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最終更新日:2023.06.19 公開日:2021.03.12

車のバッテリーで家電はどれくらい使えるの?【前編】

災害時や車中泊で家電を使用したい時など、クルマのバッテリーは電源としてどれくらい活用できるのだろうか? 前編では、過去の「JAFユーザーテスト」の結果から、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)、ガソリン車における検証結果を紹介しよう。

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クルマのバッテリーで電源供給

電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)などは、ガソリン車が搭載するエンジン始動用の鉛電池の他に、容量の大きい走行用バッテリーを搭載している。それらは、車内にACコンセントを装備することもできるため、災害時や車中泊時の電源供給手段として注目を集めている。果たして走行用バッテリーを活用して、家電は使用できるのだろうか?

左から日産・e-NV200(EV)、トヨタ・プリウスPHV(PHEV)、ホンダ・オデッセイ(HV)、スズキ・スイフト(ガソリン車)  出典:JAFユーザーテスト

 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)では、「JAFユーザーテスト」において、4車種で家電の使用を検証した。検証したのは、日産・e-NV200(EV)、トヨタ・プリウスPHV(PHEV)、ホンダ・オデッセイ(HV)、スズキ・スイフト(ガソリン車)の4台。EV、PHEV、HVは車内に装備されたACコンセントを使用した。

ガソリン車はACコンセントが装備されていないため、車のDC12Vバッテリーを、100VのAC電源に変換するインバーター(定格出力1000W)をエンジン始動用の鉛電池に直接つないで使用した。エンジン始動用の鉛電池は、DC(直流)電源のため、一般的な家電で使うには、100Vに昇圧するとともに、AC(交流)電源に変換する必要がある。

EV、PHEV、HVではよく目にするようになったACコンセント。 出典:JAFユーザーテスト

鉛電池にDC/ACインバーターを直結した様子。 出典:JAFユーザーテスト

【家電使用テストの条件】
実施日時:2018年2月7日
場所:彩湖・道満グリーンパーク駐車場(埼玉県戸田市)
テスト対象:
日産・e-NV200(EV):ACコンセント
トヨタ・プリウスPHV(PHEV):ACコンセント
ホンダ・オデッセイ(HV):ACコンセント
スズキ・スイフト(ガソリン車):インバーター(定格出力1000W)

どんな家電が使えるの?

まず、大小さまざまな消費電力の家電を用意し、それぞれの家電が4車種のクルマで使用可能かを調べた。なお、HV以外のクルマは、基本的にエンジンをかけずに検証をおこなった。検証したのは以下の家電。

検証に使用した家電。 出典:JAFユーザーテスト

【検証した家電】
・スマートフォンの充電器(5W)
・電気毛布(80W)
・ランプ(100W)
・電気ストーブ(400W / 800W)
・電気ポット(430W / 1250W)
・ホットプレート(1350W)

PHEVのACコンセントを使ってホットプレートを使用する様子。 出典:JAFユーザーテスト

使用可能な家電の検証結果。 出典:JAFユーザーテスト

 検証の結果、EV、PHV、HV(エンジン始動が前提)では、最も消費電力の高いホットプレート(1350W)まで6種類全ての家電が使用できた。一方、ガソリン車では、インバーターの定格出力(1000W)内の電気ポット(430W)や電気ストーブ(400・800W)は使用することができた(※)。しかし、電気ストーブを800Wで9分間使用したところ、バッテリー(新品)の電圧が降下し、インバーターの保護回路によって電気の供給が停止。エンジンをかけずに長時間使用できる家電は限定されることがわかった。

しかも、ガソリン車では、エンジンをかけた状態でも電圧の降下が確認できた。つまり、エンジンをかけていても十分に発電できず、バッテリーが上がることになる。

※インバーターの定格出力によって使用できる家電は変わる。

電気ポットでお湯は何回沸かせる?

HVのACコンセントを使用して電気ポットでお湯を沸かす様子。 出典:JAFユーザーテスト

 つぎに、EV、PHV、HVの3台で、1250Wの電気ポット(1.2リットル)を使って、5時間の間に何回お湯が沸かせるのかを調べた。EVとPHVは事前に走行用バッテリーを満充電にしておいた。HVは外部入力による充電ができないため、テスト開始時の走行用バッテリーの残量(3分の2)で検証を開始した。

※PHVとHVは、バッテリーの蓄電量が減ると自動的にエンジンが始動して電気を供給するが、本検証では災害時で燃料に余裕がない状況や、アイドリングができない状況を想定したため、バッテリーの蓄電量のみで検証した。
※テスト開始時の気温は7℃、水温は6℃。

上:お湯を沸かす回数の検証結果。 下:検証後のメーターパネルに表示されている走行用バッテリー残量。 出典:JAFユーザーテスト

 その結果、EVは30回お湯を沸かした後でも、走行用バッテリーが3分の2程度残っていた。PHVはエンジンを始動せずに27回お湯を沸かせたが、28回目の途中でエンジンが始動した。HVは走行用バッテリーの容量が小さく、充電量も3分の2程度だったため、1回しかお湯を沸かせなかった(2回目の途中でエンジンが始動した)。

このように、EVやPHVは災害時の電源として活用でき、PHVとHVはエンジンが始動できれば、燃料が続く限り電気の供給が可能であることがわかった。ただ、いずれも災害発生前に蓄えた電気や燃料次第なので、日頃から走行用バッテリーの充電や燃料の補充を心がけたい。

また、ガソリン車では、エンジンの始動・不始動にかかわらず、消費電力が大きい家電は長時間使うことはできなかった。ガソリン車の場合、災害時や車中泊時に備えるなら、ポータブル電源を車載しておく方が現実的だろう。

次回、後編では、クルマの走行用バッテリーと家電を使用して作る車中泊ご飯のレシピを紹介する。

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