第4期ホンダF1活動の7年間の戦い。その2:2018-2021年トロロッソ-アルファタウリ編
2015年シーズンから始まったホンダの第4期F1活動も今シーズン2021年で幕引きとなる。この7年間のホンダの戦いにおいて、第2シーズンと言える2018年から2021年までのトロロッソ-アルファタウリとの活動をモータースポーツライターの大串信が解説。
若手育成チームと再出発
2021年F1グランプリデビューを果たした角田裕毅は、シリーズ第22戦年度最後のレースで今季自己最上位の4位に入賞、ルーキー3人の中で最上位のランキング14位でシーズンを終えた。
角田が所属したスクーデリア・アルファタウリ(以下アルファタウリ)は、2020年からF1を闘い始めたチームである。その前身は、世界的飲料メーカーのレッドブルグループが、2005年末に老舗コンストラクターのスクーデリア・ミナルディを買収して設立したスクーデリア・トロロッソ(以下トロロッソ)だ。そのトロロッソは、2018年シーズンからホンダ製パワーユニット(以下PU)を搭載している。
トロロッソがホンダPUを搭載するに至った経緯は、2017年一杯でマクラーレンとの提携が打ち切られたことから始まる。
2018年シーズンの提携先としてホンダがようやく見つけた交渉相手は、レッドブル・レーシング(以下レッドブル)だった。当時のレッドブルは、ルノーのPUで2010年から2013年までコンストラクターズチャンピオンを獲得。その後メルセデスのPUが台頭し、ルノーの戦闘力が相対的に低下しチャンピオンから遠ざかっていた。
その現状を打破するため新しいワークスPUを探していたところで、ホンダ製PUの将来性へ賭けることにした。ただしレッドブルにいきなりホンダ製PUを搭載するのではなく、レッドブルグループ内のトロロッソに搭載させた。
そもそもレッドブルは飲料メーカーであるレッドブルグループが、2004年にジャガー・レーシングを買収して、2005年からF1活動を開始しているチームである。さらに翌2006年、前述したようにミナルディを買収してトロロッソを設立したという経緯がある。そのため両チームの関係は、レッドブルがチャンピオンを狙える実力派ドライバーが所属する1軍、トロロッソが将来有望な若手が所属する2軍というものだった。
つまりレッドブルグループの意図は、まずは開発途上にあったホンダPUを、2軍のトロロッソで吟味してみようというものだった。
ホンダも開発体制を一新
ようやく新しいPU供給先にめどをつけたホンダは、この新しい展開に向けて、従来1人のプロジェクトリーダーがF1活動を全面的に統括してきた活動体制を一新。まず組織を研究開発と実戦現場指揮に分割し、開発効率の改善が図られた。同時に第3期F1活動やインディカーなどの開発経験がある人材を配置。また四輪の技術だけでなく、ホンダジェットの航空機用エンジン技術などといったさまざまな事業で蓄積してきた技術や知見で、第4期F1活動をサポートする体制「オールホンダ」を構築して開発のスピードアップを目指した。
このような体制で開発された2018年用エンジンは、2017年型から大幅な改良が加えられた。
トロロッソにとって初めてのワークスエンジン
対してPUを供給されるトロロッソにとっては設立以来、初めてとなるワークスPUである。しかし提携契約が2017年の後半に急遽結ばれたため、ホンダ製PU専用マシンを開発できる時間がトロロッソにはなかった。そこで元々ルノー製PUを想定していたマシンを部分的に変更し、ホンダ製PUが搭載できるように仕立てた。
そんな急場をしのぐような2018年型マシンのSTR13は、シーズン序盤でドライバーのピエール・ガスリーがホンダ製PUにとってレースでの最上位である4位入賞を記録したものの、ルノー製PUで想定していたような戦闘力を発揮するまでには至らなかった。
だがホンダ製PUは信頼性も向上しパフォーマンスも向上してきたのは明らかで、ホンダ製PU専用マシンとなった翌2019年シーズンは性能が上向きとなった。成績でもシーズン後半には、ガスリーが2位でフィニッシュするなどにより、トロロッソはコンストラクターランキングで6位に進出。また2019年からは、レッドブルもホンダ製PUを搭載することになった。
チーム名の変更。そして日本人ドライバーの起用
2020年になるとトロロッソの親会社であるレッドブルは、同社が展開するファッションブランド「アルファタウリ」のプロモーションを行うため、トロロッソの組織はそのままにチーム名を「スクーデリア・アルファタウリ」へと変更。ただしチーム名は変わったものの、ドライバーなどのチーム陣とホンダ製PUはそのまま引き継がれた。
アルファタウリ初年度となる2020年シーズン、ガスリーは初優勝を含めた計10回の入賞を記録し、ドライバーズランキング10位でシーズンを終えた。しかし両ドライバーとも前年より獲得ポイントが減少したため、コンストラクターズランキングでは7位と後退。また同年は新型コロナウイルス感染症拡大により開幕戦が中止となり、開幕戦が7月に延期されるなど混沌としたシーズンでもあった。
そして2021年、ガスリーのパートナーに日本人ドライバーの角田裕毅を起用。その結果は、ドライバーズランキングでガスリーは9位、角田は14位となる。一方コンストラクターズランキングは6位と、前年度の獲得ポイントを大きく上回る成績でシーズンを終えた。長年同チームに在籍するガスリーも「チームにとって最高のシーズンだった」とコメントしている。
2022年のアルファタウリはどうなる
ホンダは2021年一杯で第4期F1活動を打ち切るが、2022年型PUまでの開発は続行する。すでにアルファタウリは、PU、ドライバー陣とも2021年シーズンとまったく同じ体制で2022年シーズンを迎えることを発表している。
2018年~2021年ホンダ×トロロッソ-アルファタウリ リザルト
2018年 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ
マシン/PU STR13/RA618H
コンストラクター年間ランキング9位(33ポイント)
ドライバー年間ランキング
ピエール・ガスリー 年間ランキング15位(29ポイント) 決勝ベストリザルト4位
ブレンドン・ハートレー 年間ランキング19位(4ポイント) 決勝ベストリザルト9位
2019年 スクーデリア・トロロッソ・ホンダ
マシン/PU STR14/RA619H
コンストラクター年間ランキング6位(85ポイント)
ドライバー年間ランキング
アレクサンダー・アルボン 年間ランキング8位(92ポイント) 決勝ベストリザルト6位
ダニール・クビアト 年間ランキング13位(37ポイント) 決勝ベストリザルト3位
ピエール・ガスリー 年間ランキング7位(95ポイント) 決勝ベストリザルト2位
※アルボンは第13戦ベルギーGPからレッドブルに移籍。ガスリーは第13戦ベルギーGPからトロロッソに加入
2020年 アルファタウリ・ホンダ
マシン/PU AT01/RA620H
コンストラクター年間ランキング7位(107ポイント)
ドライバー年間ランキング
ピエール・ガスリー 年間ランキング10位(75ポイント) 決勝ベストリザルト優勝
ダニール・クビアト 年間ランキング14位(32ポイント) 決勝ベストリザルト4位
2021年 アルファタウリ・ホンダ
マシン/PU AT02/RA621H
コンストラクター年間ランキング6位(142ポイント)
ドライバー年間ランキング
ピエール・ガスリー 年間ランキング9位(110ポイント) 決勝ベストリザルト3位
角田裕毅 年間ランキング14位(32ポイント) 決勝ベストリザルト4位
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