。
食の安全・安心にかかわる、設備・技術・システムの総合展と銘打つこの展示会。
飲食にかかわる関係者に向け、さまざまな分野からの展示でアピールしていたけれど、飲食業界の門外漢である、私のハートをくすぐってきたのは、こんな展示品なのでした。
今回のえッ!?の主役、「自動鍋振り中華レンジ」(左)と「刀削(とうしょう)麺ロボット」(右)
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本場 香港の料理人も認めた、業界驚愕の自動鍋振り中華レンジ!?
会場をそぞろ歩いていると、グーン、グーンと何かが振動する音がする。音のする方を見ると、誰もいないのにレンジの上で、前後に揺するように弧を描いて中華鍋が一人で踊っているではないか!
しかも、展示のポップには、「炒飯は任せろ」なんて強気なせりふまで書いてある。
何なんだ、これは?
「これ『スーパー炒(チャ)レンジャーA』っていう名前の、自動鍋振り中華レンジなんです」と、話しかけて来たのは、この製品を扱う会社・三省堂實業の営業担当である松丸さん。
「熟練の調理人を雇えば、それ相当の人件費がかかります。しかも、鉄鍋ってけっこう重くて、直径30cmクラスだと重さも1~1.5kgくらいになります。それに具材の重さも加わりますし。鍋振りで腱鞘炎になる調理人もけっこう多いんですよ」(松丸さん)
炒飯作りで腱鞘炎とは、穏やかでない。
おいしい炒飯作りが、鉄鍋振りという重労働を伴わず、しかも熟練調理人の腕に頼らずとも力の弱い女性やパートさんで実現できるのが、この中華レンジなのでした(基本的には炒飯専用機だが、野菜炒めや焼きそばなども調理可)。
でもでも機械の力を借りるからといって、作る炒飯がおいしくなくては元も子もない。
おいしい中華の炒め物を作るために必要なのは、理想的な熱伝導を実現する中華鍋と高火力による鍋振りらしいのだが・・・。
手ぶれ写真ではありません。中華鍋がバーナーの高火力の炎に均等にあたるように振り続けられているのです。イッツ・オートマチック!
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おいしい炒飯作りのための、ちょっとした仕掛けはコレ!
そのために、この自動鍋振り中華レンジにはこんな仕掛けがあったのです。
その1.「鍋振り調節レバー」……レバー操作により、鍋振り速度を3段階に調節できる。炒め具合を見ながら調節できる。
その2.「スパテル」(攪拌装置)……スパテルをセットすることで、均一な仕上がりが可能。スパテルは、具材を攪拌する中華お玉代わり。
その3.「専用中華鍋」……鍋の内側に釘のような棒が5本出ている。鍋底から振られて、ご飯が鍋肌沿いを持ち上がってこの棒状の部分にあたるとばらける。それによってご飯がべったりくっつかず、ぱらぱらの仕上がりになる。
「この機械でできる炒飯は、ぱらぱらなのが売り物。満遍なく火を通すというのが技なんです。かたまりになったり、1か所だけ火が通っているんじゃなくて、お米一粒一粒にちゃんと火が通るのがぱらぱらに仕上がるコツです。この中華レンジではそれを可能にしました」(松丸さん)
なるほどね~。
それはそうと、重い中華鍋を黙々と振っているこの中華レンジの姿に、なんとなく健気さを感じちゃったのは私が歳をとったせいだからでしょうか?
左上のレバーで、鍋振り速度を3段階に調節できる。その下のオレンジ色のボタンは、緊急停止ボタン。
手で持っているのがスパテル。これを鍋の中にセッティングすると、鍋の動きによって具材がかき混ぜられる仕掛け。
鍋の縁に取り付けられた5本の金属棒。ここに具材があたってばらけることで、ぱらぱらな炒飯に仕上がる。
ヴィジュアル系なのに、熟練技術搭載!
今回はもう一つ。それがこれ「刀削麺ロボットSTTSR-460」。
ところで、皆さんは刀削麺ってご存知ですか?
麺生地は小麦粉を水で練ったもの。その麺生地のかたまりを板にのせ、片手に独特な形に曲がった包丁を持ち、湯の沸いた鍋の前に立って、鍋の中にその麺生地を細長く柳の葉状に削ぎ落として茹でる。茹で上がった麺には、ラーメンと同様にスープを入れたり、あんや黒酢などに絡めて食べるという、中国の麺料理の一種。
ところで、私はかつて「麻辣(マーラー)刀削麺」っていう、山椒と唐辛子による激辛味付けのものを食して、一口ごとにむせ、涙と汗が止まらず大変な目にあった過去があったのでした。話が脱線しました。すいません。
この刀削麺ロボットは、難易度が高いと言われる、麺切りを自動で行うもの。麺のかたまりを板にのせれば、ロボットが勝手にピッピッピッと絶え間なく麺を削ぎ落としていってくれる。
しかも板の上に置かれた麺のかたまりの重さをロボットが判断して、刃の付いたアーム部分が徐々に下がってきて、麺の太さを一定に保ちながら削るのが賢いところ。
まず右の板の上に麺のかたまりをのせる。刃の付いたアーム部(中央の写真がぶれて写っている部分)が板に沿うように半円状の軌跡を描き、麺を削ぎ落とす。
アーム部の刃。独特な柳の葉のような形の刀削麺は、この刃によってできる。
ロボットのコントロールパネル。作動時間や麺の太さなどが設定できる。
ロボットの顔。不敵な笑みからはできる職人であることをうかがわせる!?
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刀削麺ロボットの麺削ぎリズムは、チャーチャチャ・チャーチャチャ♪
「刀削麺をメニューに加えたいというお店の数に比べて、麺を作れる調理人の数がまだまだ少ないんです。店で刀削麺を扱いたいという需要に応えるべく、こんな機械を製品化しました」(松丸さん)
しかも、このビジュアル。楽しくなる演出面でもお店への貢献度大。やっぱりつい見ちゃうもん。子供なんかとくに喜びそうです。
ところでロボットが麺切りをしている様子を動画で見ていたら、ラテン音楽で使うパーカッションのギロを演奏しているところを連想しちゃいました。ギロは表面の溝を棒でこすって音を出す、フランスパンのバゲットみたいな形の楽器。チャーチャチャってリズムでおなじみのあれです。
ところで、お値段ですが、前述の「自動鍋振り中華レンジ」が95万円、こちらの「刀削麺ロボット」が75万円(共に税別)とのことでした。
取材を終え、ビッグサイト横の有明桟橋で一息つく。ボーッと風景を眺めていたら、もこもこした形の雲が何やら炒飯や刀削麺に見えてきた。
2016年10月11日(JAFメディアワークス IT Media部 上條 謙二)※2016年9月30日取材