京セラ「Moeye」は光学迷彩技術でエンターテインメント重視
京セラは、最先端デバイス・技術を多数搭載したコンセプトカー「Moeye(モアイ)」を発表した。Moeyeは、京セラが考える「未来」のクルマ像を世に問う作品である。その室内にはハンドルが見あたらず、光学迷彩技術や空中ディスプレイなどエンターテインメント性のある装備が、人の五感を楽しませるものとなっている。
京セラが提案する未来のクルマ像
京セラは、最先端デバイス・技術を装備したコンセプトカー「Moeye(モアイ)」を発表した。自動運転化やMaaS※が進行するほど、人の役割はドライバーから搭乗者へと変容する。その時、クルマには安全性能だけでなく、搭乗者を楽しませるエンターテインメント性能も重視されるというのが同車のコンセプト。Moeyeはそんな未来のクルマ像を具現化した作品なのだ。
実際、運転席周りを見ると完全自動運転を想定してハンドルやペダル類は見あたらない。代わりに空中ディスプレイ、光学迷彩技術、触覚伝達技術など、五感で感じさせる装備でエンターテインメント性を演出する。
ダッシュボードの透明化や、キャラクターが空中に浮遊
Moeyeに搭載された、エンターテインメント性を重視した京セラ独自の最先端デバイス・技術を紹介しよう。
1.光学迷彩技術
車内の一部が透明化したような視野を作り出す光学迷彩技術は、京セラと東京大学が共同開発したものだ。ダッシュボートなどに装備された液晶ディスプレイに鮮明なバーチャル3D映像を投影することによって、従来よりも広い視野で景色を楽しめるようになる。
2.空中ディスプレイ
空中ディスプレイは、高性能な液晶ディスプレイからの投影映像をダッシュボード上部の空間に結像させる技術。これによりダッシュボード上部に、浮遊しているような映像を投影させる。Moeyeでは、オリジナルキャラクターである「モビすけ」を投影し、搭乗者にさまざまな情報を案内してくれる。
写真右上に投影されているのがモビすけ。写真:京セラ
3.LED照明CERAPHIC(セラフィック)
ルーフやドアなどの室内灯には、生体にやさしい自然光に近似した光を作り出す京セラ独自のLED照明CERAPHICが用いられている。通常のLED照明では難しかった繊細な色彩表現が可能で、朝夕の自然光に近い色彩などを再現できる。
4. HAPTIVITY(ハプティビティ)
パネルを指でタッチした時に微細な振動を発生させて、クリックしたことを体感できる触覚伝達技術HAPTIVITYを、インパネとセンターコンソールに搭載。
クラッシックカーのようなプロポーションのなかに未来を
Moeyeのデザインを手がけたのは、デザインスタジオFortmarei(フォートマーレイ)のチーフデザイナー石丸竜平氏。石丸氏はEVスポーツカーのトミーカイラZZを販売したGLMの元チーフデザイナーである。同氏によると、「Moeyeのデザインテーマは「時間」。「伝統」から「未来」までという自動車の歴史(時間)を感じさせるようにデザインした」と述べている。
そのテーマにのっとって、外観は、「伝統」を表現するためクラッシックカーを意識した丸みを帯びたプロポーションで構成。対する「未来」は灯火器類やドアミラー、ドアラインなどの細部を幾何学的な造形にすることで表現している。
古き良き時代の温かみがある内装
一方で最先端デバイスが装備された内装のデザインは、温かみのあるテクスチャを採用することで古き良き時代の「伝統」であるクラフトマンシップを表現。もちろん、最先端デバイス・技術によって実現されたユーザーインターフェースが体現するのは、「未来」である。
自動運転のクルマでは何が重視される?
このように京セラはMoeyeを通して、運転から解放されたら車内はエンターテインメントを楽しむプライベートスペースになる、という未来のクルマ像を提示している。今後、高度な自動運転技術が確立した後に、人はクルマの何を重視するようになるのだろうか? 鉄道が景色や食事を楽しむ観光列車を登場させたように、クルマも観光やエンターテインメント性に特化したものが登場するかもしれない。自動運転によってクルマ像が大きく変わろうとしている。Moeyeは、そんなことを感じさせる意欲作である。
※Maas(Mobility as a Service):2015年のITS世界会議では「いろいろな種類の交通サービスを、需要に応じ利用できる1つの移動サービスに統合することである」という定義が取り決められたが、現段階でサービス形態などの具体的な定義は定まっていない。読みは「マース」
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