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最終更新日:2022.10.06 公開日:2022.10.06

新型クラウン・クロスオーバーに初試乗!──いま流行は「クロスオーバー」(前編)

先日発表になったばかりの新型「トヨタ・クラウン・クロスオーバー」と「フォルクスワーゲン T-ROC」を小川フミオが初試乗。この2台に共通するキーワードは”クロスオーバー”。クロスオーバーって一体どんなクルマなの? SUVに変わる自動車業界の新たなトレンドを小川フミオが解説。今回はその前編をお届け。

文=小川フミオ

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クロスオーバーとは何なのか?

フロントマスクをブラックアウトした大胆なデザインを採用。

 トヨタ・クラウンが16代目になった。発表されたのは、2021年7月15日。そして9月の終わりに、「クラウン・クロスオーバー」に試乗できたのだった。クラウンといえば、保守本流の代表格のようなモデル。車型も3ボックスのセダン、だった。しかし今回、ファストバックセダンという大胆なスタイリングに変身した。

 クロスオーバーとは、2つのものが交差した状態。自動車界では、ことなる車型を合体させたような場合に使う。スポーツカーとSUVのクロスオーバーだってある時代なのだ。クラウン・クロスオーバーの場合は「セダンとSUVを融合させた」とトヨタでは説明する。

ルーフラインがテールエンドまで続くファストバックスタイル。

 真横から見るとよくわかるのだが、ルーフラインがリアエンドまで続くような、いわゆるファストバックスタイルだ。しかもフロントマスクはグリルが目立たない。LEDを使ったシグネチャーランプと薄いヘッドランプとが、クラウンの名に不釣り合いと思えるほどのアグレッシブな印象を作っている。

 思い起こすと、7月の発表会場に出向いた私(たち)は驚いた。なんと4つの車型が同時発表されたからだ。今回記事で採り上げるクロスオーバーは、当初から「最初に発売するモデル」とトヨタ自動車自身が発表していたもの。

予想外の裏切り

 私が乗ったのは、2.5リッターのハイブリッドモデル。おおざっぱにいえば、従来のクラウンにも設定されていたドライブトレインだ。E-Fourという、トヨタのハイブリッド車に多少なりとも詳しいかたなら先刻ご承知の、前輪駆動ベースで、後輪をモーターで駆動するシステム搭載車である。

 なので、斬新なファストバックスタイルは採用しているものの、中身にそれほどの新味はないかも、とタカをくくっていたのは事実。しかも、今回は前輪駆動用プラットフォーム採用だし……。ところが予想は嬉しい方向に裏切られた。すばらしく完成度が高い。

 足まわりは金属バネと油圧ダンパーという、オーソドックスなもの。ただし「マジックカーペットライドを追求しました」とシャシー設計担当者が語ってくれたように、徹底的に煮詰められたそうだ。

 はたして、高速巡航時も、カーブを曲がるときも、乗員が不快な感じで揺さぶられたりしない。乗っているひとの姿勢は常にフラット。つまり頭が変に動いたりしない。「さまざまな方向からのG(重力)をいなすよう、サスペンションシステムの設計で私たちは心掛けました」と、さきの担当者は言う。

 同時にもうひとつ、新しい秘密兵器が導入された。電気モーターを使った後輪操舵システムだ。低速では操舵輪と逆位相に後輪に舵角が付くことでホイールベースが短いクルマのように取り回し性が向上。いっぽう高速では、同位相に4つの車輪が動き、今度は仮想ホイールベースが長くなり走行安定性が増すというのが、このシステムの見どころである。

「クラウンではつねに扱いやすさが求められているので、後輪操舵システムはお客さまのニーズに合致すると思います。クラウンだから、と開発のとき意識したのは、逆位相になったときのクルマの動きの自然さを維持することです」

 クルマのなかには後輪が前輪と反対の方向に動いたとき、いきなりぐーっと不自然なほどの動きをするものもある。私が体験したクラウン・クロスオーバーでは、そんなこと、いっさいなし。

 外から見ていると、後輪がけっこう動いているとわかるそうだけれど、乗っている身としては、まったくといっていいほど、わからない。けっこう小回り効くなあと能天気に喜んでいたのだった。

日本のクラウンは世界で受け入れられるか?

クリーンで広々感が強調された前席空間。

 今回のクラウン・クロスオーバーは、従来のTHS-Ⅱでおなじみのトヨタ独自のシリーズパラレル式ハイブリッドを搭載。最初は電気モーターで走ったあと速度が上がるとエンジンも始動する。

 カーブで積極的に走ろうというとき、予想以上に力強い。エンジン音は静粛とまではいかないが、モーターとともにしっかりトルクを出して、いいペースでクルマを走らせてくれるのだ。力不足感はほぼなし。

 室内は広いうえに静粛性が高く、クラウンへの期待に応えてくれると思う。造型感覚はスタイルに対してちょっと保守的すぎるかなと感じられるのが、やや惜しい点。

オプションの「アドバンスト・レザーパッケージ」装着モデル。

後席も空間的余裕がたっぷりある。

 クラウンのデファクトスタンダード(事実上の標準)がクラウン・クロスオーバーになると、開発を指揮した皿田明弘チーフエンジニアが言うように、広いユーザー層をカバーするためには、ある程度の保守性は、しようがなかったのだろうか。

 今回のクラウンは輸出市場も視野に入れているそうだ。世界のマーケットで、ファストバックスタイルを採用しているクルマはけっこう多い。

BMW 4シリーズ グランクーペ

アウディ A7 スポーツバック

フォルクスワーゲン・アルテオン

 例をあげると、アウディ A7 スポーツバック、メルセデス・ベンツCLS、やBMW 4シリーズや6シリーズのグランクーペ、フォルクスワーゲン・アルテオン、それにテスラ・モデルS。探せばもっともっとある。

 どのモデルも市場性を獲得している事実からかんがみるに、クラウン・クロスオーバーにも善戦が期待できる。

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