溝が50%以下の冬用タイヤは使用厳禁
このたび、国土交通省がトラック、バス事業者に対して、冬用タイヤの溝の深さを点呼時に確認するよう求めた法改正は、自家用車ユーザーにとっても決して他人事ではない。スタッドレスタイヤは、溝が新品の50%以下になると冬用タイヤとしての機能が発揮できないからだ。その目安となる「プラットフォーム」について振り返ってみよう。
溝が50%以下は、積雪路・凍結路での性能が低下
国土交通省は2021年1月26日に「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」「旅客自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」の一部を改正して、冬用タイヤの溝の深さを点呼の際に確認するようルール化した。これは昨年末の大雪により、関越道や北陸道で多くの大型車両が立ち往生したことから改正に至った。
ところで冬用タイヤであるスタッドレスタイヤは、溝が50%以下まで摩耗すると積雪路・凍結路での性能が発揮できなくなる。そのため溝が50%以下のものを冬用タイヤとして使うことはできない。
溝の深さは「プラットフォーム」で確認
スタッドレスタイヤの溝の深さは、使用限度を示すサインであるプラットフォームの露出具合で確認できる。タイヤのトレッド(地面と接地する面)が摩耗すると、プラットフォームと呼ばれる凸部分が露出してくる。トレッドとプラットフォームの上面の高さが近くなったら、溝は50%以下ということになる。プラットフォームが設けられている位置は、サイドウォール部に矢印マークがあるので、それを目印に溝の深さを確認しよう。
スタッドレスタイヤは「何シーズン使用できる」や「走行何キロで交換」という物差しで、使用限度を定めることが難しく、溝の深さで確認することを一般社団法人 日本自動車タイヤ協会は推奨している。今回の法改正は、貨物トラックやバス、タクシーだけが対象であるが、一般の自家用車ドライバーも雪道を走行する前に溝の深さを確認する、夏タイヤとの交換時に深さを必ず確認することを習慣化しよう。
またJAFユーザーテスト「雨天時に初めてわかる摩耗タイヤの危険性」によると、溝が50%以下になったスタッドレスタイヤは雪のないドライ、ウェット路面でも、溝が20%以下になった夏用タイヤよりも制動距離が長いという結果も出ている。摩耗したスタッドレスタイヤは、夏用タイヤより性能が劣るということを覚えておこう。
【JAFユーザーテスト】「雨天時に初めてわかる摩耗タイヤの危険性」
「長持ち」させるドライ路面の走り方
スタッドレスタイヤを長持ちさせるには、乾燥したドライ路面での走り方にも注意しよう。それは急発進や急ブレーキ、急ハンドルなどといった運転を避けることだ。これらはスタッドレスタイヤの柔らかいゴムの摩耗を早める可能性がある。スタッドレスタイヤは雪道でも「急」がつく運転は禁物だが、ドライ路面では柔らかいゴムを労わるためにも滑らかな運転を心がけよう。
劣化を早めない「保管方法」
スタッドレスタイヤで重要な柔らかいゴムの「硬化=劣化」を早めない保管法を紹介しよう。
車から外したら、まずは融雪剤や泥、油脂などといった付着物を水で洗い流し、水気をふき取る。保管場所は、直射日光が当たらず、温度変化の少ない通気性の良いところにする。
なおホイールにはめたままで保管する場合は、タイヤの空気圧を指定の半分程度に下げて、平積みにする。タイヤのみで保管する場合は、タイヤラックなどで立てかけて保管する。
こうした適正な保管が難しい場合は、整備工場やタイヤショップなどの保管サービスを活用するのも手だ。