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最終更新日:2022.05.02 公開日:2022.05.02

【ドライブ&トレッキング】 豊かな自然と田園風景を楽しむ宮城オルレ

春から初夏というドライブに絶好の季節が近づいてきた。そこで景色を楽しめるドライブ&トレッキングコースを紹介する。今回紹介するトレッキングコースは、海岸線や森林の木々、温泉地、田園などの風景が楽しめる東北、宮城県にある宮城オルレだ。コースは気仙沼・唐桑コース、奥松島コース、大崎・鳴子温泉コース、登米コースの4つがあり、その近隣のドライブスポットも紹介する。

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癒しと共に生きる道、宮城オルレ

奥松島コースの絶景ポイントの1つ「大高森」 写真=小林祐史

 宮城オルレは、2018年に社団法人済州(チェジュ)オルレの協力の元、整備されたトレッキングコースで、韓国の済州オルレの姉妹道となる。三陸の海岸線や自然豊かな森林の木々の間を縫う道、水田地帯にある生活道などをコースとしたのが宮城オルレである。コースは気仙沼・唐桑(からくわ)コース、奥松島コース、大崎・鳴子(なるこ)温泉コース、登米(とめ)コースの4つからなる。それぞれに地域の特色を味わえる風景が散りばめられており、自然の癒しを堪能できるトレッキングが楽しめる。また記事内では、各コース近隣のドライビングスポットもあわせて紹介しよう。

 ちなみに「オルレ」とは、済州の方言で「通りから家に通じる狭い路地」という意味の言葉その方言をトレッキングコースの名称「済州オルレ」に取り入れると、韓国国内でも広く知られる言葉となり、以降は「トレッキングコース」や「歩く道」という意味でも用いられるようになったそうだ。

三陸の海岸沿いを歩く気仙沼・唐桑コース

リアス海岸の景観が楽しめる気仙沼・唐桑コース。写真左の岩の上に緑色の海水が溜まっているところは、イザナギの神とイザナミの神が鎮座された場所とされる「陽沼・陰沼(おぬま・めぬま)」 写真=小林祐史

 最初に紹介する宮城オルレは、気仙沼・唐桑コース(気仙沼市)だ。宮城県北東端にある唐桑半島を周るトレッキングコースで、三陸のリアス海岸や漁港、田園などの風景が楽しめる。同地は2011年の東日本大震災で大きな津波で被災したことが記憶にのこっているが、それ以前も大きな津波で幾度か被災しているのだ。そんな自然災害の脅威を知りつつも、同時に共存する文化・生活が根付いている地でもある。

 それらの特色を感じることができる宮城オルレの気仙沼・唐桑コースは、スタート地点が唐桑半島の先端にある「唐桑半島ビジターセンター」になる。そこから半島の東海岸沿いに北上して、「半造(はんぞう)」がゴールという約10kmで所要時間45時間のものだ。なお各コースのスタート・フィニッシュ地点の近くには駐車場が用意されているので、安心して車で行くことができる。

気仙沼・唐桑コースのスタート地点である「唐桑半島ビジターセンター」。スタート、フィニッシュの地点や、絶景ポイントには、写真左の朱色の馬のような「カンセ」というオブジェが設置されている。宮城オルレを象徴するオブジェだそうだ。  写真=小林祐史

奇岩、絶壁ありの三陸のリアス海岸

荒波に削られた岩々による風景が楽しめる気仙沼・唐桑コース。写真は巨釜の「折石」。 写真=小林祐史

 自然の景観の見どころとしては、リアス海岸の奇岩や絶壁が中心となる。その中で津波の脅威を実感させるのが「神の倉の津波石(かんのくらのつなみいし)」だ。東日本大震災で海底から打ち上げられた巨大な岩たちで、大きい物は直径約6m、重さ推定150tもある。ほかにはオプションコースにある巨釜(おおがま)の「折石(おれいし)」も必見のポイントだ。高さが16mある直立した岩で、1896年の大津波によって先端が折れたことからこの名がつけられた。

入江を塞ぐようにある複数の岩が「神の倉の津波石」。右下は東日本大震災前の入江 写真=小林祐史

自然と共存する文化・生活

唐桑半島ビジターセンター近くにある「御崎神社」 写真=小林祐史

 この地の文化・生活に関するスポットとしては、1000年以上の歴史があり大漁祈願や縁結びのご利益がある「御崎神社(おさきじんじゃ)」や、神の使いとされたクジラを祀った鯨塚などの神社や塚などがある。

