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最終更新日:2021.04.08 公開日:2021.04.08

全国初の「エスカレーターを歩かない条例」。埼玉県で10月1日から施行

2021年3月26日、「立ち止まった状態でエスカレーターを利用しなければならない」と定めた「エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」が埼玉県議会にて可決、成立した。全国初となるこの条例は、10月1日から施行される。埼玉県では、動く歩道を含むエスカレーターの安全な利用の促進に関し、県や県民及び関係事業者の責務を明らかにするとともに、安全な利用を確保することを目的としている。

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エスカレーターは立ち止まって利用を

© beeboys – stock.adobe.com

 エスカレーターは多くの公共施設などで日常的に利用されており、立ち止まって利用するものだが、必ずしも守られてはいない。そのため、国や自治体ではエスカレーター歩行は危険だとし、「立ち止まる」「手すりにつかまる」「ステップの黄色い線の内側に立つ」などの呼びかけをしてきた。

  「歩かず立ち止まろうキャンペーン」ポスター 出典:東日本旅客鉄道株式会社

 その取り組みのひとつとして、首都圏の九都県市(※)で、「立ち止まって乗ろう エスカレーター」をテーマとし、エスカレーターの事故防止に取り組んできたほか、全国の鉄道事業社や日本エレベーター協会と共同で「歩かず立ち止まろうキャンペーン」も実施してきた。それにも関わらず、歩行中による事故が後をたたない状況の中、埼玉県で、全国初となるエスカレーター内歩行を禁止する条例が成立した。

※ 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市

 3月26日の埼玉県議会で可決、成立したのは、「埼玉県 エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」。この条例により、動く歩道を含むエスカレーターにおいて、利用者には立ち止まって利用すること、管理者にはこの条例の周知の義務付けが定められた。330日に公布され、周知期間を経て101日から施行される。

 本条例では、県、県民及び関係事業者の責務を定めるとともに、エスカレーターの利用者及び管理者の義務を定めることで、安全な利用を確保することを目的としている。また、県は周知が不十分な管理者に対し、必要な指導、助言及び勧告をすることができるようになる。違反した利用者や管理者に対する罰則はないので、あくまでもエスカレーターの安全な利用を周知する目的が強いものだといえよう。

エスカレータ―における転倒事故は約7割

「第8回 エスカレーターにおける利用者災害の調査報告」:建物用途別の2年間災害発生件数

出典:一般社団法人日本エレベーター協会

 日本エレベーター協会によると、そもそもエスカレーターの安全基準はステップに立ち止まって利用することが前提となっている。5年に1度実施される同協会の「エスカレーターにおける利用者災害の調査報告」では、調査回数ごとに事故件数は増加の傾向にあり、20131月~201412月における事故件数は1475件であった。

出典:一般社団法人日本エレベーター協会

 そのうち、約7割を占める1023件が、転倒によるものという実態がある。これら転倒事故では、エスカレーターを歩いて上っていたらバランスを崩して転倒し、止めようとした同伴者も巻き添えになったケースや、杖の利用者が後方から上がってきた人に杖に接触されバランスを崩して転倒するケースなど、歩行中に発生する事故が多発している。

 これは、エスカレーターの利用で、片側を空けておくことがマナーとして定着化していることも原因であるといえる。日本エレベーター協会では、この片側空けに対しすり抜けざまに他の利用者や荷物と接触するなど、思わぬ事故を引き起こす可能性を示し歩行禁止を呼びかけてきたわけだが、利用実態は変わらずにいる。実際、同協会が実施した「エレベーターの日『安全利用キャンペーン』 アンケート(2016年度~2020年度)」の結果では、エスカレーターを歩行してしまうことがあると回答した人は、最も多い2016年度で83.9%にものぼっていた。

 このように安全利用への呼びかけの効果が乏しい中、「埼玉県 エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」成立により、エスカレーター利用における歩行を強く禁止することや、利用者と管理者それぞれの責務が明確に示されたことは画期的なことであるといえよう。

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