全国の都道府県道1号はどんな道路? 西日本編(中国・四国・九州・沖縄)
都道府県道1号は「主要地方道」のひとつとして位置付けられており、国道や高速道路などと共に円滑な道路交通を担う重要な道路だ。ここでは西日本編として、中国から九州・沖縄までの3地区17路線(4路線は欠番)を取り上げる。
都道府県道は、高速自動車国道、国道、市(区)町村道と共に道路法第3条によって定められている公共の道路だ(※1)。都道府県道は地方的な幹線道路網を構成しており、中でも重要なのが、建設省大臣(現・国土交通省大臣)によって指定を受けた「主要地方道」だ(※2)。主要地方道の中には、ひとつの都道府県では収まらず、複数にまたがるものもある。主要地方道は1~100号までの路線番号が振られており、今回紹介している都道府県道1号も、基本的には主要地方道である(※3)。
今回は都道府県道1号「西日本編」として、以下のリストにある中国、四国、九州・沖縄の3地区合計17路線を取り上げ、起点・終点や総延長、その特徴などを紹介する。そのうち4路線は欠番だが、それぞれの理由の調査結果も掲載した。なお総延長と起点・終点に関しては、国土交通省が5年ごとに発表している「道路センサス」2015年版を参照した(※4)。そのほか、各都道府県の道路管理部門などが公表している公式データなども参考にしたほか、各自治体に直接確認した路線もある。
【中国】
鳥取県:溝口伯太線(みぞぐちはくたせん ※5)
島根県:溝口伯太線(※5)
岡山県:欠番
山口県:岩国大竹線(※6)
広島県:岩国大竹線(いわくにおおたけせん ※6)
【四国】
徳島県:徳島引田線(とくしまひけたせん ※7)
香川県:徳島引田線(※7)
愛媛県:欠番
高知県:欠番
【九州・沖縄】
福岡県:豊前万田線(ぶぜんまんだせん ※8)
大分県:豊前万田線(※8)
長崎県:佐世保嬉野線(させぼうれしのせん ※9)
佐賀県:佐世保嬉野線(※9)
熊本県:熊本玉名線(くまもとたまなせん)
宮崎県:小林えびの高原牧園線(こばやしえびのこうげんまきぞのせん ※10)
鹿児島県:小林えびの高原牧園線(※10)
沖縄県:欠番
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中国・四国地方を紹介
中国地方の県道1号・5路線(1路線欠番)
【鳥取県】溝口伯太線
起点は日本で最も古い部類の鬼の伝説が残る地
読み方:みぞくちはくたせん
起点所在地:西伯郡伯耆町溝口(さいはくぐんほうきちょうみぞくち)
起点交差点名:鬼守橋(きもりはし)
終点所在地:西伯郡南部町与一谷(さいはくぐんなんぶちょうよいちだに)
終点交差点:なし(島根県との県境)
延長(鳥取県内):17.5km
総延長(鳥取・島根):19.5km
溝口伯太線は、鳥取県西伯郡伯耆町(さいはくぐんほうきちょう)から島根県安来市伯太町(やすぎしはくたちょう)までを結ぶ県道だ。総延長は19.5kmで、鳥取県区間は17.5kmと大半を占める。
起点は、鳥取県三大河川と称される日野川沿いの伯耆町溝口(ほうきちょうみぞくち)で、終点は島根県と接する西伯郡南部町与一谷(さいはくぐんなんぶちょうよいちだに)だ。路線名にある溝口とは、現在は伯耆町に属する地名のひとつとなっているが、かつては日野郡溝口町という独立した町だった。伯耆町は、2005年1月1日に溝口町と西伯郡岸本町が合併して誕生した町である。
その溝口地区で日野川(ひのがわ)に架かるのが鬼守橋(きもりはし)。その右岸にある鬼守橋交差点が起点である。この一帯は、日本において鬼にまつわる最古の部類の伝承がある地域で、同地も鬼を町おこしに用いている。たとえば鬼守橋の周囲には10体の鬼のブロンズ像がある。さまざまなところに鬼の像や鬼をモチーフにしたトイレや電話ボックスなどの施設があり、まさに鬼が風景に溶け込んだ町となっている。
溝口伯太線は島根県との県境に向かって西へ向かう途中で、国道180号南部バイパスとの重複区間となる。西伯郡南部町清水川(さいはくぐんなんぶちょうしみずがわ)から同町阿賀(あが)までの2km弱だ。そして阿賀からは3.5kmほどで県境となり、鳥取県区間は終了だ。
【島根県】溝口伯太線
徒歩でも踏破できる延長2kmの県道1号
読み方:みぞぐちはくたせん
起点所在地:安来市伯太町東母里(やすぎしはくたちょうひがしもり)
