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最終更新日:2021.05.10 公開日:2021.05.10

知っていれば怖くない! 雨の日、安全に走るための10か条

雨の日こそ便利な車の移動……ですが、晴れの日より危険度は上がります。安全に走るために知っておきたい「雨の日の危険ポイントと対処法」をモータージャーナリストの菰田潔さんに聞きました。雨天の特性を正しく知れば、むやみに雨の日も怖がる必要はありません。今のうちにやっておきたい、メンテナンスもおさらいしましょう!

菰田潔=講師

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(1)まずは、「雨の日のグリップ力」を正しく知る

 知っておきたいのは、「雨の日はとにかく滑る」わけではないこと。まずはタイヤと路面との間に働く摩擦力(=グリップ力)を理解しよう。グリップ力は、下表のように路面の状況によって異なり、グリップ力を超えた運転動作をするとスリップが起こる。たとえば、晴れた日のグリップ力を0.8とすると、雨の日は0.5~0.6に下がるが、実は普段の運転で必要とされるグリップ力は0.3程度あればいい。そのため、適切な運転をしていれば、雨天でもむやみに滑るわけではない。ビクビクせず、でも無理はせずに運転すれば大丈夫。

【路面の条件で、グリップ力はどのくらい変わる?】
 乾いた路面のグリップ力を0.8とすると、他の路面でのグリップ力は以下のようになる。

雪の日や凍った路面のグリップ力は雨の日よりもさらに低く、通常の運転では滑ってしまうことがわかる。

(2)「曲がりながらアクセル、ブレーキ」は滑りやすい!

 グリップ力にはタテ方向(アクセルやブレーキを使うときの前後の力)、ヨコ方向(ハンドルを切って曲がるときの横の力)がある。同時に使うとグリップ力をタテとヨコで分けて使うことになるため、限界を超えやすい。カーブなどでハンドルを切りながら強くブレーキやアクセルを踏んだりすると滑りやすいので注意。カーブの前までにしっかり減速を済ませよう。またタイヤが古い、タイヤの溝が浅い、スピードの出しすぎ、水たまりやわだちなどで水深が深い、などの状況もスリップが起こりやすい。

濡れたマンホールや、横断歩道の白線の上も滑りやすいので注意。

(3)スリップ時の対処法は「逆の動作」

 滑る原因は「自分」にある。滑ったときは、直前に自分がした動作と逆のことをするのが基本。アクセルを踏んで滑ったらアクセルを戻す、ブレーキを踏んで滑ったらブレーキを戻す、ハンドルを切って滑ったらハンドルを戻す。雨の日は特に、今自分がどういう運転動作をしているかを意識しながら運転を。例外的に、ハイドロプレーニング現象((4)参照)は自分の動作が直接的な原因ではなく起こる。

(4)「あ、ハンドルが利かない!」ハイドロプレーニング現象が起きたら?

 ハイドロプレーニング現象とは、タイヤが路面に接地せず、まるで水上飛行機のように、水の上を滑るような状態になること。タイヤが路面の水を排水しきれずにグリップ力を失うので、ハンドルやブレーキが一時的に利かなくなる。たいていの人は、車がだんだん左右に寄ってしまう、思う方向に行かない、などで「おかしい」と気づく。

 ここで、パニックになり大きくハンドルを切ったりブレーキを踏んだりすると、スピンの原因になる。慌てずにアクセルをゆっくり戻し、ハンドルは切りすぎず、行きたい方向に45度ぐらい切って微修正を。ハイドロプレーニングは長くても数秒間のことが多く、水たまりやわだちを過ぎれば回復するので冷静に対処しよう。

【ハイドロプレーニング現象の前兆は音でもわかる?】
 走行中のタイヤが水を排水している「ジャー」という音が、タイヤからフェンダーに当たって起こる「ザザザザ」という大きな音に変わるのが、ハイドロプレーニング現象が起こる前兆だ。そうなったらスピードを落とすこと。

(5)高速道路は「水はけの悪い車線とわだち」を避ける

 雨がひどいときには、ハイドロプレーニング現象を防ぐためにも、なるべく水深の深いわだちを避けて走ることが大切。高速道路の車線は幅が3.5mほどあり、多くの普通車は車幅が1.7~1.8mなので、50cm程度左右にずらして走っても大丈夫。一番右側の追い越し車線は、中央分離帯のグリーンベルトにより走行車線よりも水はけが悪く、特に右側に水が溜まっている場合がある。水深が深いな、と感じたらアクセルを戻しつつ、少しずつ左側によけよう。

(6)とにかく見えにくい「雨の日の視界」、対策はこれで!

