クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2022.12.25 公開日:2022.12.25

ロールス・ロイスが電気自動車作るとどうなる? 初のピュアEV「スペクター」が示す超高級車の未来。

ロールス・ロイスもついにEVへと舵を切る。世界最高峰の高級車ブランドが作る電気自動車とは、いったいどのようものなのか。今秋、イギリス・ロンドンで初披露されたばかりの新型「スペクター」をモータージャーナリストの小川フミオが解説する。

文=小川フミオ

記事の画像ギャラリーを見る

完全電動化時代の幕開け

 世の自動車メーカーは、こぞって電気化を進めています。最近の話題は、英国のロールス・ロイス・モーターカーズが、ピュアEV「スペクター」を2022年10月に英国本社で発表したことです。

 スペクター(亡霊みたいな意)は、5.4メートルの余裕あるサイズの2ドアボディに電気モーターを搭載したモデル。モーターは前にひとつ、後にひとつで、全輪駆動となります。

 まだ開発の最終段階で、完成車は23年第4四半期まで待たなくてはなりません。でも、早ばやと世界各国から集めたジャーナリストを前に実車のお披露目が行われました。私も現場で、ロールス・ロイスのEVが初お目見えの、いわば歴史的瞬間に立ち会いました。

「スペクターは、ロールス・ロイス・モーターカーズの完全電動化時代の幕開けを告げるモデル」(プレスリリース)とされています。実際、本社で私が出合った、トリステン・ミュラー=エトヴェシュCEOは「2030年までにラインナップをすべて電動化します」と明言しました。

 スペクターの興味深い点はどこか。私が現地で取材した結果、ははあと思ったことがあります。「スペクターの眼目は、第一にロールス・ロイスであること、第二にピュアEVであることです」と前出のミュラー=エトヴェシュCEO。つまり、従来からの”ロールスロイスらしさ”が盛り込まれるところにあるようです。

EVでも残るロールス・ロイスらしさ

 あいにく、この段階でスペクターに試乗できたジャーナリストはいないようです。なにしろ先述のとおり、まだ完成にはいたっていない状態です。「だいたい95パーセントは終わっています。あとはロードテストなど実証実験が残っています」と、エンジアリングディレクターのミヒヤー・アヨウビ氏は言いました。

 ミュラー=エトヴェシュCEOが言うには、専用開発されたシャシーに新設計のサスペンションシステムは、つまるところ、ロールス・ロイスらしさを実現するための方策となります。

 目指すところはひとつ。空とぶじゅうたんのような乗り心地なんだそうです。たしかに、新しければ新しいほど、乗り心地の快適さはきわだっているような気がします。たとえば、カリナン。通常はセダンより乗り心地などで不利とされるSUVですが、実際は快適です。

 スペクターのサスペンションは、カリナンで初採用となった、プラナー・サスペンションシステムの進化形といいます。「ドライバーのインプットや路面状況に応じて正確に反応する複数のシステムから成るオーケストラのようなもの」。ロールス・ロイスではこのサスペンションをこのように定義しています。

 容量は発表されていませんが、520kmの走行距離というだけにおそらく大型になるリチウムイオンバッテリーはフロアと一体化の構造。ねじれ剛性を高めるとともに低重心化に貢献。さらに「ボディの不要なねじれを抑えてハンドリングの向上をはかる設計を採用しています」(アヨウビ氏)とのことでした。

ロールス・ロイスの美

 スタイリングは、2ドアクーペというのが驚きでした。なんでクーペですか?という記者からの質問に対して、ミュラー=エトヴェシュCEOは、クーペじゃだめですか、といった切り返しをしていたのがおもしろかったです。

「船舶を思い起こさせるような美しい曲線」とロールス・ロイスのデザインディレクター、アンダース・ウォーミング氏が表現するように、新時代の幕開けを”美”で表現しよう、ということなのでしょうか。

 車体側面下部には「ワフト・ライン」(ふわりと浮かぶライン)と呼ばれるキャラクターラインが入っていて、「マジック・カーペット・ライド」を視覚的に表現したもの、と説明されました。いっぽう、スピードボートのイメージを車体のスタイルに採り入れるのは、ロールス・ロイスの得意とするところです。

「スペクターの基本スケッチを構想する際、ロールス・ロイスのクリエーターはモダンなヨットのコンセプトに着目しました」と、プレスリリースにも書かれています。

 室内も期待どおり豪華でした。たとえば、英国のテーラリングからインスピレーションを得てデザインを 一新したとされるフロントシート。ラペル部(下襟)がメインベース部と対照的な色という組合せも選択可能です。

 イルミネーテッド・フェイシアと呼ばれる助手席前のダッシュボードには、5500個以上の”星”の集まりに囲まれた「SPECTRE」の銘板が組み込まれています。従来のモデルで好評というプラネタリウムのような天井「スターライト・ヘッドライナー」を選ぶことはもちろん可能で、スペクターではドア内張りにも採用されています。

 価格は「カリナン(4258万円)とファントム(6050万円)のあいだ」(広報担当者)とのことです。

ロールス・ロイス スペクター|Rolls-Royce Spectre
全長×全幅×全高 5453x2080x1559mm
ホイールベース 3210mm
電気モーター前後1基ずつ 全輪駆動
最高出力 430kW(予定)
最大トルク 900Nm(予定)
航続可能距離 520km(WLTP)

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)