電動キックボードが「特定小型原付」に。道交法改正と道路整備のこれからを考える。連載|森口将之の「あたらしい交通様式」vol.04
自動運転やMaaS(マース)の登場など、日々進化を続けるモビリティ。人の移動を大きく変える交通インフラのこれからについて、モビリティジャーナリストの森口将之が語る連載。第4回は新たなモビリティと道交法改正案について。
錯綜する新たなモビリティ
地球温暖化対策の一環として、自動車に過度に依存せず歩いて暮らせるまち、つまりウォーカブルシティの提唱が欧米を中心に進み、その過程でラストマイルを担う「新たなモビリティ」が多数誕生している。新たなモビリティとは、自転車と自動車の間に位置する乗り物に与えた国の呼び名で、電動キックボードや立ち乗り電動スクーターなどがあり、電動車いすをここに含むこともある。パーソナルモビリティという呼び方もある。
このうち電動キックボードは個人所有のものについては第一種原動機付自転車(原付一種)なので時速30km、特例電動キックボードのシェアリング実証実験については小型特殊自動車扱いなので時速15kmとなっており、規格が複数あり分かりにくいという声もある。
さらに現在、三輪キックボードなど新しい構造のパーソナルモビリティもいくつか誕生しており、これらは公道走行させる場合にどのカテゴリーに当てはめるかという課題もある。
道交法改正案で電動キックボードは「特定小型原付」に
そんな中、電動キックボードなどに関する道路交通法の改正案が、2022年4月に衆議院で可決され、2023年7月1日に施行されることになった。
改正案では最高速度を時速20kmとするなど、車両が一定の要件を満たせば、「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」という新設される車両区分に入り、16歳以上であれば運転免許不要、ヘルメット着用は努力義務、車道のほかに自転車レーンの走行も可能となるとのこと。さらに最高速度を時速20kmと時速6kmに切り替える機能を備えるなどの要件を満たした車両であれば、同時に新設される「歩道通行車」となり、時速6kmまでなら一部の歩道や路側帯の走行も可能になるという。
これと並行して国土交通省では、新たなモビリティの安全確保のために必要な技術基準などについて検討を行うため、2021年10月に「新たなモビリティ安全対策ワーキンググクループ」を立ち上げ、議論を実施。この中で議論された内容も踏まえて、改正道路交通法として施行される。
このニュースで注意してほしい点が2つある。現時点ではまだ特定小型原付なるカテゴリーはなく、電動キックボードに乗るには運転免許が必要であること、もうひとつは最初に書いたように、新たなモビリティには電動キックボード以外も含まれることだ。
具体的には、トヨタ自動車が2021年から販売している「C+walk T」、本田技研工業発のベンチャー企業が翌年発売した「ストリーモ」などだ。これらも特定小型原付になる可能性は高い。
となるとやはり、道路環境が心配になる。日本でもウォーカブルシティへの取り組みは始まっており、国土交通省では多発する自然災害に対応した安全なまちづくり、居心地が良く歩きたくなるまちづくりを推進する法律が2020年に公布されたことに合わせて、「ウォーカブルポータルサイト」を立ち上げるなどしている。
同省が発表した昨年度の予算配分額によると、道路整備は約1.76兆円に達している。この数字、大阪市の今年度予算総額とほぼ同じだ。これだけのお金があるのだから、車道だけでなく歩道、そして新たなモビリティが走ることになる自転車走行空間の整備にも積極的に使ってもらいたい。
筆者は安全のためにも、自転車を含めて歩道走行は原則として禁止し、車道あるいは自転車レーンを走ることを望みたい。そのためにも、少なくとも特定小型原付の制度が導入される予定の2023年7月までに、自転車レーンを急ピッチで増やしてもらいたいものだ。