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最終更新日:2021.12.03 公開日:2021.12.03

千葉・木更津はポルシェ好きの天国だった! ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京を初体験

ポルシェを思う存分味わいたい! 車好きのそんな夢を叶える施設が、千葉県木更津にオープンした。「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」とはいったいどんな施設なのか。モータージャーナリストの西川 淳氏が体験レポートをお届けする。

文=西川 淳 写真=ポルシェジャパン

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ポルシェはレンタルできる!

 総工費50億円! 誰でも利用できるポルシェの体験型本格走行施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」(PEC東京)が21年10月、千葉県木更津市にオープンした。PECとしては世界で9番目だが、PEC東京は唯一の3Dレイアウト(オープン時)、つまり自然の地形を生かした高低差のある施設となっている(つまり他のPECは全て平面レイアウト)。

 たとえば世界有数のサーキットの有名コーナーを再現できたり、チャレンジングなオフロードコースを設定できたりするわけで、平面施設より断然に楽しい。普段のドライブだってずっと平面を走るなんてことはありえない(アメリカ西海岸あたりに住んでりゃ別かもだけど)わけだし。

 ではPEC東京とはいったいどんな施設なのか。実は早速走ってきたので、体験リポートを通して紹介してみよう。

 まずはPEC東京のオフィシャルサイトで会員登録する。もちろん無料。後ほど詳しく内容を説明するけれども基本は1回90分セットの予約となることを覚えておいてほしい。希望の日時が決まれば空きがあるかどうか確認しキープ。

 悩みどころはここからだ。ポルシェが運営する施設というだけあって、現行ラインナップのほとんどのモデルをレンタルすることができる。何ならRRとミドシップ、二駆と四駆という風にミックスだってできる。ただし、モデルやミックスの内容によって価格が異なる。もっとも安いメニューが4.95万円でケイマンTやマカンS、カイエンクーペなどに乗ることができる。憧れのポルシェ911だと6.05万円からだ。筆者はもちろん911を選んだ。

ニュルやラグナセカの名物コーナーを再現!?

 さて、90分で何ができるのか。PEC東京には大きく分けて6つのコース施設(モジュール)があり、90分の間、基本的にどの施設をどれだけ走ってもいいということになっている(オフロードは専用車両のみ)。しかもプロフェッショナルドライバーによるマンツーマンの同乗コーチングがなんとメニュー料金に含まれている!

 どんなコースがあるのか。舗装系モジュールは5種類だ。メインは1周およそ2kmのハンドリングトラックで、かのニュルブルクリンク北コースの名物コーナー”カルーセル”や、ラグナセカの”コークスクリュー”などが再現された非常にチャレンジングなコースだ。

2.1kmの周回距離を持つコースでは、ニュルブルクリンク(ドイツ)のカルーセル、ラグナ・セカ(アメリカ)のコークスクリューなどの有名コーナーを再現。

 とはいえここはサーキットではない。あくまでもさまざまなポルシェの特性を知り、ドライビングスキルの基本や初歩を学ぶための場所。速さを競うのではなく、比較的低い速度(といっても最高120km/h前後まで出せる)でライン取りや荷重移動の正確さといった基本中の基本をプロから教わるというわけだ。

 実際、911で走ってみれば連続するコーナーなどはきっちりと減速し荷重を移動してリズミカルにこなさないと気持ちよく駆け抜けることができない。初心者はもちろんのこと、腕自慢のベテランにも基礎を見直すいい機会になりそうだ。本物とは反対周りながら名物コーナーの再現度は高く、特にラグナセカは落ちる瞬間の胃がキュッとする感じが堪らなかった。

ドリフト体験も可能!

 4、5周して他のモジュールに移る。ローフリクション・ハンドリングトラックは磨かれたコンクリート路面、つまりはツルツル。定速度域でアンダーステアやオーバーステアを体感し、それをコントロールするテクニックを磨く。またポルシェのシャシー制御を学ぶ場所としても有効だ。試しにコーナーの出口でアクセルを踏み込めばたちまちオーバーステアになるが電子制御が効いて車体を立て直してくれた。

 数周試してお次はダイナミックエリアへ。こちらは舗装路面のオープンスペースで、ローンチコントロールからのフル加速や、逆にフルブレーキング、スラロームなどドライ路面ならではといった基本パフォーマンスを試す。ポルシェの実力拝見というわけだが、普段はできない体験で、しかもいざというときにも役立つ経験である。

 そしてお待ちかね、ドリフトサークル。低摩擦のコンクリート路面にスプリンクラー施設を備えた旋回専用コース。アンダーステアの旋回はもちろん、意図的にオーバーステアに持ち込んでドリフト体験をすることも可能だ。911でのドリフトはリアに重心が寄っている分、慣れたらやりやすいというけれど……。右回りと左回りとで感覚がまるで違うことなど、さまざまな発見があると思う。

 本当はもう一つモジュールがあるけれども、そこは現在閉鎖中。キックプレートと言って、突発的なスピン状態に対処する臨機応変力を鍛える施設らしい。

 キックプレートを除く4つのモジュールを堪能してメインの建物まで戻ってきてみればまだ45分しか経っていなかった。つまり90分というメニューは十分すぎるほど長いということ。その間、ずっと同じコースやモジュールを試すこともできるし、一通り経験してから苦手克服メニューに取り組むもよし。

 カイエンのミックスメニュー(6.05万円)を選んでおけば、クルマをカイエンGTSからオフロードパッケージ(世にも稀な仕様だからぜひ、乗っておくべし)に乗り換えて本格的なオフロード走行も経験できる。

クルマの楽しみ方を再発見

 最初メニュー料金表を見たときには「流石にポルシェだ、いい値段するナァ」と思ったものだが、911やカイエンといった憧れのモデルを、タイヤの減りを気にすることなく存分に長い時間乗れて、しかも1対1のトレーニングを受けることができると考えると、高いどころか安いとさえ思った。

 自分でポルシェを買って、個別ではないトレーニングプログラム(最低5万円はかかる)に参加し、多少なりともタイヤを減らしメカに負担をかけて帰ることを思えば断然リーズナブルだ。

 海ほたるを渡り、ものの半時間で現地に着く。ドライブやツーリングの目的地としても最適で、江戸切子を模したユニークな建物には名車やレーシングカーの展示、カフェ、レストランも併設されている。こちらはドライビングメニューを予約していなくても利用できるから、気軽に立ち寄ってみてはいかがだろう。

 ポルシェジャパンが、クルマの販売促進ではなく、クルマの楽しみ方を学ぶために作った施設。この新たな試みは、音問題など高性能車にとって厳しくなるばかりの公道環境にあって、ハイエンドブランドの今後の指針にもなりそうだ。

カフェやレストラン、アイテムショップなども併設され、ドライビング体験以外も楽しむことができる。

シミュレーターラボは、プロのレーシングドライバーも使用する本格的なもの。世界有数のレーストラックでのドライビングを、本物に限りなく近いリアルな挙動で体験することができるという。

建物の外観は、日本の伝統的工芸品の江戸切子をモチーフにデザインされた。館内にも日本庭園を連想させる和のテイストが盛り込まれている。

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