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道路・交通2021.12.01

雪道での事故はスタッドレスタイヤに注意!?|長山先生の「危険予知」よもやま話 第4回

JAF Mate誌の人気コーナー「危険予知」の監修者である大阪大学名誉教授の長山先生に聞く、危険予知のポイント。本誌では紹介できなかった事故事例から脱線ネタまで長山先生ならではの「交通安全のエッセンス」が溢れています。

話・長山泰久(大阪大学名誉教授)

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雪道での事故はスタッドレスタイヤに注意!?

編集部:今回の「危険予知」は雪道を扱った問題です。雪道というと、よく「急ブレーキや急ハンドルなど、”急”の付く操作をしないように」と聞きますが、雪道の問題点は具体的にどんな点にあるのでしょうか?

長山先生の「危険予知」よもやま 第4回|問題|くるくら

矢印

長山先生の「危険予知」よもやま 第4回|結果写真1|くるくら

長山先生の「危険予知」よもやま 第4回|結果写真2|くるくら

長山先生:まず、雪道は滑りやすいので、自分の思いどおりの運転ができなくなることを知っておく必要があります。

編集部:確かにそうですけど、”滑りやすい”ってことは誰でも知っていますよね?

長山先生:誰でも知っている当たり前のことですが、意外とそれを忘れて事故を起こしてしまうのです。雪道を走ったことがある人なら分かると思いますが、初めは慎重に走ります。でも、しばらく走っているうちに雪道に慣れてきて、慎重さが薄れてしまうのです。

編集部:たしかに初めはガチガチに緊張して運転しますけど、しだいに慣れてきて、途中からいつもとあまり変わらない感じで走っているかもしれません。特にいまのスタッドレスタイヤは性能がいいので、安心して走れますからね。

長山先生:そのとおりで、私はスタッドレスタイヤにも問題があると思いますね。

編集部:スタッドレスタイヤが問題ですか!?

長山先生:スタッドレスタイヤ自体に問題があるわけではありません。スタッドレスタイヤなら、それなりに雪道でもふつうに走れてしまう点に問題があるのです。チェーンのように音や振動があれば、あまり速度は出せませんが、スタッドレスタイヤは夏タイヤのように走れてしまうので、だんだんと速度が上がり、それが事故につながるような気がします。

編集部:そうかもしれません。でも、スタッドレスタイヤの性能も上がっているので、それに合った走り方とも言えるのではないでしょうか?

長山先生:もちろん、性能が上がったぶん、雪道でも止まりやすく、曲がりやすくなっていますが、通常の路面と同じように走れるわけではありません。スタッドレスタイヤを使うと、一見「ふつうに走れる」と思いがちですが、そこが落とし穴で、下の表のように通常の路面と雪道では摩擦係数(滑りやすさ)が根本的に違います。それに合わせた走り方をする必要があるにもかかわらず、いつもと同じ速度、いつもと同じ車間距離で走ってしまい、いざと言うとき「止まれない!」「曲がれない!」となってしまうのです。

長山先生の「危険予知」よもやま 第4回|摩擦係数表|くるくら

出典:『図解 自動車事故解析資料集』真正書籍

編集部:同じ雪でも、新雪と固めた雪(圧雪)では摩擦係数が違うのですね。

長山先生:そうです。雪の状態によって滑りやすさが違うので、そのぶん速度を抑えたり、ブレーキを早く踏むことが求められます。ただ、見た目ではなかなか判断できないので、「雪道は通常のアスファルトと違い、滑りやすいもの」という、極めて当たり前のことを忘れないで、”スピードを出すこと”、”急激な操作をすること”を避けることが大切ですね。また、雪以上に滑りやすいのが凍結路面で、”ブラックアイスバーン”には特に注意が必要です。

名神高速でブラックアイスバーンを経験!

編集部:ブラックアイスバーン??? どんな路面ですか?

長山先生:雪のない路面に薄い氷が張っている状態の凍結路面です。雪がなくて、下のアスファルトが透けて黒っぽく見えるため、ブラックアイスバーンとかブラックバーンと呼ばれます。単に濡れた路面と思って油断してしまうので、とても危険です。

編集部:でも、滅多にないケースではないのでしょうか?

