MDプレーヤー:懐かしの車の純正オプションをしのぶ会 ①
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…時代によってクルマの流行も移り変わってきましたが、クルマのオプション(付属品)にも時代を映すものがありました。すでに販売終了となったクルマのオプション(ここでは純正アクセサリー)について、当時のカタログ写真とともにオプション本人の声として紹介する連載企画。
題して、クルマの純正オプションをしのぶ会。今回は、MDプレーヤーです。
当時を知る人は、クルマとの懐かしい思い出に浸る気持ちで、当時を知らない人は、往年の人気番組を見るような気持ちで、それぞれお楽しみください!
記事提供元/カエライフ
MDプレーヤー氏:世の中に初めてMD(ミニディスク)が登場したのが1992年とされています。その車内プレーヤーであるワタクシが、Honda車の純正アクセサリーとして誕生したのは95年ごろのことでした。
当時のカタログでの紹介文言は、「いま最も注目されているデジタルサウンドの新潮流」でした。
下の画像は、95年のHondaアコードのカタログです。「最も注目されている・・・新潮流」ですよ、今思い出してもゾクゾクします。新参者がおこがましいとは思いつつも、非常にワクワクしていたことを覚えています。
ワタクシが再生するMDというメディアは、サイズが小さい、CDに比べてダビングがしやすいなどの理由で、CDに代わる音楽メディアとして大きく期待されていたんですね。
その期待に応えるべく、ワタクシも車内の音楽ライフをより豊かにしようと尽力しました。そのかいあってなのか、2000年代に入るころまでには、カタログ上ではあのCDプレーヤー先輩と肩を並べて紙面を占めるような存在になることができました。
下のカタログ、見ていただけますか? 99年のアコードのカタログなんですが、CDプレーヤー先輩と同等の扱いを受けるまで成長したんです。
CDプレーヤー先輩が同じアコードのオプションとして誕生したのは、85年ごろのことと聞いています。ワタクシは95年生まれなので、10年も先輩なんです!しかも、カセットという往年の音楽メディアを差し置いてメジャーになってきた実力派。そんな先輩と5年もたたずに肩を並べられるようになるなんて、まるで夢のようでした。
それを象徴するように、たとえば2002年のカタログの文言では「デジタルの主役」なんて表現していただきました。主役・・・いま思い出してもホントいい思い出です。
世の中にMDが誕生してからここまでで約10年、純正アクセサリーとして誕生してから約7-8年。ただ、純正アクセサリーとしてのワタクシの人生はこのあたりが頂点になりました。
そこから急速にワタクシは勢いを失っていきます。2005年ごろにはすでに「主役」の表現は消えて、カタログ上での存在感は悲しいかな、薄れていきました。
アコードのカタログでいえば、2005年10月のカタログ上ではまだ「主役」だったんですが、同年11月のカタログ改定によって「主役」の表現はなくなってしまったんです。え、細かいですか? 恨んでいるのではないですよ。そのくらいワタクシにとって主役はいい思い出だったんです。
そしてそのまま勢いを失っていきまして、ついに2008年ごろには、後日紹介するCDチェンジャーとともに純正アクセサリーとしての役目を終えることになりました。
世の中にMDが誕生してから約10年で車内音楽メディアのトップに上りつめた・・・これはワタクシの人生の誇りです。ただ、その分、無くなるまでも早かったですが。数えてみれば13年あまりの人生でした。
でも、みなさんに車内でたくさんの音楽を楽しんでもらえて、ほんとにいい人生だったと思います。ワタクシのかけた音楽で車内が盛り上がっているのを見るのは、最高の喜びでした。
ワタクシを販売していただいた方々、ワタクシを使って車内で音楽を楽しんでいただいた方々、本当にどうもありがとうございました。
いま車内音楽の主役はスマホという便利な道具だと聞いています。若い機械のことはよく分かりませんが、みなさんが車内で音楽を楽しんでいるということだけで、ワタクシは嬉しいですね。
※本記事の内容はHonda車の純正アクセサリーを前提に書いているため、すべてが車全般に当てはまるものではない点ご了承ください。
文/神山ともひろ(カエライフ編集部)
※この記事は、カエライフに2021年4月30日に掲載されたものです。