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最終更新日:2023.01.10 公開日:2023.01.10

ボルボの新型電気自動車「EX90」を解説──電動時代のクルマの在り方とは

ボルボのモノづくりは何を目指すのか? 新型ピュアEV「EX90」の発表会の現場から小川フミオがレポート。これからの安全技術、ラグジュアリー、オール電化について解説する。

文=小川フミオ

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ボルボの人間中心主義とは

ボルボ EX90|Volvo EX90
ストックホルムでEX90を説明するジム・ローワンCEO

ストックホルムでEX90を説明するジム・ローワンCEO

 電気自動車の開発に力を入れているスウェーデンのボルボ・カーズ。2022年11月初旬に、最新モデル「EX90」を発表しました。日本でも発売されている「C40」と「XC40リチャージ」に次ぐ、3台め。最初からピュアEVとして開発されたモデルとしては、ボルボ初になります。

 満充電からの走行距離600kmというモデルも予定されているEX90。従来のXC90とならぶプレミアムSUVという位置づけです。お披露目場所になったストックホルム中心部の特設会場には、世界中からジャーナリストが詰めかけていました。見どころは、ボルボの製品づくりのコアバリューともいえる人間中心主義。ひとつは、安全性の充実。もうひとつは、環境性能です。

 安全支援機能は多岐にわたります。とりわけ注目に値するのが、LiDAR(ライダー)の搭載。レーダーを使ったセンシングで遠くまで路面の状況を正確に把握するのが、LiDARです。EX90では、ルーフ先端にそなえたセンサーによって「250メートル先の路面の状況をクルマが把握して、走行支援システムと連動させます」とボルボ。「EX90は、最新のセンシングテクノロジーによって実現された、見えない安全の盾を車内外に備えています」。ボルボが用意したプレスリリースにはそう書かれています。

乗員の安全技術もさらに進化

ボルボ EX90|Volvo EX90
落ち着いた色調とシンプルな造型と、ハイテク感のある大きなモニターが特徴的

落ち着いた色調とシンプルな造型と、ハイテク感のある大きなモニターが特徴的

 上記は、衝突安全回避と、自動運転につながる支援技術につながるものです。いっぽう、乗員を対象にした安全技術も、いままで以上に充実しているといいます。

 ひとつは、車内にカメラとセンサーを数多く設置。まずドライバーの状態を常にチェックしています。眠気に襲われたり、注意が散漫になったり、事故の原因になりかねない状況と判断した場合、コンピューターは「最初はやさしく、徐々に強く、あなたに警告を発します」(ボルボ)という。

 ドライバーのチェック機能は、いまのクルマでは”常識”的な装備となりつつあるようです。SUBARUがフォレスターでいち早く実現した「ドライバーモニタリングシステム」も同様の働きをするし、マツダでもテスト車をジャーナリストに公開しています。

 メルセデス・ベンツでは、EQSなどで、大きなインフォテイメント用モニターを助手席用に用意していますが、ドライバーが助手席のモニターに興味を示して、視線がそちらに向いてしまうのを室内カメラがチェックすると、モニター画面がシャットダウンされます。

先進技術で車内の置き去りを防ぐ

ボルボ EX90|Volvo EX90
ボディ面ではキャラクターラインが力強さを強調している

ボディ面ではキャラクターラインが力強さを強調している

 ボルボではもうひとつ、注目に値する技術がありました。車内の置き去りを防止するためのセンシング機能です。車内各所に設置されたカメラが常に車内の動きをチェック。仮に、寝ている赤ちゃんの呼吸が感知された場合、そのままドアをロックしようとすると、置き去りに対する警告が発せられるといいます。

 まだ私は体験していないため、はっきりしたことが分からないのですが、仮にドアをロックしないとか、クルマからの警告を無視して、そのまま赤ちゃんを車内に放置した場合、車内温度が一定以上に上昇すると、エアコンが自動で作動するとのこと。最大で111kWhと大容量なバッテリーを搭載するEX90だからこそ、可能になった機能でしょう。

「ボルボの基本的な考えかたは、人間はミスをするもの、ということです。クルマの役割は、そのミスをカバーして、大事にいたらないようにすることです」

 ストックホルムでの発表会場で、ボルボの広報担当者はそう教えてくれました。これ、私の好きな考えかたです。

自動車の新しいラグジュアリー

ボルボ EX90|Volvo EX90
座り心地のいいシートを7人分揃えている

ウール混紡のファブリックは感触も気持いい

 人間中心といえば、インテリアもそんなコンセプトを感じさせます。ボルボのデザイナーは、車内をリビングルームにたとえたりします。「そこはアグレッシブさをかきたてるのでなく、安心して快適にいられる場所でなくてはなりません」と、ボルボのデザイナーが私に教えてくれました。

 北欧家具を思わせる白木のような色合いのウッドパネルや、ライトグレーやオフホワイト、それにベージュといった、淡い色調を活かしたインテリアのカラーコーディネーションも、ボルボ車にしかない魅力です。

「自動車のラグジュアリーにも新しいパラダイムが生まれつつあります。私たちにとって、きらびやかであることがベストではありません。また、新しい本革の香りだけが、高価なインテリアの証ではなくなりました」

 ストックホルムで取材した、ボルボのデザイン部のシニアデザインマネージャーのセシリア・スターク氏は、ボルボのモノづくりの姿勢について語っています。

「規模の大きなドイツのメーカーと同じことをやっても分が悪いですから、私たちのオリジナリティを追求すべきだと考えています」

 EX90は、本革の使用をやめています。手触りのいい合成皮革、あるいはオプションでウール混紡のファブリックシートが用意されます。他の生命にもやさしい。地球の環境を悪化させないというサステナビリティの考えかたを実践しているといっていいのではないでしょうか。

さらに進む自動車のIT化

 お披露目会場で、ボルボカーズのジム・ローワンCEOは、「EX90は、車輪の付いたコンピューターです」。そう語っていました。

「この車は、ボルボがこれまでに作った最も先進的な車というだけではありません。お客様の生活をより便利に、より楽しくし、オール電化のメリットを最大限に享受できるサービスや機能の幅広いエコシステムへの入り口なのです」

 上記のようにプレスリリースでも謳われるEX90は、2023年に北米、次いで中国の工場で生産が開始されるといいます。どちらの工場も、クライメートニュートラル(環境を汚染するガスなどを排出しない)を目指している、とローワンCEOは強調。日本には2024年以降の導入になるようです。

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