首都高の料金は本当に高いのか? 料金値上げと道路の価値を考える
首都高速は通行料金を4月から値上げする。上限料金はこれまでの1320円から1950円に一気にアップ(普通車・ETC利用の場合)。700円時代がまるで嘘のようである。ところが首都高研究家の清水草一氏は、首都高の料金は決して高くない、と述べる。その理由は一体どこにあるのだろうか?
実は安かった? 首都高の料金体系
みなさんは、首都高の料金を高いと思っているだろうか。アンケートを取れば「高い!」という意見が多数を占めるだろう。その首都高の料金が、また値上げされるという。現在の上限料金は1320円だが、4月からは1950円に上がる。
「コロナもあってみんな生活が苦しいのに、大幅値上げってどういうことだ!」
そういった怒りを感じる方もいらっしゃるだろう。が、実を言えば、首都高の料金は、NEXCOの高速道路に比べると安い。半額というケースもある。
「いや、そんなわけはない。昔は700円でどこまでも行けたんだから、それに比べたらすごい値上げじゃないか」
そう感じる方がいても不思議はないが、事実である。首都高の料金は、2012年、それまでの均一料金(東京線700円、神奈川線600円、埼玉線400円)から、距離別料金に移行した。当初は500円~900円だったが、2016年の改正で、300円~1300円(消費税率アップ後は1320円)となった。
狙いは、首都高とNEXCOの大都市近郊区間の料金(通常区間の2割増し)を、同水準で統一することにあった。それ以前は、外環道や圏央道へ迂回するより、首都高を突っ切ったほうが安いケースが多く存在した。それでは迂回による渋滞緩和が促進されない。よって2016年の改正後は、始点と終点が同じなら、首都高・外環道・圏央道どのルートを通っても、同料金になるようにされたのである。
首都高の渋滞緩和を願い、さまざまな具体的提案を行ってきた私にとって、これは夢のような料金体系だった。世間では、「首都高の値上げ反対!」という声が大きかったが、私はひとりガッツポーズを作っていた。
しかし、首都高の上限料金である1320円には、まだ多少問題があった。首都高の場合、35.7km走ると1320円に到達する。東名高速で言えば、およそ東京から厚木まで(35kmで1300円)だ。
ところが首都高の場合は、1320円で料金が頭打ちになる。首都高内の最長距離は、さいたま見沼-幸浦間の87.3km。首都高なら1320円で走れるが、東名などNEXCOの高速道路には上限料金がないので、同じくらいの距離の東京―御殿場間(83.7km)で2620円。本州の北の果て、青森-鹿角八幡平間(88.8km)でも2570円かかる。
一番地価が高く、建設費もかさむはずの首都高が、他の高速道路より断然料金が安いというのはおかしくないか? 今回の上限料金値上げは、この不公平を是正することに狙って、国交省の幹線道路部会という委員会が決定したものなのだ。
高すぎるのはむしろ地方だ!
ただ、今回の改正では、渋滞の緩和は期待できない。前回の900円から1300円の上限値上げの際は、外環道や圏央道への迂回が促進され、渋滞の平準化に貢献したが、首都高の場合、40km以上走るためには、南北方向に縦断する必要がある。そちらの方向には、外環道も圏央道も完成していない。つまり迂回ルートがあまりない。
では、今回はただ値上げするだけなのかというとそうではなく、深夜割引(0~4時まで20%割引)の導入と、大口多頻度割引の拡大(最大割引幅を35%から45%へ)も同時に行うので、首都高の料金収入も増えない仕組みになっている。
私の考えとしては、首都高の料金は決して高くない。その証拠に、毎日約100万台ものクルマが利用している。これだけ利用されているということは、料金を払うだけの価値(バリュー)があるということだ。仮に料金水準を現在の2倍にしても、交通量は2割くらいしか減らないだろう。交通量が減れば渋滞も減少して、バリューが高まるからである。
逆に、地方のガラガラ路線の料金は高すぎる。値段の割にバリューがない(時間短縮効果が低い)から、地元のドライバーに利用されていない。地方のドライバーは、「高速道路なんてめったに使わない」「下道で十分だ」と口を揃える。高速料金が割高すぎるからである。
日本の高速道路料金は世界一高い。しかし、首都高など大都市圏の料金は、バリューとしては決して高くはない。値下げすればそれだけ渋滞が増え、下道と所要時間が変わらなくなる。それでは高速道路の意味がない。
高すぎるのは地方だ。そもそも、高速道路の料金水準が全国ほぼ一律であることが間違っている。私はそう考えている。
(本稿における料金は、すべて普通車・ETC利用の場合です)