角田裕毅がF1開幕戦で9位入賞。日本人初のデビュー戦ポイント獲得。今後に期待大!
2021年3月28日に決勝レースが行われたF1の開幕戦バーレーンGPで、日本人ドライバーの角田裕毅がデビュー。そのデビューレースで9位に入賞し、日本人ドライバーとして初となるデビュー戦でポイント獲得となった。開幕戦の振り返りと、角田の才能について、モータージャーナリストの大谷達也が解説。
日本人初のデビュー戦でポイント獲得!
中東のバーレーンで、3月26日に2021年F1グランプリが開幕。28日に行われた決勝レースは、予選でポールポジションを獲得したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)と予選2番手スタートのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が接戦を展開。終始フェルスタッペンが優勢だったものの、レース終盤にフェルスタッペンがハミルトンを追い抜いた際にコース外走行をしたためにフェルスタッペンがハミルトンに進路を譲る格好となり、結局このままハミルトンが優勝。フェルスタッペンは2位に終わった。3位は予選3番手スタートのバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)。
もっとも、日本人ファンにとってバーレーンGPでの最大の見どころは、アルファタウリ・ホンダからデビューした角田裕毅の活躍だったに違いない。
フリープラクティスでは好調も予選は苦戦
3回に分けて行われたフリープラクティスをそれぞれ14番手、7番手、13番手で終えた20歳のルーキーは、予選で13番グリッドを手に入れたが、これにはちょっとしたワケがあった。
F1の予選がQ1、Q2、Q3の3段階で行われることはご存じのとおりだが、Q3まで進出したドライバーはQ2で使用したタイヤで決勝レースをスタートしなければいけないというルールがある。ここで、レース戦略という観点からいえばQ2はミディアム・タイヤで戦い、このタイヤで決勝レースのスタートを迎えるのが理想だが、速さでソフト・タイヤに劣るミディアム・タイヤでQ2に挑めば、そもそもQ3に進出できず、11番以降のグリッドからスタートすることにもなりかねない。つまり、決勝レースの戦略を優先するか、Q3進出を優先してトップ10グリッドを狙うかでQ2のタイヤ選択が分かれるわけだが、レッドブル・ホンダやメルセデスAMGといった有力チームはミディアム・タイヤでQ2を戦ってトップ10に入り、Q3進出を果たすという離れ業をやってのけたのである。
実は角田選手もこれと同じ戦略を選択。ミディアム・タイヤでQ2に挑んだものの、ここでタイヤの性能を十分に引き出すことができず、13番手に終わったのだ。したがって、もしもフェラーリやマクラーレンといったライバルたちと同じようにソフト・タイヤでQ2に臨んでいれば、角田選手は易々とQ3進出を果たしていただろう。
そして角田選手は決勝レースで期待どおりの実力を発揮することになる。
決勝レースで魅せた数々のオーバーテイク
慎重を期して臨んだスタートでは3台に抜かれたものの、それ以降は着実に順位を上げる戦いを見せた角田選手は、確認できただけでも決勝レース中に8回ものオーバーテイクを披露。最終的に9位でフィニッシュし、デビュー戦を入賞で終えた。ちなみに、F1デビュー戦でポイントを獲得したのは日本人ドライバーとして史上初めてのことである。さらにF1デビュー戦でポイントを獲得したのは、2016年のストフェル・バンドーン以来。
しかも、いずれのオーバーテイクでもまるでベテランドライバーのように落ち着いたバトルを示した点も特筆すべきだろう。ストレートエンドでわずかにライバルに先行して自分の存在を相手に知らせると、得意のハードブレーキでリードを拡大。その後も確実にクリッピングポイントを捉える安定した走りは、国際映像のF1解説者も思わず「完璧なオーバーテイク。ビューティフル!」と手放しで賞賛したほど。これと前後して、やはり国際映像のアナウンサーは「今シーズンはきっとこれと似たようなシーンを何度も見ることでしょう」と語って、角田選手の活躍が今回限りのものではないとの見方を示したのである。
フィニッシュ直後、角田選手は無線で「順調な週末ではなかったけれど、いいF1デビューを果たせた。みんな(チームスタッフ)のことを誇りに思う。どうもありがとう」と流暢な英語でコメント。チームの努力をねぎらうという余裕を見せた。
レーシングドライバーが好成績を収めるには、一発の速さも重要だが、それ以上に大切なのがバトルで競り勝ってポジションを上げ、着実にレースをフィニッシュすることにある。とりわけファンの支持を得るうえではエキサイティングなオーバーテイクがもっとも重要といって間違いない。
しかも角田選手は、今回はやや失敗したとはいえ予選での速さも期待できるし、決勝での確実な走りという点でも文句の付けどころがない。所属するアルファタウリ・ホンダもレッドブル・ホンダやメルセデスAMGに次ぐ速さを備えているようなので、決勝でちょっとした番狂わせが起きれば表彰台を手に入れるという事態もありそうだ。
F1参戦ファイナルシーズンとなったホンダの活躍を含め、角田選手のはつらつとした戦いを今後も期待したいところだ。
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