起点交差点名:なし(鳥取県との県境)
終点所在地:安来市伯太町東母里
終点交差点名:なし(県道9号との交差点)
延長(島根県内):2.0km
総延長(鳥取・島根):19.5km
鳥取県西伯郡伯耆町(さいはくぐんほうきちょう)から、島根県安来市伯太町(やすぎしはくたちょう)までをつなぐ溝口伯太線。島根県区間の延長は2.0kmで、都道府県道1号の中で第3位となる短さだ。島根県区間の起点と終点は、同じ安来市伯太町東母里にある。起点は鳥取県との県境で、終点は県境から2kmほど西にある、県道9号と接する交差点だ。
なお、伯太町は現在は安来市内の地名となっているが、2004年10月1日に旧安来市および広瀬町と合併するまでは独立した町だった。溝口町も伯太町もすでに独立した市町村ではないところに、路線認定から長い時間が流れたことを感じさせてくれる県道1号である。
【岡山県】欠番
1994年の路線番号統一で県道1号岡山赤穂線は96号に変更
岡山県道1号は現在、欠番だ。ただし、1994年までは1号が存在していたという。詳細を岡山県に聞いてみたところ、まず目を通すことのないという古い資料まで調べてもらえて、1号がどのような変遷を経てきたのかを教えてもらうことができた。
教えてもらえた中で最も古い記録は、1949年(昭和24)3月1日時点のもの。つまり、旧道路法時代に路線認定を受けたときの県道1号ということになる。このときは岡山鳥取線といった。県庁所在地同士を結ぶ路線名であることから、重要な路線だったものと思われる。岡山県内では岡山市が起点で、鳥取県との県境に位置する苫田郡上加茂村(とまだぐんかみかもそん)を通って鳥取県につながっていたようだ。上加茂村はすでに存在しないが、津山市内に加茂町という地域名が残る。また、岡山鳥取線という路線はすでに存在していない。
そして新道路法が1952年(昭和27)に施行され、それ以降で残る最初の記録が1972年(昭和47)7月1日時点のもの。このときは智頭佐用線(ちずさようせん)だ。智頭とは鳥取県の町名で、現在でも八頭郡智頭町(やずぐんちずちょう)として存在する。一方の佐用とは兵庫県の町名で、岡山県に隣接する佐用郡佐用町(さようぐんさようちょう)のことだ。その両方をつなぎ、岡山県内を経由していたようである。智頭佐用線も、すでに存在していない。
さらに時代が進み、1980年(昭和55)7月1日の記録にあるのが赤穂和気瀬戸線(あこうわけせとせん)だ。兵庫県赤穂市(あこうし)から、岡山県和気郡和木町(わけぐんわけちょう)を経由し、現在の岡山市東区に合併された瀬戸町地区(せとちょうちく)まで至っていた路線のようだ。
そして、その赤穂和気瀬戸線と、別の県道である瀬戸宿岡山線(詳細は不明)を合併して誕生させたのが、岡山と兵庫にまたがる岡山赤穂線(おかやまあこうせん)だ。岡山赤穂線は1983年(昭和58)3月25日に記録があり、これが1994年まで岡山県道1号だった。
そして1994年4月1日に、複数にまたがる都道府県道(主要地方道)は、路線番号と名称を統一する決まりになり、岡山県が兵庫県に合わせる形で岡山赤穂線の路線番号を96号に変更し、1号はそれ以来欠番である。岡山赤穂線は現在も存在し、岡山市中央区の百間川橋交差点(ひゃっけんがわばしこうさてん)から、赤穂市の新田交差点(しんでんこうさてん)までをつないでいる。
【山口県】岩国大竹線
2020年3月にバイパスが開通して総延長は1.6kmプラス
読み方:いわくにおおたけせん
起点所在地:岩国市柱野(いわくにしはしらの)
起点交差点名:なし(県道15号との交差点)
終点所在地:岩国市小瀬(いわくにしおぜ)
終点交差点:なし(広島県との県境、両国橋上)
森ヶ原バイパス
起点所在地:岩国市御庄(いわくにしみしょう)
起点交差点名:なし(県道12号との交差点)
終点所在地:岩国市御庄
終点交差点名:なし(岩国大竹線の本線と合流する交差点)
支線
起点所在地:岩国市多田(いわくにしただ)
起点交差点名:なし(御庄大橋東詰の交差点)
終点所在地:岩国市多田
終点交差点名:岩国IC入口(国道2号との交差点、E2山陽道岩国IC入口)
延長(山口県内):11.7km
総延長(山口・広島):14.0km