長山先生:たしかに温暖な地域ではまず経験することはありませんが、降雪量は少なくても、雪解けの水や降った雨水が冷え込めば、どこでも起こりうるものです。かなり昔の話になりますが、私もブラックアイスバーンを経験したことがあります。長野県の白馬で別荘地が販売されることを知り、3月の春分の日の早朝に名神高速を使って土地を見に行きました。雪も降らず快調に走行していて、ちょうど菩提寺パーキングエリアを過ぎて右にカーブし、上り坂に差し掛かった辺りでした。ヘッドライトの先の路面が黒ずんでいるので、雨でも降ったのかと思った途端、車が左へ持っていかれて、慌ててハンドルを右に切ったところ、スピンして完全に一回転してしまいました。

編集部:高速道路でスピンですか!? 大事故にならなかったのですか?

長山先生:当時は交通量も少なくて後続車もなかったので、追突されずに済みました。そのまま坂を上りきると、雪が降り出していて、チェーンを装着して走りました。黒く見えただけなのに、なんであれほど滑ったのか不思議に思っていたのですが、あとで米国の運転者教育の教科書で「Black Ice(ブラックアイス)」という言葉を見つけ、道路が凍結していたことを初めて知ったのです。また、あとで北海道などの北国では、運転者教育で「ブラックアイスバーン」について教えていることも知りました。ブラックアイスバーンは、知識として知らなければ、まず注意できません。”知らないということは恐ろしいことである”と肝に銘じて、寒い季節では、いつ凍結路面に遭遇するか分からない点を忘れないようにしなければいけませんね。

編集部:ブラックアイスバーンは、恐ろしいものですね。スリップしてから、「あーっ、長山先生が言っていたのは、これだったのか!?」とならないように、冬期冷え込むときには十分注意したいと思います。でも、ブラックアイスバーンまで経験しているとは、長山先生は雪道の経験も豊富なんですね?

初めての雪道走行が”アルプス越え”

長山先生:いやいや、そんなことはありません。雪道を走った経験は数えるくらいです。私は昭和33年(1958年)に免許を取って、2年後にドイツに留学したのですが、2月の寒い時期にフランスのナポレオン街道を通って、地中海のカンヌ・モナコまで行ったことがあったのですが、その時、初めて雪道を運転しました。

編集部:初めての雪道がフランスからモナコのナポレオン街道ですか。何とも豪華な雪道ドライブですね。危険な目には遭わなかったのですか?

長山先生:ところどころ雪は積もっていましたが、メインである街道の除雪は完璧で、特に問題を感じることなくドライブ旅行を満喫したものです。2回目も留学時で、人を案内してスイスの各地をドライブした時、スーステン峠という山道を走りましたが、ここも除雪が行き届いていて問題なく通行できました。

編集部:人生初の雪道走行がヨーロッパで、しかも特に問題なく走れたなんて、でき過ぎですね。

長山先生:スーステン峠の入り口付近に「雪のため峠閉鎖」の看板があったのを見落として、山頂近くまで行ってしまう無駄な苦労はありましたが、危険な目には遭いませんでしたね。それで雪道にも抵抗がなくなり、帰国してから白馬までの雪国ドライブを決行してしまったわけです。

編集部:そこで凍結路面の怖さを初めて経験したのですね。名神高速を下りてからの一般道は問題なかったのですか?

長山先生:白馬に至る県道では轍にタイヤを入れてスムーズに走っていたのですが、白馬近くの青木湖に沿った上りの左カーブで雪の壁に突っ込んでしまいました。オーバースピードだったと思います。車は壊れなかったのですが、タイヤがスリップして自力で脱出できず、止まってくれた運転者さんたちに車を持ち上げてもらったり、タイヤの下にござを敷いてもらうことで何とか脱出できました。

編集部:長山先生も若かりし頃はそんな経験をしているのですね。

長山先生:雪道に慣れていない車が1台でもいると、事故の危険だけでなく、周囲の車にもたいへん迷惑を掛けるものだと自戒したものです。私が住んでいる大阪では年に1、2回くらいしか雪は降りませんが、無理に車で外出して動けなくなったら、通行の障害になってしまうので、車の使用は控えます。特に坂道は恐いので、車は使わないようにしますね。

月刊『JAFMate』 2015年1・2月合併号掲載の「危険予知」を元にした
「よもやま話」です


【長山泰久(大阪大学名誉教授)】
1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAF Mate』危険予知ページの監修を務める。

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