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最終更新日:2020.06.19 公開日:2020.06.19

高齢者の運転と聴覚には関係があった。楽しく安全運転トレーニングができるサイトを紹介

近年、ペダル踏み間違い事故や高速道路の逆走など、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっている。高齢ドライバーが安全に運転していくために必要なのが認知力だが、耳の専門家に話を聞くと、運転に必要な認知力と聴覚の間には深い関係性があるという。

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高齢者ドライバーによる事故

©xiaosan – stock.adobe.com

 近年、ペダル踏み間違い事故や高速道路の逆走など、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっている。統計によると、ペダル踏み間違いに起因する事故は年間約4,000件以上発生しており、その加害者の多くは24歳以下の若者と75歳以上の高齢ドライバーである(※1)。また、高速道路の逆走は、年間約200件のうち約45%が75歳以上の高齢ドライバーによって引き起こされていることが分かっている(※2)。

ペダル踏み間違い事故は、24歳以下と75歳以上の年代が起こしやすい。 出典:交通事故総合分析センター(ITARDA)

 高齢者が事故を起こしやすいとはいえ、生活や仕事をしていく上で運転が必要不可欠なため、免許返納をせずに長く運転を続けていきたいという高齢者も多い。

 高齢ドライバーが事故を起こしやすくなるのは、加齢に応じて脳や体の機能が衰え、認知・判断・操作という運転に必要な3つの要素を素早く、同時に行うことが難しくなるからだ。高齢者が、いつまでも安全に運転をするためには、認知・判断・操作に関する自分自身の能力を的確に把握し、それに合わせた運転をすること。また、運転機能に影響を与える認知症にならないよう、常にチェックを行い早期発見や予防を行うことが必要である。

※1:交通事故総合分析センター(ITARDA)「ITARDAインフォメーションNo.124」
※2:NEXCO東日本「家族みんなで無くそう逆走」資料

聴覚の衰えが運転に影響する?

国際医療福祉大学医学部耳鼻咽喉学科教授・中川雅文氏。

 国際医療福祉大学医学部耳鼻咽喉学科教授・中川雅文氏によると、運転に必要な要素の1つである認知能力は聴覚と深い関わりがあるという。そこで中川氏に高齢者の運転と聴覚についての話を聞いた。

 まず、高齢になると聴覚にどんな変化が起こるかを尋ねてみた。

 「加齢とともに高い周波数が聞こえにくくなり、聞き返すことが多くなります。特に周囲が騒がしいところでは、”あくしゅ”と”はくしゅ”、”しぶや”と”ひびや”、”かとう”と”さとう”などの聞き間違いをすることが増える傾向があります」(中川氏)

 中川氏によると、聴覚が衰える初期段階では、さ行、は行などの歯擦音と呼ばれる高い周波数を多く含む音が聞きづらくなる。このような聞き間違いが多くなると聴覚が衰えている可能性があり、同時に、運転にも影響が出る可能性があるのだという。

 例えば、同乗者の話すルート案内が聞きとれずに、曲がるべきところで曲がれないことが増える。聞きとりにくいがゆえに、ラジオやカーステレオの音も大きくなりがちで、周囲の車のクラクションに気づくのに遅れることや 、追い越していく車に気づけずにヒヤリとすることが増えるそうだ。

 普段の生活の中で家族から「テレビの音量が大きい」などと言われた経験がある人は、自身の聴覚の衰えを認識し、クルマの運転中に流すラジオや音楽のボリュームを改める必要があるかもしれない。

認知力と聴覚の関係

運転に必要な認知力と聴覚の関係を説明する中川氏。

 運転に必要な認知力と聴覚にはどのような関係があるのだろうか。

 「私たちは、”目で見る”ことに加えて、”耳で聞く”ことの情報を合わせて刻々と変化する事象を認知・判断しています。それは、生理的かつ反射的なもので 、どちらが欠けても正確な判断が難しくなります」

 例えば、救急車のサイレンが聞こえているのに救急車が視野に入っていない時、どこで音が鳴っているか分からないという経験をしたことはないだろうか? 聞こえるだけもしくは見えるだけでは正確に事象を認識できない可能性があるのだ。

 つまり、運転中に正確な判断をするためには、視覚と聴覚の両方を使って事象を認知する必要がある。もし、聴覚が衰えていると感じる場合は、より慎重に安全確認をする必要があるのだ。

聴覚認知をトレーニングで補う

©Andrey Popov – stock.adobe.com

 それでは、安全に運転を続けていくために、聴覚をトレーニングすることはできるのだろうか?
 
 「いわゆる加齢性の難聴を、元通りに”聞こえる耳”に戻すことはできません。しかし、トレーニングで選択的な注意力を高め、聴力低下に伴う認知力の低下を補うことはできます。例えば、走行音などのノイズ下における後続車のクラクションや、追い越してくるバイクの音を聴き分けるなど、運転に必要な力を選択的に高めることは可能だと考えます」

 加齢性の難聴は、耳の蝸牛の中にある有毛細胞がダメージを受けて、減少したり、抜け落ちたりする変化であるためトレーニングで回復することはできない。しかし、運転に必要な聴覚と認知の連携は、繰り返しトレーニングすることで補うことができるのだ。

JAF「エイジド・ドライバー総合応援サイト」

JAF「エイジド・ドライバー総合応援サイト」では、認知・目・耳の項目ごとにチェックとトレーニングのコンテンツが公開されている。

 トレーニングとしては、聞いた音を覚えたり、音の違いを聞き分けたり、騒音の中にある任意の音のみに注目して聞いたりするなどの方法が有効だという。

 中川氏が監修したJAFの「エイジド・ドライバー総合応援サイト」内にある聴覚に関するトレーニングもそんな方法を実践するもの。耳のチェック、ルート案内認識力トレーニング、同じ音探し聴覚認知力トレーニングの3つがあり、高齢者ドライバーに向けて無料で公開されている。

JAF「エイジド・ドライバー総合応援サイト」のルート案内認識力トレーニング。

 例えば、ルート案内認識力トレーニングは、画面に表示された地図を見ながら、ルート案内の音声を聞き、到着する目的地を答えるトレーニング。ルート案内の音声は実際にクルマに乗っている時のように、クルマの走行音や周囲の環境音と一緒に再生されるため、騒音の中から声のみを選択的に聞くことがトレーニングできる。また、ルート案内を聞いて覚えることで認識力や記憶力もトレーニングすることができる。

 耳の機能チェックでは、普段の生活における耳の聞こえ方についての質問に答えることで、聴覚の衰えを簡易的にチェックすることができる。最近、耳が聞こえづらくなってきたと感じる人、自分の運転が不安になってきた人は同コンテンツを試してみてほしい。

 中川氏は最後に「人は誰しも加齢に伴い聴力が衰えていきます。高齢者になっても長く楽しく運転を続けるために、トレーニングを通じて日々、自分の弱点を見つけ、それを克服するように努力することで認知力を高めていきましょう」と高齢ドライバーに向けてエールを送ってくれた。

関連リンク

JAF「エイジド・ドライバー総合応援サイト」

国際医療福祉大学病院

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