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最終更新日:2021.09.25 公開日:2021.09.25

フランクフルトモーターショーから「IAAモビリティ2021」へ。内容も一新、EVとモビリティのショーに

2019年まで独・フランクフルトで開催されていた「国際モーターショー(IAA)」が、今回から「IAAモビリティ2021」として開催地をミュンヘンに移し、内容もリニューアルして9月7日~12日の日程で開催された。展示されたクルマはほぼすべてEV。エンジン車が見られなくなった新時代のモーターショーを、ジャーナリストの会田 肇が解説する。

文=会田 肇

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一般にも親しみやすさを訴えるため、ミュンヘンの市街地のケーヒニス広場も「IAA Mobility 2021」の会場となった(写真提供:IAA)

電動車の試乗予約は7000件以上に!

 今回のIAAモビリティ2021は、ドイツにとってもコロナ禍によるロックダウン後では最大規模の国際イベントであり、それだけにリアルだけでなくオンラインも加えたハイブリッド開催とした。会場でも入場時には新型コロナワクチン接種証明書や陰性証明書などの提示や、マスク着用を義務付けるなど、厳格な感染拡大防止措置がとられたという。

 そうした中で開催コンセプトも大きく変化した模様だ。専門家だけにとどまらず一般市民も参加しやすくなるよう、ミュンヘン市東部のメイン会場以外に市内中心部にも複数の展示会場を設置。しかもその約12kmを「Blue Lane Road」として、電気自動車や燃料電池車などで試乗できるコースに設定する新たな手法も採用された。予約数も約7000件に上った。

 出展社もこれまでの乗用車だけにとどまらず、これから伸長が見込まれる電動アシスト自転車やスクーターなどマイクロモビリティ全般にまで拡大。モビリティの未来を紹介し、実際に体験して、会場でライブトークできる場となった。

メイン会場となった「メッセ・ミュンヘン」。主催者によれば32カ国から744社が出展。期間中40万人が来場した(写真提供:IAA)

会場はミュンヘンのメインステーション周辺とメッセ・ミュンヘンの2カ所。その間の約12kmはEVやFCVの試乗コースとなった(IAAホームページより)

市街地とメイン会場を結ぶBlue Lane Roadでは自動運転レベル2で走行するシャトルバスも使われた(写真提供:IAA)

コロナ禍によるロックダウン後に開催された国際イベントでもあるだけに、華やかな雰囲気でショーを盛り上げた(写真提供:IAA)

市街地で展開された会場では、通りすがりの家族連れが気軽に参加できるようになっていた(写真提供:IAA)

新型車もコンセプトカーもEVだらけ

 主催したメッセ・ミュンヘンによれば、出展したのは32カ国744社で、このうち自動車メーカーはBMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲンで、海外勢ではフランスのルノー、米国のフォード、韓国の現代/起亜が出展した。日本メーカーは1社も出展しなかった。今やオンラインで詳細が見られる時代となり、これはもはやモーターショーの世界的な流れなのかもしれない。

 そんな中で出展したメーカーがこぞって目玉企画としたのが電気自動車(EV)のニューモデル群だ。

 VWは25年に発売を予定するEVコンセプト「ID.ライフ」をワールドプレミア。メルセデスベンツもSUVタイプの「Gクラス」に初めてEVである「EQG」を公開し、他にも「Eクラス」や「AMG」のEVモデルを披露した。また、BMWはリサイクル材とバイオ原料のみを使用して100%リサイクルを可能としたEVコンセプト「1ビジョン サーキュラー」をワールドプレミアした。

 ドイツ勢以外では、ルノーがSUV「メガーヌ」のEV版「メガーヌE-TECHエレクトリック」をワールドプレミア。韓国の現代自動車は、EV専門ブランドとして立ち上げた「アイオニック(ioniq)」から、2022年に発売を予定するEVセダン「アイオニック6」を想定したコンセプトカーと、24年に予定するSUVのEV販「アイオニック7」関連の展示を行った。

VWがワールドプレミアしたEVコンセプト「ID.ライフ」は、25年に発売を予定する(写真提供:IAA)

メルセデス・ベンツはSUVタイプの「Gクラス」に初となるEV「EQG」を公開した(写真提供:メルセデス・ベンツ)

BMWがワールドプレミアしたEVコンセプト「1ビジョン サーキュラー」。100%リサイクルを目標とする(写真提供:IAA)

ルノーがワールドプレミアしたSUV「メガーヌ」のEV版「メガーヌE-TECHエレクトリック」(写真提供:ルノー)

ヒュンダイがEV専用ブランドとして立ち上げた「アイオニック」の、新しいコンセプトモデル「アイオニック6」(写真提供:現代自動車)

狭い街並みもスイスイ! 超小型モビリティも続々登場

 一方、欧州各国から出展して目立っていたのが、日本で言う超小型モビリティのようなマイクロEVだ。もともと欧州では古い街並みが多く、車両乗り入れが制限されていることが多い。その意味でも欧州には超小型モビリティが市街地で共存しやすい土壌があるのだ。

 その一つがイタリア拠点のスタートアップ企業XEV社が手掛ける「YOYO」で、最大のウリは交換式バッテリーを採用していることにある。しかも交換式バッテリーの供給チャネルもビジネスモデルに組み込んでいる。利用者はガソリンスタンドのような場所で交換できるほか、スマホでバッテリーの交換を発注すれば、仕事や買い物をしている間にサービスカーが向かって交換を済ませられる仕組みだ。

 シェアリングと個人利用の両方を想定したマイクロEVも注目を浴びた。親子で起業したベンチャーmicrolino社が提供する「m-cro」がそれで、BMWイセッタのようにフロントドアを開いて乗り降りする。丸みを帯びたレトロなデザインは欧州の街並みにもマッチするし、独自の衝突安全ボディも備えている。普通充電対応で航続距離は150km/200kmから選べる。

イタリア拠点のスタートアップ企業XEV社が手掛ける超小型モビリティ「YOYO」。バッテリー交換サービスもビジネスモデルとする(写真:XEV社HPより)

親子で起業したベンチャーmicrolino社が開発した「m-cro」。個人ユースだけでなくシェアリングも想定する(写真提供:IAA)

BMW初の高速型電動アシスト自転車に注目!

 マイクロモビリティとして注目したのがBMW Motorradが発表した2種類の電動バイクで、それが「BMW Motorrad Vision AMBY」と「BMW i Vision AMBY」である。中でもBMW i Vision AMBYは初の高速型電動アシスト自転車として登場し、道路の種類に応じて3段階の最高速度が設定できる仕様となっている。

 たとえば、自転車専用道路では25km/hで走行し、都心部の車道を走るときは45km/hに最高速度を上げられ、さらに郊外の道路や複数車線の道路では60km/hに設定できる。ちなみに航続距離は約110kmとのことだ。

 メッセ・ミュンヘンによると、開催期間中の訪問者は約40万人で、コロナ禍の1週間弱の開催でこの実績はイベントとして概ね成功したと言えるだろう。次回の「IAAモビリティ」は、2023年9月5~10日にミュンヘンで開催される予定だ。

「BMW Motorrad Vision AMBY(右)」と「BMW i Vision AMBY」。一般ユースで使いやすいのは後者かも(写真提供:BMW)

IAA Mobilityの開催初日(9月7日)にはドイツのメルケル首相が会場を訪れた(写真提供:IAA)

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