自走ロボットが食料品や日用品を自宅までお届け。エネオスなど3社が実証実験
食べたいと思った牛丼が、自律自走するロボットによって宅配される! そんな実証実験が東京都中央の佃・月島エリアで行われている。エネオスホールディングス、ZMP、エニキャリの3社協力の下で実施されているもので、対象店舗の食料品や日用品など、幅広い商品を自走ロボットが一般消費者宅に配送している。実験期間は2月8日~26日の約3週間。
配達員の人手不足解消や、非対面・非接触での配達ニーズに応えていく
コロナ禍は食品など日用品をデリバリーするという新たな生活習慣を生み出した。しかし、デリバリー需要が拡大するにしても人手不足の問題は解決しておらず、一方で非対面・非接触といった部分でのニーズも高まっているのも事実だ。今回の実証実験はそういったニーズに応える独自のデリバリーインフラの構築を目指し、最終的にはビジネスに成長させることを目標としている。
今回の実験では、エネオスのサービスステーション(SS)に配備したZMPの自動宅配用ロボット「DeliRo(デリロ)」2台を使い、エニキャリが開発したデリバリープラットフォームの下で実施。食料品や日用品など幅広い商品を佃・月島エリアにある住宅地区「リバーシティ21」のマンション群(約1000戸)まで配送する。配送対象となるのは実証実験に協力した佃・月島エリア周辺店舗10店が取り扱う商品で、1回の配送ごとに297円(税込)の利用料が徴収される。
デリロ本体には4つの収納ボックスが用意され、一度に最大4種類の荷物を収めて運ぶことが可能。利用者から注文を受けた店舗が注文品をデリロまで届けると、デリロが「リバーシティ21」まで約800mを15分ほどかけて自走。目的地に到着すると利用者のスマホに通知が飛ぶ。利用者はスマホに表示されたQRコードでデリロの扉を開いて注文品を受け取るという流れだ。
今回の実験では、利用状況の途中経過も明らかになった。それによると近隣にポスターやチラシによって告知した。2月12日までの平均で1日辺り2~3件程度の利用があったという。実験ではスマホを使うことが前提となっているものの、比較的高い年代からの利用もあり、全体として「配達スピードや料金コストは満足できる」「防犯面や衛生面で安心感がある」といった好意的な意見が多数を占めているそうだ。
自走ロボットは来年にも遠隔監視に移行。22年にビジネス展開予定
実験を始めるにあたって課題となったのは、デリロの取り扱いだった。実はデリロの車両区分は原動機付き自転車に該当するため、本来なら歩道を走行することはできない。しかし、デリロを管理するZMPは、佃・月島エリアで自動運転一人乗りロボ「RakuRo(ラクロ)」での公道走行を先行で実施しており、「この実績が評価されてデリロも1月より”歩行者”と同様の認定を警察庁から受けることができた」(ZMP)という。ただし、自走中に万一トラブルが発生した場合にすぐ対処できるよう、走行中は人が伴うことが条件となった。
一方で、エネオスのSSは現在、全国に約1万3000か所存在するが、自動車の燃費向上や電動化に伴う需要減少や後継者不足という課題に直面している。そこでエネオスではEVやマイクロモビリティ等のシェアリングサービス等を展開する計画で、今回の実証実験を含めた新たなサービスを通してSS生き残り策としていく考え。
今回の実証実験は、3社が目指すロボット・デリバリーサービスの実用化に向けた第一段階となる。実験を通して配送料や配達サービスを含むビジネス性を検証し、ロボットを公道走行させることによる技術的課題も洗い出す。合わせて実験のために用意した宅配プラットフォームとの連携性も検証する。今後は2022年3月までの2021年度中に、現在の有人が付き添う体制から遠隔監視でのロボット運用へ移行し、同時にエリアを佃・月島エリア全域へ拡大。22年にはビジネスフェーズへと発展させ、他エリアへ広げていく計画だ。
<実証実験の詳細>
●期間
実証実験期間:2021年2月8日~2月26日
営業時間帯:12時~14時半/17時~19時半
※雨天の場合はロボットによるデリバリーは行わない
●場所
配送先:東京都中央区佃のマンション3棟(リバーポイントタワー/シティーフロントタワー/スカイライトタワー)
自動宅配ロボットステーション:東新エナジー運営Dr.Drive月島SS
●参加店舗
磯丸水産/縁 台湾タピオカ専門店/喫茶パーラー ふるさと/東京メロンパン/築地日進/のりまき屋/松屋/ミニストップポケット/焼肉スタミナ苑/ローソン