12月の交通事故が多い理由とは。特徴や傾向を分析してみた。
公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)が発表した交通事故統計年報によると、12月は1年のうちで最も交通事故の発生件数が多い月である。12月にはどのような交通事故が発生しているのだろうか。その特徴や傾向を分析し、原因や予防策について考えてみよう。
12月に多発する交通事故
公益財団法人交通事故分析センター(ITARDA)が発行する最新の交通事故統計年報(平成30年版、2020年7月発表)から月別の交通事故発生件数を見てみよう。平成30年12月の交通事故発生件数は約3万9000件と1年間で最も多い。そのうち死亡事故に至った件数は410件。こちらも1年間で最多である。この傾向は平成28、29年の推移を見ても同様であり、12月は1年のうちで最も交通事故が発生する月であることは間違いない事実である。
【月別交通事故と死亡事故件数(平成30年)】
※月、交通事故件数、死亡事故件数の順で記した。
1月 3万5000件 / 318件
2月 3万2000件 / 245件
3月 3万7000件 / 282件
4月 3万4000件 / 270件
5月 3万4000件 / 253件
6月 3万4000件 / 235件
7月 3万7000件 / 280件
8月 3万6000件 / 296件
9月 3万3000件 / 279件
10月 3万7000件 / 338件
11月 3万7000件 / 326件
12月 3万9000件 / 410件
12月以外にも例年、交通事故発生件数が多くなる月はある。3、7、10、11月だ。これらは行楽シーズンにあたり、交通量増加が事故件数増加の主な原因であると考えられる。12月も帰省や年末旅行、業務交通の集中などによる交通量増加の影響を受けていると考えられるが、他の月に比べて事故件数は飛び抜けている。それはなぜなのだろうか。
12月に薄暮時間帯の事故が多発
ここでは、内閣府の発表した交通安全白書(令和元年版)を元に考えてみよう。時間帯別の死亡事故件数を見ると、交通事故は薄暮時間帯である17~19時の間に多く発生している。さらに薄暮時間帯の死亡事故件数を月別に見てみると、10~12月にかけて大幅に増加している。そのうち、最も多いのは12月の325件で、最も少ない6月と比較すると約3倍も死亡事故が起こりやすいことが分かる。
薄暮時間帯の事故は自動車対歩行者が半数
薄暮時間帯には、どのような事故が発生しているのだろうか。
ここからは警察庁の資料を元に見ていこう。昼間の1時間あたりの当事者別死亡事故件数で最も多いのは車両単独事故(232.7件)。次いで、自動車対自動車(174.3件)、自動車対歩行者(162.7件)である。ところが薄暮時間帯になると一変、自動車対歩行者(643.5件)の死亡事故が圧倒的に多くなり、半数以上を占めることが分かる。また、薄暮時間帯における自動車対歩行者の死亡事故件数は、昼間の約4倍、夜間の約2倍も発生している。
さらに、薄暮時間帯における自動車対歩行者の死亡事故の約9割は道路の横断中に発生していることも分かっている。
このように12月には、薄暮時間帯における横断歩行者との事故が多発していることが分かった。秋から冬にかけては日没の時間が早くなるため、視界の悪い薄暮時間帯が長くなることが交通事故増加の一因だろう。
飲酒運転事故、スリップ事故も増加
12月に増加するのは、薄暮時間帯の事故だけではない。
月別の飲酒運転事故件数を見てみよう。飲酒運転による事故が最も多いのは、12月で2311件。次いで、10、11月が2075件。3月が2037件となっている。12月の飲酒運転事故が多いのは、忘年会、クリスマスなどの行事によって飲酒機会が増加することに関係があると考えられる。
さらに北海道交通安全協会の資料を見ると、スリップ事故も12月が最多であり、実に11月の約10倍も発生していることが分かる。北海道交通安全協会によるとそのほとんどは積雪、路面凍結によるものだという。
12月に発生する交通事故の対策
12月に発生する交通事故の要因には、薄暮時間帯の視界不良、飲酒運転、積雪や路面凍結によるスリップなどがあることが分かった。このことから、12月の事故を減らすために以下のようなことに注意してほしい。
【12月の運転で注意するポイント】
・ヘッドライト(前照灯)を早めに点灯する。
視界が確保されるとともに、歩行者や自転車などに自車の存在をアピールすることにもつながる。
・対向車や先行車の有無に注意しながら、ハイビームを活用する。
ハイビームを使うことで、遠くにいる歩行者や自転車を早く発見できる。
・お酒を飲んだら絶対に運転しない。ドライバーに飲酒をさせない。
飲酒運転事故を発生させない一番の対策は、飲酒したら絶対に運転しないこと。
・積雪や路面凍結の恐れがある場合は、車間距離を十分にとり、スピードを落として走行する。
積雪や路面凍結、路面が濡れている場合は、制動距離が長くなるため、追突事故が発生しやすい。
・早めにスタッドレスタイヤやチェーンを装備する。
降雪時は、ノーマルタイヤでは走行しない。
・歩行中は反射材(リフレクター)やLEDライトなどを活用する。
自転車は、早めにライトを点灯する。
師走とも呼ばれる12月、年末の慌ただしさから、先を急ぐ気持ちを感じるドライバーも多いだろう。しかし、12月は交通事故が多発する月である。普段よりも時間に余裕を持った運転計画をし、交通事故の可能性を意識しながら慎重にハンドルを握ってほしい。