御崎岬の「鯨塚」 写真=小林祐史

 また唐桑は遠洋漁業が盛んな地域だった。それで財を成した人々は、屋根瓦や床の間、欄間などの装飾を凝らした邸宅を建てることが昭和3050年代に流行する。そのような家々を「唐桑御殿(からくわごてん)」と呼ぶようになったそうだ。宮城オルレのコース近隣にも唐桑御殿は多く現存しており、それらを一望できるスポットがある。

宮城オルレの絶景スポット「唐桑御殿の街並み」。この場所には「カンセ」が置かれている 写真提供:気仙沼市観光課

<ドローン空撮&スライドショーで見る宮城オルレ気仙沼・唐桑コース>

動画・写真=小林祐史

<気仙沼・唐桑コース スタート地点(唐桑半島ビジターセンター)アクセス>

仙台方面から:E45三陸沿岸道 唐桑半島ICから国道45号など経由で約15
岩手方面から:E45三陸沿岸道 陸前高田長部(りくぜんたかだおさべ)ICから約25
またはE4東北自動車道 一関(いちのせき)ICから約1時間30

気仙沼・唐桑コース近隣のドライブスポット

気仙沼大島大橋(鶴亀大橋)
所在地:宮城県気仙沼市三ノ浜~気仙沼市磯草

本州と気仙沼大島をつなぐアーチ橋 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 気仙沼湾に浮かぶ有人島である気仙沼大島と本州を結ぶ県道218号にあるアーチ橋が「気仙沼大島大橋」だ。鶴亀大橋とも呼ばれており、20194月に開通。橋の両端には車を駐車できる転回場があり、そこから歩いて橋を渡れる。”緑の真珠”と呼ばれる気仙沼大島の緑と気仙沼湾の青のコントラストを楽しめるドライブスポットだ。


次ページは奥松島コース

静かな海と島々が織りなす日本三景の奥松島コース

奥松島の太平洋側の絶景を楽しめるスポット「稲ヶ崎公園」 写真=小林祐史

 日本三景である松島の東端に位置する奥松島コース(東松島市)は、松島湾で最大の島である宮戸島を巡るトレッキングコース。同地近隣には縄文時代の史跡が多くあり、コース内でも「奥松島縄文村歴史資料館」や「里浜(さとはま)貝塚」などで、その歴史を学ぶことができるコースともなっている。さらに360度のパノラマで松島湾や太平洋の絶景を楽しめる「大高森(おおたかもり)」や「稲ヶ崎公園」もコースに入っている。

※奥松島縄文村歴史資料館は復旧工事のため2022428日まで臨時休館

 スタート地点は、大高森のふもとにある、奥松島遊覧船案内所や食堂、売店などがある観光拠点の「あおみな」だ。そこから反時計回りに、大高森~波津々浦(はつつうら)~稲ヶ崎公園~新浜岬(しんはまみさき)~大高森~あおみなに戻ってくる約10kmで所要時間、約4時間の周遊コースになる。

陸の緑も豊富な奥松島

「さとはま縄文の里史跡公園」には日本最大級の規模の貝塚がある。春には菜の花が咲くスポットでもある 写真=小林祐史

 日本三景でもある松島といえば”海の景色”というイメージが最初に浮かぶだろう。もちろん奥松島コースにも海の景色がたくさんあるが、一方で陸の絶景スポットも多い。春に菜の花が咲き乱れる「さとはま縄文の里史跡公園」や、巨大な御神木の「タブノキ(椨の木)」、田園風景が広がる「陸の奥松島」などだ。そしてこれらをつなぐ林道では、四季折々の草木を見ることができる。

「タブノキ」は「さとはま縄文の里史跡公園」の裏にある御神木 写真=小林祐史

「陸の奥松島」は昔、海だったところを埋め立てて水田などにした場所。写真は朝に降った雨が日光で蒸発して、水田が霞んでいるところ。秋になると米や麦などで黄金色に染まる 写真=小林祐史

「大高森」の道。奥松島は隆起した岩がむき出しになっている土地が多く、岩の間を縫うような道がある。道の奥に見える建物は「大高森薬師堂」 写真=小林祐史

「稲ヶ崎公園」の林道。道に覆い被さるように椿が群生し、花が満開になると赤に彩られた椿のトンネルとなる 写真=小林祐史

海のパノラマを楽しむ

海水浴場がオフシーズンだと静かな海が癒してくれる「月浜海水浴場」 写真=小林祐史

 そして海の絶景では「大高森」や「稲ヶ崎公園」のように整備されたポイントや、「波津々浦」のように生活に溶け込んだ場所がある。加えて高い位置にある林道や里道で後ろを振り返ると、素晴らしいパノラマが広がっていることも。前方だけでなく、後方も見逃せない絶景スポットだらけなのが奥松島コースだ。

