ETC専用料金所とのつきあい方。カード挿入し忘れ、持っていない場合はどうする?
国土交通省は2030年までに、高速道路の料金所をETC専用化する計画を発表。全国の料金所でETC専用化への動きが加速している。しかし、ETCカードを挿入し忘れた、そもそもカードを持っていないなど、ETC専用料金所の利用に慣れていないドライバーも一定数いる。もし、間違ってETC専用料金所に入ってしまった場合、どうすればいいのだろうか。
2030年までにETC専用料金所が全国に
ノンストップで通行料金を精算できるETCが本格運用されてから20年が過ぎた。国土交通省の調べによれば、その利用率は全国で94.1%に達し、それを首都高速に絞れば97.9%にまで跳ね上がる(いずれもデータは2022年9月時点)という。今や高速道路の通行料金はほとんどETCによって精算される状況になったと考えていいだろう。
そんな状況を踏まえ、国土交通省は2020年9月25日、2030年度頃までに料金所のETC専用化を推進する計画を提示した。これを受けて各高速道路会社はETC専用化へ向けて動き出しており、中でも動きが速かったのが首都高速だ。2022年12月現在ですでに35カ所の料金所で”ETC専用”料金所とし、ここではETC無線通行のみが可能となっている。
ここまで利用率が高ければ、ETC専用化の推進が可能と判断されたものと思われる。ここでは首都高速を例にETC専用料金所とのつきあい方をレポートしたい。
では、ETC専用化を進める理由はどこにあるのだろうか。首都高速が発表している理由は以下の3つだ。
理由1:空いている時間帯や経路の割引など柔軟な料金設定が容易になり、混雑を緩和してお客さま(利用者)の生産性向上を図れる。
実は2022年4月から首都高速の通行料金は上限額が値上げされた。ただ、これは首都高速において最長距離を走った場合に適用される料金であって、短い距離を走った場合の値上げはされていない。一方で、これを機に新たな割引も導入された。それが「深夜割引」で午前0時~4時までは全路線で20%割引となり、これは東名高速など都市間高速などと同じ割引制度と考えていいだろう。ETC導入により、このような料金設定が容易となる。
理由2:人員確保が困難になる中、係員がいなくても料金所の機能を維持できる。
料金収受員の人員確保は首都高速にとっても頭の痛い問題とされる。収受員は主に定年後もシルバー社員として働ける条件での募集を行ってきたとのことだが、それでも24時間稼働している料金所での仕事は過酷との印象が強く、思うように人員を確保することは困難のようだ。そうした状況を踏まえ、無人で運用できるETC専用化は欠かせなかったというわけだ。
理由3:お客さま(利用者)や収受員の感染症リスクを軽減できる
コロナ禍は料金所の業務にも大きな影響を与えたようだ。特に現金の収受は短時間とはいえ、ドライバーとの接触や受け取った現金からの感染リスクも抱える。一部料金所ではこの影響によりETC限定運用をしていた時期もあったほどだ。これがETC専用となれば、その影響は事実上ゼロにすることができる。
サポートレーンでは何ができる?
そうした中で、首都高速のETC専用料金所に登場したのが「ETC専用レーン」と「サポートレーン」である。
以前は「ETC」と「一般」で分けられていたこともあり、このサポートレーンを従来の一般レーンと勘違いして、現金やクレジットカード払いをしようとする人も少なくないという。しかし、ここではインターホンを通しての後日精算を指示されるだけで、現金やクレジットカード払いによる通行は一切できなくなっている。
具体的には、サポートレーンに入ると係員からスピーカーを通して事情を聞かれるので、インターホンで応答する。仮にETCカードが挿入してあるのに通信エラーが発生した場合、基本的にはその場でETC無線通行の処理が可能だが、一部の料金所では、問い合わせ先の電話番号が伝えられる(料金所にチラシが置いてあることもある)ので、そこへ後日連絡することでETC無線通行として決済してもらえる。現金、クレジットカード、ETCカード手渡しで支払いをするつもりでいた人は、後日支払うことになるが、場合によっては、免許証を確認することもあるそうだ。
ETC専用料金所に誤進入したらどうする
しかし、レンタカーなど借りたクルマを使うとETCカードを挿入し忘れることもあるし、ETCカードを挿入してあってもETC車載器との通信トラブルなどで認識されないケースもある。さらにはETCと連携していないカーナビがETC専用料金所を案内してしまうこともあるだろう。そんな状態で、ゲートに向かってしまった場合はどうなるのだろうか。
首都高速の料金所では、基本的に開閉式バーが備えられている。先行車に続いて走行するとバーが開いたままになっていることもあり、一見するとそのまま通過できそうにも思える。しかし、ETCカードを認識されないと「STOP停車」の表示と同時にバーが下りて来てそのまま通過できなくなる。もちろん、バーが下りてくるタイミングは、料金所通過時の推奨速度である時速20km以下で走行すれば安全に停止できるよう配慮されているそうだ。
また、開閉バーが開かないことで、中には慌ててバックしようとする人もいる。しかし、これは後続車がいる可能性が高く、極めて危険な行為となることは認識しておきたい。ETCカード未挿入あるいはトラブルでバーが開かない時は、落ち着いて確実に停止し、インターホンでの問い合わせに応えることを肝に銘じよう。
では、停止できずにそのまま通過してしまった場合はどうなるか。バー自体は車両に接触しても影響がないよう柔らかい素材でできており、最悪はそのまま押し開くことも可能だ。ただ、決済が正常に行われず、未払いのまま連絡をしなかった場合は、不正通行として取り扱われ、レーンに設置してある不正通行対策監視カメラ等を活用し、通行料金および割り増し金を請求されることになる。
なので、割り増し請求がされないためにも、ETCカードなしでゲートを通過してしまった場合には、すみやかに以下へ連絡して、未払い分の通行料金を支払うことをおすすめしたい。その際には、ETCカード番号、通行日や入口、出口それぞれの料金所通過時刻、車種、ナンバープレート情報などを伝えることが欠かせない。
- 支払いお申し出窓口(03-4564-4503 平日9:00~18:00 12/29~1/3除く)
- 首都高お客さまセンター(03-6667-5855 土日祝終日・平日上記時間帯以外)
とはいえ、このような事態になれば、本人も煩わしいばかりでなく、後続車にも迷惑をかけることになる。こうした面倒なことにもならないためにも、エンジン始動時は必ずETCカードが挿入されているか、ETCカードの有効期限が切れていないかなどのチェックを普段から心掛けておきたい。どうしても、現金、クレジットカード、ETCカード手渡しでの通行を希望する場合は、事前にその通行ができる料金所なのかを確認しておく必要もあるだろう。
ただ、2030年を目処に、ETC専用化されていくのは決定事項でもある。その動きに合わせて、自動車メーカーも新車にはETCを標準装備としている例が増えているのも事実だ。実際の利用でもETCを利用すれば、距離に応じた割引も受けられるし(ETCを利用しないと短い区間でも最大料金が徴収される)、何よりもキャッシュレスで決済できる便利さはこの上ないメリットだ。もはやクルマにETC車載器を装備しない理由はなくなっているのだ。