 まずはヘッドライトをオンに。窓やドアミラーに水滴がついて見えにくくても、ライトが点いていれば周りから気づかれやすくなる。最近は周囲の明るさやワイパーの使用を感知して自動的に点灯する車もあるので、ライトは普段からAUTOにしておく。

【高速道路では偏光サングラスの活用も】
 高速道路ではスピードが速いので水しぶきなどで視界が悪くなることも。偏光サングラスを使用すると、水しぶきや濡れた路面からの乱反射を抑え、見通しが良くなる。雨の日用なら黄色っぽい色の偏光サングラスが効果的だが、専門店で相談するとよい。

偏光サングラスなし(左)、あり(右)。水しぶきや濡れた路面からの乱反射をカットして路面や車線境界線が見やすくなるなど、視界不良が緩和される。(写真提供=TALEX)

(7)ガラスの曇りはエアコン+外気導入を活用

 ガラスの曇り対策には、とにかくエアコンが有効。夏に、停車中の車の下に水が溜まっているのを見かけるが、あれはエアコンの除湿効果によるもの。温度設定が高くても低くても、A/Cスイッチを入れていれば車内の空気が除湿され、曇りを防ぐ効果がある。なお、空気は「外気導入」に。雨の日は外の湿度が高いと思いがちだが、外のほうが車内より温度が低いときは、車内に比べ空気中の水分量が少ない場合が多い。

 また、横の窓の曇りや水滴は、一度窓を開け閉めすると見やすくなる。窓の内側はあらかじめ曇り止め効果のあるガラスクリーナーで拭いておくのもおすすめ。最近増えているPHEVやEVでは、エアコンを使用すると10%ほど航続距離が短くなるため、曇り止めなどケミカル用品で対処する方法も再注目されている。

(8)「雨の日にできる死角」に気を付ける

 雨の日は横の窓に水滴がついて見づらくなるほか、フロントガラスの両端部分にもワイパーの拭き残し部分ができるため、車からは歩行者を見つけにくくなる。また、視界が悪いのは車だけではない。歩行者側も傘をしているため視界が狭く、視線が足元に向きがちなので、車の存在に気づいていない可能性がある。特に右左折の際や横断歩道では見落としに注意。

雨天時はワイパーの拭き残しで歩行者が見えづらいことも。写真①では、フロントガラス右端に歩行者の傘の一部が見えている。その直後が写真②。透明のビニール傘はドライバーにとってなお視認しづらい。横断歩道付近では歩行者がいないか、きちんと確認を。

(9)一番怖い?「雨の日、夜の運転」は細心の注意で

 雨の日の夜は、ヘッドライトをけていても、光の反射が周りに吸収され、普段より視界が暗くなる。暗くて見えないところには「誰もいない」のではなく、見えていないだけと考えることが大切。見える範囲で対処できるようにスピードを落として走ろう。

「雨の日、夜の運転」は細心の注意で|くるくら

見えにくい歩行者。歩行者からは車のヘッドライトが見えているため、「車からも自分は見えているはず」と思い、無謀な横断などをしてくることがあるので注意。

(10)メンテナンス編 雨の日に走り出してからではもう遅い! 「今からやっておきたいことリスト」

1. 6年を超えたタイヤ、溝が4㎜以下のタイヤは交換を
 タイヤが古くなるとゴムが硬くなり、グリップ力も落ちる。溝が残っていても、6年を超えたタイヤの使用はおすすめしない。特に雨の高速道路を走るなら、タイヤの溝が減ってくると水はけが悪くなり、ハイドロプレーニング現象が起こりやすくなる。タイヤにスリップサインが出てくるのは溝が1.6mmからだが、これは車検に通る最低限の基準。新品では溝の深さは約8mmあるが、4mm以下になったら交換するほうが安全だ。

【チェック方法は?】
 10円玉の10の数字を頭から溝に入れてみて、数字の頭が溝で隠れれば4mm以上残っている状態。もしくはGSでも測ってもらえる。

2. 雨の日こそ、「ウオッシャー液が必要」
 降り始め、雨上がりなどは水はねでフロントガラスが汚くなってしまう。こんなときこそ、ウォッシャー液が効果を発揮。「あ、空だった…」では大変なので、ウォッシャー液も補充しておこう。困ったときは、水を足すだけでもOK。

3. 雨の日の「ワイパ―と視界問題」を解決!
 ワイパーの「ビビリ」が起こる場合、劣化が原因のことがほとんど。ワイパーは使わなくても、時間が経つと劣化する。ワイパーの交換は最低1年に1回、できれば冬の始まる前の10月と冬が終わってからの4月の2回交換すると安心。

 また、フロントガラスに撥水剤を塗っておくのもおすすめ。高速道路などでワイパーの頻度を下げて走ることができ、ワイパー作動範囲以外の視界もよくなる。

窓の水はじきを良くして視界を確保する撥水剤は、予め晴れた日に塗っておく必要があるので注意。

撥水剤なし(左)、あり(右)。(写真提供=ソフト99コーポレーション)

4.雨シーズン前の仕上げは「ワックスがけ」
 梅雨までにしておくおすすめ、最後の仕上げはワックスがけ。頑張ってやっておくと、梅雨時期も車に汚れがつきにくく、雨で汚れが落ちやすいので快適に過ごせる。ぜひお試しを。


菰田潔(こもだきよし)

モータージャーナリスト、ドライビングインストラクター。
理論的でわかりやすい教え方に定評がある。

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