フェラーリが50年ぶりにル・マンに参戦! ハイパーカー「499P」をお披露目。
フェラーリが半世紀ぶりにル・マンに帰ってくる! マラネロが開発したハイパーカー「フェラーリ499P」とは一体どんなレーシングカーなのか。ワークスとして挑むことになった背景を交え解説する。
50年ぶりにル・マン総合優勝を目指す
フェラーリは、ル・マン24時間レースを含む世界耐久選手権(WEC)に、2023年シーズンから参戦することを予定しているが、それに先立つかたちで2022年10月29日、ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定に沿ったレーシングカー「フェラーリ499P」を発表した。
フェラーリがル・マン24時間レースの総合優勝を競う最高峰クラスに参戦するのは、1960年代後半のプロタイプスポーツカーに参戦した312P以来で、約50年ぶりの再挑戦となる。499Pのデビュー戦は、2023年3月17日に決勝が行われる第1戦セブリング1000マイルの予定だ。
なぜ今回フェラーリがWECのLMH規定のレーシングカーを開発したかという理由は2つある。そのひとつは車両のスタイリングの自由度が高いことにある。
近年のフェラーリはLMHクラスのような純粋なワークスチームではなく、ル・マン・グランド・ツーリングカー・エンデュランス(LMGTE)というクラスに車両提供するという立場に留まっていた。このクラスは、生産車をベースにしたレーシングカーで参戦することができ、フェラーリはプライベートチームに488をモディファイした488GTEを販売していた。LMGTEクラスはWECの下位クラスでありながらも、市販車をアピールするには十分だったのだ。
ところが2021年、最上位クラスだったLMP1クラスがLMHクラスに変わったことで状況が一変する。レギュレーションが大幅に刷新されことで空力性能の要求が低くなり、スタイリングの自由度が格段にアップ。レーシングカーに市販車のデザインアイコンを取り入れられる余地が生まれたのだ。フェラーリはそこに魅力を感じ499Pを開発。最新モデルの296GTB/GTSのデザインモチーフをふんだんに取り入れた。
「人々が499Pを見たときに、すぐにフェラーリだと認識してもらえることが重要だ」と499Pの開発プロジェクトリーダーも述べているように、ル・マンやWECはF1以上に”市販車のアピールにつなげたい”という考えが欧州の自動車メーカーにはある。
これはフェラーリだけでなく、2022年シーズン中盤からWECに参戦したプジョーのLMHクラスのレーシングカーである9X8のスタイリングもヘッドライト周辺等に同様の認識が見て取れる。
しかしスタイリングが自由なだけで、フェラーリがLMHクラスに参戦したわけではない。ここにもうひつの理由が存在する。
LMHクラスは、電気とガソリンエンジンによるハイブリッドシステムや、強大なパワーを制御しながらエネルギー回生システムの効率化も追求する4WDシステムの研究と開発が行えるカテゴリーである。フェラーリはそこに「自分たちの技術を活用できるチャンスあり」と判断したのだ。レーシングカーと市販車におけるテクノロジーとプロモーション融合は彼のもっとも得意とする分野。このような背景から、フェラーリはWECに挑戦することを決定したのだった。
「499P」はプロトタイプレーシングカー伝統のネーミング
499Pのエンジンは296GT3の派生版で、3リッターV型6気筒ツインターボをミドに搭載。フロントには最大出力272psのモーターを搭載し、システム合計で最大680psを発揮する。これに7速シーケンシャルミッション&4WDという駆動系が組み合わせられている。
ちなみにフェラーリ499Pというネーミングだが、これはエンジンの1気筒あたりの排気量とプロトタイプレーシングカーであることを示す「P」という、フェラーリが車名を冠する際の伝統に則って名付けられた。3リッター(3000cc)を6気筒で割ると1気筒あたり499ccとなるという計算だ。
現在、499Pは2台が完成しており、来たるべき2023年シーズンに向けすでにテスト中。走行距離は1万2000km以上に達しているという。今後はさらに36時間連続走行等のテストを重ねる予定とのこと。
このように開発が進むフェラーリ499Pは、2023年3月17日のWEC第1戦セブリング1000マイルでデビューを予定している。ライバルであるトヨタGR010 HYBIRIDやプジョー9X8に対して、どのようなパフォーマンスを見せるかに刮目したい。
ランボルギーニやポルシェも参戦予定!?
フェーリが参戦することで、2023年シーズンのLMHクラスは大盛り上がりとなるだろうか。LMHクラス開催初年度となった2021年シーズンはトヨタのみ。翌2022年シーズンにはアルピーヌが加わり、中盤からプジョーも参戦したが、まだまだ盛況とはいえないのが実情だ(アルピーヌは2023年シーズンの参戦に関しては未発表)。
そこでWECは、総合優勝を狙えるもう1つのクラスとしてLMDhクラスの新設を予定している。LMHクラスがシャーシ、エンジン、ハイブリッドシステム、駆動系を独自に開発・調達したもので参戦できるのに対して、LMDhクラスはシャシーや駆動系の一部をWEC側が指定したものしか使用できないレギュレーションとなっている。これによりマシンの開発や参戦のコストが大幅に抑えることができるのでは、というわけだ。
現在、LMDhクラスにはランボルギーニ、ポルシェ、BMW、キャデラックといった名だたる自動車メーカーが参戦を発表している。LMHクラスとLMDhクラスではシャーシなどのパフォーマンス差はあるものの、複数の自動車メーカーがチャンピオンや優勝を争うようになれば、レースは大いに活気づくかもしれない。2023年シーズンのWECに注目してみよう。