めぐり逢えたら乗ってみたい、最新バス車両6選!
7月8日に大阪・舞洲スポーツアイランドで開催された、「2022バステクフォーラム」。その会場では最先端をゆく中国製のEVバスや、欧州の伝統的なバスに、日本の安全性・快適性に優れたバスが並び、どのバスも運用目的ごとに異なる個性を輝かせていた。そこで、イベントに出展・情報解禁された中でも特に気になったバス6台を紹介する。
バスの祭典で出会った、印象的なバス6台を紹介!
バス関連イベント「2022バステクフォーラム」では、自動運転バスやEVバスの試乗体験に、ドライバー異常時対応システム(EDSS)のデモ制動などが行われた。(自動運転バスや後付けEDSSについては関連記事を参照。)その他にも、車両の展示や機器・用品・システムの展示があり、イベントは盛況であったが、今回は印象的だった車両を紹介していきたい。
1.世界最高クラスの低消費電力を備えたコミュニティバス
2.EVバス先進国で実績があり、災害時にも強いバス
3.欧州生まれの2階建てバス
4.豪華個室「GREEN ROOM」完備の高速バス
5.メルセデス・ベンツの中型観光バス
6.英国Switch製ロンドンバスEV仕様
消費電力制御と軽量ボディにより航続距離290kmを実現
1.EVモーターズ・ジャパン【F8 series4-Mini Bus】
EVモーターズ・ジャパンは福岡県北九州市にある日本のベンチャー企業で、商用EV(バス・トラック・トライク)の開発・販売からエネルギーマネジメント事業まで幅広く展開している。
このF8は同社が開発したアクティブ・インバータにより、発進、坂道走行、加速時・減速時において、スムーズな出力制御が行われ、バッテリー劣化防止と世界最高クラスの低消費電力を実現。さらに、車両ボディの一部に長寿命・軽量のコンポジット素材(FRP)などを使用することで、ボディを軽量化し、同時に耐久性も向上している。なかでも炭素繊維強化プラスティック(CFRP)は鉄の5分の1の重量でありながら、鉄の5倍の強度を持っており、低熱膨張率、高温耐性、耐腐食性にも優れている。これらの低消費電力システムと新素材の採用により、耐久年数は20年もあり、長寿命のバッテリーは1回の充電で290kmもの長距離走行が可能なコミュニティバスが完成した。
この車両は今年の4月ころから那覇市で路線バスとして運用を開始している。また、同社の10.5mサイズの路線バスが2023年に伊予鉄グループで運用される予定だ。
F8 series4-Mini Bus(ダブルドア)
全長:6.99m
全幅:2.1m
全高:3.1m
重量:5,750kg
座席数:11席
乗車定員:29人[座席10+立席18+運転席1]
バッテリー容量:114kWh
航続距離:290km
最高速度:時速80km
充電規格 CHAdeMO 2.0準拠
中国・欧州で実績あり。防災ステーションにもなるEVバス
2.アルファバス【ECITY L10】
中国では2019年にエコカー普及戦略が発表されている。以降、公共車両の電動化への取組みが急ピッチで進み、EVバスの分野では世界を牽引している。そんなEVバス先進国の中国で設計・製造を行うアルファバスの特長は、世界各国の規格に合わせてパーツや仕様を変更できる柔軟性にある。
日本仕様においては、車両のサイズはもちろん、ノンステップバスでバリアフリー対応、EV車両の命であるバッテリーは日本製で、充電規格はCHAdeMO2.0もクリアしている。また、今回のイベントで注目を集めた、ドライバー異常時対応システム(EDSS)も搭載しており、安全性も高基準に仕上がっている。
実績も申し分なく、中国では主要都市の上海、成都、常州、無錫、南通に、欧州ではスペインやイタリアの都市部の路線バスにも採用されている。
EVバスは緊急時には非常用電源として活用できる。このECITY L10では全席にUSB電源の設置と、100Vコンセントが外付け非常用電源として設置され、スマートフォンやノートPC以外にも、家庭用電源として使用することができる。バスそのものが「移動できる防災ステーション」になるわけだ。
【ECITY L10】
全長:10.5m
全幅:2.485m
全高:3.26m
重量:11,550kg
乗車定員:76人(座席23+立席52+乗務員1)
航続距離:250km
最大出力:152kW
トルク:2700Nm
バッテリ容量:296kWh
充電規格:CHAdeMO 2.0準拠
欧州では定番のスカニア×バンホールの2階建てバス
3.西日本JRバス【アストロメガ】
スウェーデンで100年以上の歴史を持つ、産業用エンジンメーカーのスカニア社製エンジンとシャシーに、ベルギーの車体製造メーカーであるバンホール社製のボディを採用したダブルデッカー(2階建車両)バスが、この「アストロメガ」である。欧州仕様では日本の交通規格で走れないため、日本仕様にダウンサイジングされている。
