自動運転はこういうのがいい! 沖縄で全国の自治体向けの事業がスタート
2023年3月から沖縄県北谷町の西海岸地域で、ヤマハの車両を使った自動運転移動サービスのショーケース事業がスタートした。本格リゾート地での自動運転の常時稼働は全国でも珍しく、視察目的でも観光目的でも楽しめるものになっている。
リゾート地での実証実験は貴重?
自動運転移動サービスの実証実験は、すでに多くの自治体で行われているが、定められた期間で実施する場合が多く、常時運行しているところは少ない。
那覇空港からシャトルバスでおよそ45分の距離に、人気観光エリアの北谷町(ちゃたんちょう)がある。ここでは、飛行機、バス、電車などの移動手段を一つのサービスにまとめて観光ができる「北谷観光MaaSプロジェクト」が2016年からスタートしている。また、2021年にはMaaS事業の拠点として北谷トランジットセンターがオープンし、那覇空港からのシャトルバスと連携し、MaaS事業を強化している。
この事業の人気プランのひとつに「自動運転移動サービス」があるが、これは北谷町の公道や非公道を自動走行カートで周遊するというものだ。このようなリゾート地で自動運転の実証実験を、期間を定めず継続して行う事例は全国でも珍しいそうだ。
どんなクルマに乗れる?
自動運転移動サービスの具体例として、ヤマハのグリーンスローモビリティ(ゴルフカーの公道仕様)を楽しい外観にカスタムした「美浜シャトルカート」や、ソニーとヤマハが共同開発した映像と移動を同時に体験できる車両「SC-1 ムーンライトクルーズ」での自動運転走行の体験乗車が可能だ。また、これらに加えて自身でカートを運転する「ミハマシェアカート」というレンタカーサービスと組み合わせれば、より観光やショッピングなどを満喫できるようになっている。
自動運転とリゾート地は相思相愛では?
今回紹介したサービスはこれまでも観光客向けに提供しているものだが、北谷観光MaaSプロジェクトの自動運転移動サービスを運営するチャタモビ合同会社は、2023年3月から全国の自治体向けに、自動運転移動サービスのショーケース事業を開始し、視察の要望も受け付けるという。
2022年末にデジタル田園都市国家構想総合戦略が閣議決定され、その中では「地域限定型の無人自動運転移動サービスを2025年度を目途に50か所程度、2027年度までに100か所以上で実現し、意欲ある全ての地域が同サービスを導入できるよう施策を講ずる」とある。このような背景から、自動運転移動サービス実証実験開始から6年の実績があるチャタモビでは、その成果と知見を横展開するために全国の自治体を対象とした視察誘致を本格的に行うという。
自動運転では、運転席にドライバーがいない状態の自動運転を実験する場合、最高速度を原則として時速20km以下と定められている。筆者もバスでの公道走行を試乗したことがあるが、歩行者や車の往来がある公道での時速20km以下はかなり遅く、実用までの道のりが遠く感じたことがある。
しかし、ゆっくり観光を楽しみたいリゾート地での低速走行であれば、それは贅沢な時間だ。非公道での走行もテーマパークのような非日常感を演出してくれるだろう。自動運転の実証実験はこういうのでいいのでは? と、素直に感じた次第だ。