静かな入江の「波津々浦」は季節により海の色が変化する 写真=小林祐史

“松島四大観”の1つである「大高森」山頂の展望台 写真=小林祐史

<大高森パノラマ動画&スライドショーで見る宮城オルレ・奥松島コース>

動画・写真=小林祐史

<奥松島コース スタート地点(あおみな)アクセス>

E45三陸沿岸道路 鳴瀬(なるせ)奥松島ICから奥松島公園線経由で約14

奥松島コース近隣のドライブスポット

東松島市東日本大震災復興祈念公園・震災復興伝承館
所在地:宮城県東松島市野蒜字北余景56-36
開館時間 9時~17時(伝承館は第3水曜日が休館日)

津波を被災した震災遺構である旧JR野蒜駅舎(左)が保存されている。写真右の白い建物が旧駅舎を利用した「震災復興伝承館」 写真=小林祐史

 「東松島市東日本大震災復興祈念公園」は、震災の記録と教訓を後世に伝える施設。公園内には、慰霊碑が建つ広場、旧野蒜駅を改修した震災復興伝承館、震災遺構として旧JR野蒜駅のプラットホームなどがある。

 特に野蒜駅は津波と地震により、プラットホームが陥没したり、線路がぐにゃりと変形したままとなっている。加えて駅舎だった震災復興伝承館には、震災からの復興の歩みを記録した写真や映像、経験談が展示されている。


次ページは大崎・鳴子温泉コース

深い峡谷と温泉の大崎・鳴子温泉コース

新緑の「鳴子峡」 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 山形県、秋田県と隣接する大崎市にある大崎・鳴子(なるこ)温泉コース1は、山々の緑と、深さ約100mの峡谷が織りなす風景、そして鳴子こけしの名産でもある鳴子温泉地からなるものだ。山々の緑は、春から初夏の新緑、秋の紅葉、そして深い峡谷に流れる大谷川(おおやがわ)の水流が美しい色合いを紡ぎだす。

 さらに、名産品である鳴子こけしの絵付け体験ができる鳴子公園内の「日本こけし館」や、松尾芭蕉と所縁のある「奥の細道」や「尿前(しとまえ)の関跡」などが楽しめ、最後にはトレッキングの疲れを癒す”手湯”の「ゆめぐり広場」がゴールとなるコースだ。ゴールに近い鳴子温泉駅には木造の足湯もある。また鳴子温泉は、さまざまな泉質の温泉があるので、トレッキング後のリフレッシュに立ち寄るのもいいだろう。

「ゆめぐり広場(手湯)」 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 スタート地点は、鳴子峡レストハウス2と県道47号を挟んだ「鳴子峡」になる。そこから大谷川沿いの峡谷を、JR陸羽東(りくうとう)線の鳴子温泉駅方面に向かってトレッキングするコース3となる。距離は約10km、所要時間は約4時間。

1 11月下旬から4月下旬までは冬季閉鎖となる。
2:鳴子峡レストハウスの駐車場は10月上旬から11月上旬にかけて有料となります。
3:熊が目撃されている地域を通りますので、注意ください。

「奥の細道」で詠まれた峡谷

宮城オルレの「奥の細道」は、国の文化財の「出羽仙台街道中山越(でわせんだいかいどうなかやまごえ)」にも指定されている 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 大崎・鳴子温泉コースは、鳴子峡谷の緑を楽しめるトレッキングコースであるが、同じ道を江戸時代の俳人である松尾芭蕉が旅した場所であり、その体験を「奥の細道」で詠んでいる。そして1689年に芭蕉と弟子が厳しい取り締まりを受けた仙台藩の番所である「尿前の関跡」もコースに組み込まれている。

「尿前の関跡」の近くには芭蕉像や句碑もある 写真提供:大崎市観光交流課

1200年の歴史を持つ温泉

平安時代から都にも名が知られていた神社の「鳴子温泉神社」 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 鳴子温泉の歴史は古く、平安時代から都であった京都にも知られていた。つまり1200年の歴史を持つ温泉地となる。その始まりは、鳴子温泉神社より湧きだした温泉からと言われている。現在は環境省指定の国民保養温泉地で、泉質は旧分類の11種のうち9つがあることも特徴だ。

