五輪で話題のロードプライシングを本格導入?高速料金無料化も先に。国交省が提言
国土交通省は、社会資本整備審議会の中間答申において、高速道路へのロードプライシング導入による混雑緩和について言及した。また、2065年としていた無料開放の期限延長についても検討しているという。
料金を変えて混雑を緩和する「ロードプライシング」
新型コロナ感染拡大中に開催された東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、スムースな大会運営のためにさまざまな通行規制が実施された。中でも注目を集めたのが、交通量を調整するために通行料金を変動する「ロードプライシング」が行われたことだ。首都高では、競技大会期間中の昼間の混雑を緩和するために、日中の通行料金に1000円が上乗せされ、大きな効果を上げたという。
ロードプライシングは、競技大会期間中の8月4日に公表された、国土交通省、社会資本整備審議会、道路分科会の中間答申においても本格導入が提言された。高速道路の機能を最大限に発揮し、道路ネットワークを賢く使うための「料金の賢い3原則」の中において、施策の一つとして上げられたのである。
【料金の賢い3原則】
①利用度合いに応じた公平な料金体系
・物流等へ配慮しつつ、激変緩和としての上限料金を順次見直す
・首都高速に続いて、阪神高速等の料金体系についても見直す
②管理主体を超えたシンプルでシームレスな料金体系
・都市部の政策的課題を解決するため、外側の環状道路の利用を促進する
・ETC専用化等の取り組みを推進し、本線料金所を順次撤去
・ターミナルチャージの重複徴収の撤廃について検討
③交通流動の最適化のための戦略的な料金体系
・交通需要の偏在等に起因する混雑緩和のための料金を本格導入
・料金施策の効果を高めるため、料金に対する認知度向上に必要な広報を行う
・柔軟に料金変更できるシステムへの改良
この中の③がロードプライシングの提言だ。中間答申では、「渋滞が予測される時間帯や曜日をあらかじめ区切って交通転換を図る」ともしている。また、ロードプライシングの割増料金収入については、車線数の増加などのネットワーク強化にあてると提言されている。
ちなみに、①の公平な料金体系と、②のシンプルでシームレスな料金体系というのは、同じ目的地でもルートによって料金が異なる不公平感を是正しようというものである。たとえば現行制度では、首都高だけを使うのと、首都高と外環を使うのでは料金が異なる場合がある。そこで「圏央道の内側では経路によらず起終点間の最短距離を基本に料金を決定する」と提言されている。
高速道路の無料化を、期限を決めず先に伸ばす提言も
この中間答申では、高速道路の料金徴収期間のさらなる延長についても言及された。
現在、高速道路が有料なのは、その利用料金の収益を建設費の返済に充てるためだ。完済されれば通行料金は無料になる予定だが、料金徴収期間は2014年の法律改正により2065年に伸びた。そして今回の中間答申では、修繕や更新工事などの維持費を考慮して、さらなる延長が提言された。
これまでの延長と異なるのは、その料金徴収期間が終了する時期を取り決めず、一定期間毎に修繕・維持運用の事業計画を策定していく方針であるという点である。また、債務を完済した後、維持管理等のために料金徴収を継続するか、税負担に切替えていくのかも引き続き議論を継続していくとのことだ。