ダブルデッカーということで、2階席からの見晴らしは素晴らしく、座席数も最大で58席(2階が4列シート仕様の場合)も確保できる。
安全装置も充実しており、全周囲俯瞰カメラシステム、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報装置、横滑り防止装置(ESC)、定速走行・車間距離制御装置(ACC)などを搭載している。
現在では2階建てのバスは日本では製造されておらず、アストロメガは本場ヨーロッパのダブルデッカースタイルを味わえる数少ない車両である。2022年仕様のこの車両には、京阪神―東京線でのみ乗ることができる。
【アストロメガ(3列グランシート)】
全長:11.99m
全幅:2.5m
全高:3.78m
重量:19,345kg
座席数:39席(1階席10+2階席29)
エンジン:直列6気筒ディーゼル
排気量:12,742cc
最高出力:410PS
トルク:2150Nm
次ページでは
豪華な個室を備えたバスを紹介
豪華な個室を備えた高速バス
4.全但バス【ラグリア(グリーンルーム仕様)】
広々としたパウダールームやゆったりとした座席を採用し、快適性を追求した高速バス「LuxRea(ラグリア)」に、2021年12月から完全個室の「グリーンルーム」が設置され、現在、大阪―城崎温泉・豊岡間と、大阪-浜坂・湯村温泉間で計2両が運用されている。
グリーンルームとは車両後方に設置された1人用の個室のことで、通常シートの4席分のゆったりとした空間が確保され、深いリクライニングが可能だ。また、個室専用の空気清浄機能の他に液晶モニター(城崎温泉・豊岡―大阪のみ)も設けられ、バスに設置されたカメラで外のライブ映像を視聴することができる。
このグリーンルームが実装されている4つの便では、いずれも温泉街が始発点か終着点となる。また、大阪からの所要時間は3時間20分弱であることから、リラックスした状態をより持続させたい人は、ぜひ利用してみて欲しい。グリーンルームは通常の片道運賃に1,000円の追加料金で利用が可能となり、コストパフォーマンスにも優れている。
【ラグリア(グリーンルーム仕様)】
全長:11.99m
全幅:2.49m
全高:3.46m
重量:15,295kg
座席数:28席
グリーンルーム:2部屋
優雅な観光向けメルセデスのバス
5.メルセデス・ベンツ【Atego Mercedes架装バス】
かつてGM社のハマーなどの高級車を扱っており、車両の輸出・輸入のエキスパートである三井物産オートモーティブは、メルセデスAtegoのベースシャシーをバスに架装した高級観光送迎バスの取り扱いを発表した。
車長8.9mの中型バス車両で、座席は28席+ドライバーでレイアウトは2席×2×7列。最新Euro6エンジン搭載で6速AT、衝突被害軽減ブレーキ、車両安定性制御装置、車線逸脱警報装置といった安全装置も標準装備されている。
送迎、観光に適しており、観光客にとっても特別感を味わえる、ワンランク上のラグジュアリーなバスとなっている。実車は2023年の夏ころにデモカーが到着予定だ。試乗希望者には試乗会の開催も可能とのこと。
【Atego Mercedes架装バス】
全長:8.995m
全幅:2.4m
全高:3.195m
重量:10,500kg
座席数:29席(座席28+運転席1)
エンジン:直列4気筒 5.1L EuroVI e
トランスミッション:6速AT
まさにスタイリッシュなロンドンバス
6.Switch Mobility Japan【METROCITY】
ロンドンではEVバスの導入が進んでおり、2階建てバスを含め、現在300台ものSwitch Mobility社のEVバスがロンドンを運行している。その中で、このMETROCITYはロンドンバスの主要モデルの一つでありながら、日本の路線バスと仕様が近く、若干の設計変更で日本の交通法規や路線バス要件を満たすことができるため、日本での取り扱いが検討されている。
Switch Mobility社のバスは一般的なバスよりも軽量にできているため、電費性能に優れている。また、大容量のバッテリーやEVシステムを既存のディーゼルエンジンと同等のスペースに格納できるため、ディーゼルバスと遜色ない室内空間を確保している。
ロンドンバスの中でもスタイリッシュで定評のあるMETROCITYは、日本でも目立つ存在になりそうだ。
【METROCITY】※下記諸元は英国仕様
全長:10.8m
乗客数:最大60名
最大出力:250kW
バッテリー容量:240kWh
航続距離:240km
充電規格:CHAdeMO準拠