 またこの温泉の特産品である鳴子こけしについて学べる「日本こけし館」もオルレのコースに組み込まれている。こけし作家たちの制作過程や、自分で絵付けができるコーナーもある。加えてフィニッシュ地点である鳴子温泉の街のあちらこちらに、高さ約1.5~1mのこけしのオブジェが置かれている。

「ゆめぐり広場(手湯)」や郵便局などに、こけしのオブジェが置かれている 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

<大崎・鳴子温泉コース スタート地点(鳴子峡レストハウス)アクセス>

E4東北自動車道 古川ICから国道47号経由で約45

大崎・鳴子温泉コース近隣のドライブスポット

鳴子ダム
所在地 宮城県大崎市鳴子温泉字岩淵2-8

写真右の矢印のところが、鳴子ダムの放流バルブ 写真=小林祐史 ※ガイド同行のツアーにて撮影

 鳴子ダムは「尿前の関跡」の北に位置し、複雑なカルデラ地形に建設されたアーチ式コンクリートダムだ。1952(昭和27)年に着工し、1957(昭和32)年10月12日に完成した。外国人の技術者を招かず、日本人だけで建設した初のダムで、2016年9月に土木遺産に認定された。

 このダムで注目したいのは、みやぎ大崎観光公社が開催する「鳴子ダム直下見学ツアー」。立ち入り禁止となっているダムの壁(アーチ)の直下で見学できるツアーというレアなもの。写真のようにアーチのすぐ下まで歩いて行けるなど、ふだん目にする機会が少ないダムの構造物を堪能できる。ツアーにはガイドが同行し、ダムや江合川の自然について解説してくれる。開催時期は不定期なので、みやぎ大崎観光公社のウェブサイトをチェックしてほしい。


次ページは登米コース

桜の名所、県2番目に古い木造建築物がある登米コース

「旧北上川」の土手沿いは春になると菜の花の黄色に染まる 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 ササニシキ、ひとめぼれといった宮城米産地として有名な地域にある登米(とめ)コース(登米市)は、旧北上川沿いの水田が広がる田園地帯と、それらをつなぐ里山からなるトレッキングコースだ。ゴールの「平筒沼(びょうどうぬま)ふれあい公園」は桜の名所として知られている。

桜の名所でもある「平筒沼ふれあい公園」 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 また登米コースには、県の指定文化財である「香林寺(こうりんじ)山門」や庭園、墓地も含まれている。つまり指定文化財の中をトレッキングすることができるのだ。

「香林寺山門」は室町時代後期に移築されたもので、県内で2番目に古い木造建築物 写真=小林祐史

 登米コースのスタート地点は「豊里(とよさと)公民館」になる。JR気仙沼線沿いを歩き、「香林寺山門」内を通過して、里山を歩いて「平筒沼ふれあい公園」がフィニッシュ地点となる。距離は約11km、所要時間は45時間だ。

スタート地点である「豊里公民館」には、宮城オルレの「カンセ」がある 写真=小林祐史

JR気仙沼線のすぐ脇を歩く「線路脇の田園風景」 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

「香林寺山門」を抜けると林や竹林などを歩くことになる 写真=小林祐史

「香林寺山門」後の里山を抜けた先に宮城オルレの道案内の矢印がある。その上には小鳥のオブジェが置かれている。小鳥が組み合わせてあるのは、登米コース内でもこの周辺だけ 写真=小林祐史

フィニッシュ地点の「平筒沼ふれあい公園」にある「平筒沼いこいの森」。アップダウンのある全長3kmの散策路で、ナラやブナ、天然のアカシデが生い茂る森に囲まれている 写真=小林祐史

<登米コース スタート地点(豊里公民館)アクセス>

E45三陸沿岸道 桃生豊里(ものうとよさと)ICから県道30号経由で約10

登米コース近隣のドライブスポット

みやぎの明治村

所在地 宮城県登米市寺池桜小路2
開館時間 9時~17時(休館日は1231日~11日)

明治時代の洋風建築物や武家屋敷などが多数ある街並みが現存する「みやぎの明治村」 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

 明治時代の小学校、県庁、警察署などの洋風建築物や、蔵造の商家、藩政時代の武家屋敷などが現存している街並みが登米市内にはある。それらを「みやぎの明治村」として公開されている。


宮城オルレ公式ウェブサイトは
こちら


宮城オルレの風景写真は
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