これは自転車?無人で走る自転車をマサチューセッツ工科大学が開発中!
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)では、無人で自動走行をこなし、ユーザーを迎えに行く自転車の試作機を開発し、公開している。シェアサイクル向けに開発が進むこの自転車には、どんな秘密があるのだろうか?利用後も自ら次の目的地に向かう自転車の姿を追ってみよう。
自動走行時は3輪車に変形する!?
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)では、無人で自動走行をこなし、ユーザーを迎えに行く自転車の試作機を開発し、公開している。
この自転車は、通常の自転車として使用できるうえ、ヒトがペダルを漕がなくても、さらにはヒトが乗車していなくても自律走行ができる自転車として開発された。そしてなんと、無人で自動走行する際には、トラックのダブルタイヤのようになっている後輪が左右に1輪ずつ広がって3輪自転車となり、低速走行時でも転倒しないようにバランスを保っている。また、3輪形態では後輪が自立スタンドの役割も果たすため、そのまま停止・駐輪することも可能だ。
理想的な利用方法
この自転車をシェアサイクルで利用する場合、ユーザーがアプリからレンタルすると、最も近くで待機している自転車が迎えに来てくれる。そして、利用者が目的地に到着した後は、自転車は自ら次のユーザーの元に向かって行く。オーダーがなければステーションに戻り、充電を開始するという、とてもシンプルでイメージしやすい仕様だ。
次ページでは
自転車開発の背景と、市場投入での効果を紹介
MITが自転車を開発した背景
シェアサイクル業界が抱える課題として、MITはステーションに配置されている自転車の台数に偏りがあることを挙げている。例えば毎朝の通学・通勤パターンが類似していることで、自転車の所在が街の一部に集中し、他の地域には自転車が不足したままであること。また、いつも安定した台数がステーションにあるとは限らないことだ。
その結果、利用者にとっては必ずしも利用しやすい状態であるとは言えない状況にもなる。かといって、その課題を解決するために、業者がステーションをむやみに増設している現状も問題である。街は過剰なステーションと安価な自転車で溢れ、ドックレスシステム(返却不要で乗り捨て可能、回収と再配置を業者が行うサービス)により、乗り捨てられた自転車が都市環境に悪影響を与えているという。
市場投入での効果と実装への道のりは?
MITによると、開発中のこの自転車が普及した場合、既存のステーション返却型では3.5倍、ドックレス型では8倍もの運用の効率化が期待できるとのことだ。
しかし、実用までの道のりは容易ではない。MITは独立した組織の開発だけでは都市での自動運転システムは機能せず、他にもカーシェアリング、マイクロモビリティ、交通法、政府など、さまざまな分野・組織と連携するなど、都市全体での変革なくして自動走行する自転車は実装し得ないと考えている。
ユーザーにとって、自分の自転車を停めている駐輪所や、シェアサイクルのステーションを探し、自転車を取りに向かう手間が省けるメリットは非常に大きい。
MITは、シェアサイクル向けの自律走行自転車のほか、車いすやボート、自律歩行するロボットなどの開発も進めているという。そんなMITが描く、革新的な都市とはどういった世界なのか。続報を楽しみに待ちたい。
写真=mit media lab