気になるタイヤのひび割れ。どこまでなら大丈夫?
タイヤの側面(サイドウォール)にひび割れ(クラック)が生じていることを、整備工場などで指摘されたという経験はないだろうか? そのひび割れは、どこまでが使用可能で、どこからが要交換なのだろうか。またひび割れを促進させる4つのNGを紹介。
要交換となるタイヤのひび割れとは?
タイヤの側面(サイドウォール)にひび割れ(クラック)が発生していると、溝が残っていても交換を勧められることがある。「至急」で勧めることもあれば、「なるべく早めに」ということもある。その違いはどこにあるのだろうか。
その前にタイヤの構造についておさらいをしておこう。車のタイヤは、接地面(トレッド)や側面を覆っているゴムだけでできているわけではない。車の重い荷重を支えるためのカーカスやベルト、ビードと呼ばれる部位には、スチールもしくはポリエステル、ナイロン、アラミドなどの化学繊維、高炭素鋼などが使われている。カーカス、ベルト、ビードは人で例えれば骨に当たり、タイヤの形状を支える部位だ。
一般社団法人日本自動車タイヤ協会によると、ひび割れがタイヤ内部のカーカスに達している場合は要交換となる。上の写真のように、ひびが深いものは要交換、浅いひび割れは要経過観察、細かいひび割れなら継続使用可能だ。
深いものが要交換となる理由は、ひび割れが深くなりカーカスまで達すると、タイヤ内部に水が浸入してしまう。それによってタイヤの内部からゴムの劣化が促進されたり、カーカスに悪影響を及ぼす。たとえばスチールコードだと、さびが生じれば膨張し、内側から外側に向けた膨張力がタイヤに加わって、バースト(破裂)する危険性が高まる。
ひび割れの修理・補修は不可能で、ひび割れを発見した際は整備工場やタイヤ販売店などで深さを点検してもらおう。しかし点検から使用可能となっても安心というわけではない。ひび割れは進行するので、通常よりもタイヤ点検の回数を増やして、ひび割れの状況を常に見ておく必要がある。
タイヤのひび割れを促進させる4つのNG
タイヤはさまざまな材料から出来上がるゴム製品である。ゴムはオゾンや紫外線に反応すると油分が揮発するなどで劣化してしまう性質がある。そのため、たとえ走行距離が短くても、長年使用すれば、ひび割れはある程度生じてしまう。
しかし、通常よりも劣化を促進させる4つのNG行為がある。タイヤの寿命を全うさせるためにも、NG行為と対策を覚えておこう。
1つ目は空気圧不足と過積載などによる過負荷。タイヤの空気圧は徐々に減る。もし数か月も点検しなければ、空気圧が足りずにタイヤは変形した状態で走り続けるので、サイドウォールのひずみが大きくなり、ひび割れが生じやすくなる。そのためタイヤの空気圧が適正であることを、最低でも月に1度は点検しておこう。また、過剰な重量物を積むこともタイヤの変形を強いるので、タイヤの寿命を縮めることになる。
2つ目は過度な洗車、有害な影響を及ぼすつや出し剤(タイヤワックスなど)を塗ること。タイヤはさまざまな材料を化合したゴム製品なので、過度な洗車によって油分が洗い流されてしまう可能性がある。またタイヤワックスなどのつやが出し剤は、紫外線に反応しやすい成分などが入っているとゴムの劣化を促進させてしまうのだ。泥汚れがひどく洗剤で落とす場合も、洗剤が残らないようによく洗い流そう。
3つ目は車の使用頻度が低い場合。タイヤは走行することによって、変形や温度変化が生じるが、それを利用して内部から劣化を抑える成分が染み出すように設計されている。つまり、走行していないタイヤは、劣化を抑える成分が染み出さないため、ひび割れが生じやすくなる。さらに1つ目の空気圧不足も重なると、ひび割れはさらに生じやすくなる。ちなみに冒頭のタイヤがひび割れた写真は、まさにそのような状況に置かれていたタイヤである。
4つ目はオゾンや紫外線の多い場所での使用や保管。こちらは車に装着してあるタイヤより、車から外したスタッドレスタイヤ、サマータイヤを保管する場所をイメージしたほうが想像しやすいだろう。日中は直射日光がずっと当たるような場所を避けて、日陰での保管や紫外線をカットするカバーをかけるなどで対処しよう。
タイヤ側面以外のひび割れ
タイヤのヒビ割れがあるのは側面だけではない。トレッドの溝の中や、ショルダー(トレッドの角部分)にひび割れが生じることもある。このひび割れの原因は前述の4つ以外に、急激にタイヤの温度が上がったり、タイヤが温まらないような短距離走行ばかりを繰り返すなどが要因で生じることがある。
特にショルダーのひび割れが進むとバーストの危険性が高まるので注意しよう。ショルダーに深いひび割れを見つけた際は、高速道路などの速い速度での運転は取り止めて、早めに整備工場などで点検をしてもらおう。
タイヤのヒビ割れは、ゴムの性質上、時間が経過するほど生じやすくなるものだ。タイヤの溝が車検に適合する深さであっても、年数が経過してひび割れが生じているなら、 “寿命” と考えて交換すべきだ。