お値段は高級車並み! 豪華、高性能なeスポーツ用シミュレーター
ゲームのグラフィックの進化にあわせて、入力機器であるシミュレーターの高性能化・高額化も加速中だ。そのなかには価格が数百万円するものまで存在する。そんな深遠な世界の一部をのぞいてみよう。
アストンマーティン製レーシングシミュレーターは約780万円!
アストンマーティンは同社初のレーシングシミュレーター「AMR-C01」の受注を、2020年9月14日から開始した。その価格は5万7500英ポンド(約780万円)! 筐体はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製で、アストンマーティンのデザイン部門が造形を担当している。そしてシミュレーターのソフト面に関しては、イギリスのCur Racing Simulatorが担当している。同社はF1などのチームやプロドライバーを対象とした本格的なレーシングシミュレーターメーカー。
AMR-C01のコクピットは、プロ用のレーシングシミュレーターメーカーが手掛けたこともあり、ハンドルにはクルマの状態を表示するフルカラーLCDディスプレイに加え、レース中にマシンのセッティングを変更するための回転ダイヤルが9個、プッシュボタンが12個も装備されており、レーシングカーらしいルックスとなっている。
またゲームへの没入感を高めるため、アスペクト比が32:9の超ウルトラワイドゲーミングモニターを装備している。サウンドでも内蔵スピーカーに加えて、ゼンハイザー製のヘッドセットも付属するなど豪華な装備が目白押しとなっている。
内蔵されているPCのスペックは、CPUにIntel i7、GPUはNvidia GTX2080。対応するアプリ・ゲームソフトは、Assetto Corsaや、iRacing、rFactor2など。
またAMR-C01のシートポジションは、アストンマーティンのハイパーカーであるヴァルキリーを再現しており、材質も同じCFRPを採用している。そのシートやペダルボックスはポジション調整も可能な構造。カラーバリエーションも豊富で、筐体の色だけでなくクルマの内装のようにシートのパッドの素材(アルカンターラ、レザータン)やステッチの色も選べる。
7軸による高性能な国産レーシングシミュレーター
一方、アストンマーチンの豪華さに対して、リアルな体感を再現するため高性能化を遂げたのがアクセスのレーシングシミュレーター「ACSIM-PRO」だ。同社はサーキット走行を前提としたシミュレーターに必要な路面情報やクルマの動き(挙動)を、より正確にドライバーに伝えることを追求している。その最新機として10月2日に発売されたのがACSIM-PROである。
アクセスのレーシングシミュレーターは、路面情報やクルマの挙動をドライバーへ伝えるために、7本(軸)のシリンダーが装備されている。その内訳はシートに3軸、筐体に4軸となっており、シートのシリンダーはブレーキの減速Gやリアタイヤの滑りを再現し、筐体のシリンダーは車体のロール&ピッチを再現するというものだ。
このシリンダーによってリアルな挙動を再現してきたアクセスだが今回のACSIM-PROでは、よりリアルを追求するため筐体やシートレールなどの剛性を高め、シート後方にあるシリンダーのストロークを50mm短縮した。これによりシリンダーの動きを素早くドライバーに伝えられるようになった。さらにペダルも新規に開発し、配置や踏力調整も可能となり、より実車に近いフィーリングを再現できるようになっている。
使用方法は、ACSIM-PRO とPCやゲーム機をUSBで接続して稼働させる。対応するシミュレーションアプリ・ゲームソフトは、Assetto Corsaや、iRacing、rFactor2などに加え、グランツーリスモ6(1.21以上)もある。
グレードはシリンダーの軸数などの仕様違いで6種類あり、価格は税抜きで275万円から160万円。なおモニターやPC・ゲーム機は別売りだ。
レーシングシミュレーターを取材してみて、ゲーム用や個人用、業務用などの境界線が消滅しつつあると感じた。以前はレーシングシミュレーターを所有しているのは自動車メーカーやレーシングチームなどの企業が多かったが、最近ではレーシングドライバーやeスポーツプレイヤーなどが個人で所有するケースもあるようだ。そこにはレーシングシミュレーターが高性能化だけでなく、小型化・低価格化なども推し進めたという背景がある。
今回紹介したような数百万円の機器を趣味で購入するには清水寺の舞台から飛び降りるくらいの勇気がいるが、小型化・低価格化が今後も進めば数年後は趣味でも、幅1メートル越えのモニターや7軸シリンダーを装備したレーシングシミュレーターが一般化するかもしれない。