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最終更新日:2023.08.25 公開日:2023.08.24

対向車のハイビームが眩しい! オートハイビームに頼りすぎない運転を!

近頃、対向車がハイビームからロービームに切り替えてくれなかったり、切り替えるのが遅いクルマが多くなってきたように感じられないだろうか。原因はいくつか考えられるが、今回は「オートハイビーム」に焦点を絞って考えてみたい。

文=岩井リョースケ(KURU KURA)

対向車のライトが眩しい! 原因はなに?

夜間に青白く強力な光を向けられると、ほとんど何も視えなくなってしまう。何とかしてほしいものだ。(c)beeboys - stock.adobe.com

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最近、対向車のライトが眩しくなったという声を聞くことが多い。原因は、以下のようにいくつも考えられそうだ。

  • ヘッドライトにハロゲンではなく、明るいLEDを採用する車が増えた。
  • ヘッドライトの位置が高いクルマが増えた。
  • ドライバーの年齢が高齢化し、同じ明るさでも眩しく感じるようになった。
  • ヘッドライトを社外品の大光量ランプへ改造している。
  • 法律ではハイビームが基本とされているため、街中でもハイビームにしている。
  • 単純にロービームに切り替え忘れている。
  • ヘッドライトの光軸(角度)調整ミス。
  • ロー/ハイの切り替えをオート機能に任せている。

このようにいくつも原因が考えられるのだが、今回は最後に挙げた「オートハイビーム」に注目してみる。

写真左から、オートハイビームのオン/オフスイッチ、オートライト設定、メーターパネル内のオートハイビーム表示の例。写真=JAF

オートハイビームの精度にムラがある?

■オートハイビームとは

まず、オートハイビーム(いわゆる自動切替型前照灯。呼称は自動車メーカーにより異なる)についておさらいしよう。オートハイビームはクルマに搭載されたシステムが、前方や対向車のヘッドライト、前走車のテールランプ、街路灯などを検知し、状況に応じてハイビームとロービームを自動で切り替える機能を指す。ちなみに、日没やトンネル内など、周辺が暗くなるとライトが自動点灯するオートライトとは別の機能だ。

ロービームの照射距離は40m、ハイビームは100mになるよう整備する決まりがあるが、ハイビームは上方の遮光をしないため、前走車や対向車線を走行する車両や自転車、歩行者にとっては眩しく感じる。このため、従来はドライバーが必要に応じてハイビームとロービームを切り替えながら走っていた。

オートハイビームは、このドライバーの仕事を自動化したものだ。ハイビームで走っていても、周辺状況を検知して、相手を眩惑(げんわく)させる前にロービームに自動的に切り替えて、ドライバーの操作負担を減らしてくれる便利な機能である。ただし、オートハイビームは条件によって切替に時間差が生じたり、正しく機能しない場合もある。これについて日本自動車連盟(JAF)が「ユーザーテスト」で実証実験を行っているのでみてみよう。

■JAFの実証実験

JAFが実証実験を行ったのは2019年。街灯がない直線道路で対向車や歩行者などがいた場合、どのタイミングでハイビームからロービームに切り替わるかを調べている。テスト車両は国産乗用車3車種で、直線道路を時速60kmで走行した際の状況が調べられた。結果は以下の通りだ。

  • 対向車線の乗用車に対しては750m前後の距離で検知し、ロービームに切り替え
  • 対向車線のバイクに対しては190m~480m前後の距離で検知し、ロービームに切り替え
  • 対向車線の自転車と歩行者に対しては検知せず、ロービームへの切り替えなし
  • 同じ車線を走る先行車に対しては580m~670m前後の距離でロービームに切り替え

概ね良好な結果であるが、自動車とバイクでは差があったり、自転車、歩行者は検知できないなど、完璧とはいえない状況だ。条件のよい直線道路の結果なので、見通しの悪いカーブでのすれ違いや、悪天候時、他車の前方の横切り、起伏や段差がある道路、周囲の光源など、より条件が悪くなる場合は正しく動作しないこともあるだろう。

このため、オートハイビームは便利な支援装置ではあるが、任せきりにできるものでもない。自動切替が作動しないときには、ドライバーが手動で切り替える必要がある。特に歩行者や自転車に対しては反応しないので、より注意する必要がある。歩行者側になると分かるが、ハイビームの車が近くを通り抜けると、目が痛いと感じるくらい眩しいこともある。自転車であれば、なお危険度も高くなる。

自転車や歩行者の存在を確認したら、手動で確実にロービームに切り替えよう。写真=JAF

■眩惑への対策

対向車のハイビームなどによる眩惑は、当然ながら運転にも支障がある。警察庁では、対向車がハイビームのまま走行してくるようであれば、視点をやや左前方に移して、目が眩まないようにするのが有効としている。

■オートハイビームの進化機能

最近ではハイビームの状態を維持しながら、対向車や先行車のいる部分にだけ影を作り眩惑させず、ドライバーの視界はハイビーム状態を保てる先進機能「アダプティブハイビーム」等の機能を搭載したクルマも登場している。オートハイビームの上位機能ではあるが、やはり常に正しく動作するわけではないので、頼り切るのは禁物だ。

アダプティブハイビームは、ドライバーに必要な夜間の視界と、対向車への眩惑を防ぐ手段として、現在導入が進んでいる。写真はヘッドライトの点灯イメージ。(c)James Thew - stock.adobe.com

オートハイビームは何のためにあるのか?

このように、現在ではクルマの機能が次々と自動化されている。もちろん便利で有効な機能が多いのだが、信用しすぎたり(いわゆる過信)、期待しすぎると、機能が完全でないことや、使い勝手の悪さに不満を持つ声がでることも少なくない。

運転に慣れてない初心者や、身体機能が低下する高齢者のヒューマンエラーを防ぐには、各種機能の自動化等による運転支援は有効なものだ。事故防止にも役に立つ。一方で、現在の運転支援機能は完璧ではないので、過信が禁物なのはいうまでもない。過信が新たな危険を生み出す可能性もある。だからこそ、運転支援機能であり、あくまでも “支援” なのである。

オートハイビームも同じで、便利ではあるが、任せきりにできるわけではない。必要な際には、手動で切り替える必要がある。私たちドライバーも、完全自動運転車ができるまでは、運転技術を磨き続けるのが正しい姿勢といえそうだ。

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