都道府県道の番号順では広島県の方が先だが、岩国大竹線の起点である山口県から紹介する。同路線は、山口県岩国市柱野(いわくにしはしらの)と、広島県大竹市小方町小方(おおたけしおがたちょうおがた)をつないでおり、総延長は14.0km。山口県内区間は11.7kmだ。
岩国大竹線は起点からしばらくは北西に向かい、その途中で山口県の南東部を流れて瀬戸内海に注ぐ御庄川(みしょうがわ)に沿って走るようになる。途中で道路と御庄川も北東に方向転換して御庄川が錦川(にしきがわ)に注いだあとは錦川沿いに沿って北東へ。山間部をトンネルで抜け、その先が山口と広島の県境を流れる小瀬川(おぜがわ)だ。同河川に架かる両国橋(りょうごくばし、岩国市多田)の中央部分までが、山口県区間である。
岩国大竹線の山口県区間における直近の大きなトピックといえば、1.7km弱の延長を有する「森ヶ原バイパス」が2020年3月22日に開通したことだろう。同バイパスは、岩国大竹線の起点近くの東側に設けられ、南端(起点)で県道112号藤生停車場錦帯橋線(ふじゅうていしゃじょうきんたいきょうせん)、通称平田バイパスと接続している。森ヶ原バイパスはE2山陽道・岩国ICや、山陽新幹線・新岩国駅、岩国錦帯橋空港などへのアクセス強化と、市街地の渋滞緩和を目的として建設された。開通により、産業・観光の振興や、地域間の交流・連携の促進、地域住民の利便性向上が期待されている。
【広島県】岩国大竹線
両脇を山々に囲まれた小瀬川沿いの景観に優れた路線
読み方:いわくにおおたけせん
起点所在地:大竹市木野(おおたけしこの)
起点交差点名:なし(山口県との県境、両国橋上)
終点所在地:大竹市小方町小方(おおたけしおがたちょうおがた)
終点交差点:油見トンネル西口(ゆうみとんねるにしぐち)
延長(広島県内):2.3km
総延長(山口・広島):14.0km
山口と広島の両県にまたがる岩国大竹線。広島県内の区間は2.3kmで、全国の都道府県道1号の中で総延長の短い順では第4位となる。起点は、大竹市木野の両国橋。県境である小瀬川に架かる橋だ。渡ったあとは小瀬川に沿って上流(北東方向)に向かって進み、終点は国道186号と接続する油見トンネル西口交差点(ゆうみとんねるにしぐちこうさてん)である。
小瀬川は、山口県と広島県に連なる山々の合間を流れている。岩国大竹線の広島県区間は、そんな小瀬川に沿って走り、雄大な景観が目の前に広がる。山々の緑と青空がとても似合うことから、春から秋にかけて、中でも空が特に青い夏場はドライブに持って来いのルートではないだろうか。紅葉もきっと素晴らしいことだろう。
四国地方の県道1号・4路線(2路線欠番)
【徳島県道】徳島引田線
市街地から山間部まで多彩な沿線の景観
読み方:とくしまひけたせん
起点所在地:徳島市庄町(とくしまししょうまち)
起点交差点名:徳大薬学部前
終点所在地:鳴門市北灘町碁浦碁石谷(なるとしきたなだちょうごのうらごいしだに)
終点交差点:なし(香川県との県境)
延長(徳島県内):26.1km
総延長(徳島・香川):32.1km
徳島引田線は徳島県徳島市から香川県東かがわ市につながる県道1号で、総延長31.2km。徳島県区間は26.1kmとなっている。起点は、国道318号と接する徳島市庄町(しょうまち)の徳大薬学部前交差点。そこから北へ向かい、香川県との県境までのラスト2.2kmだけは鳴門市を通過する。終点は、鳴門市北灘町碁浦碁石谷(なるとしきたなだちょうごのうらごいしだに)だ。
道中、E32徳島道・藍住IC(あいずみ)の入口がある板野郡藍住町(いたのぐんあいずみちょう)の交差点(名称不明)から北側、板野郡板野町の県道12号川北街道との交差点(名称不明)までは「あいあいロード」の愛称がつけられている。
あいあいロードが終わる交差点から西へ2kmほどは、県道12号北川街道との重複区間だ。再び単独となって鳴門市へ向かって北上すると、市街地から田園地帯の広がる景観となり、さらには山間部へと入っていく。鳴門市に近づく頃には、山道も本格的となり、すれ違うこともできなさそうな幅員の区間も増え、カーブも右に左に連続するようになる。都道府県道1号の中でも屈指の慎重な運転の求められる山道だ。
また、県道12号との交差点の少し南側に旧吉野川があり、そこに架かる板野大橋上で徳島引田線は分岐。支線はE11高松道の板野ICへ接続している。
【香川県道】徳島引田線
全国都道府県道1号の中でも1、2を争うつづら折りの山道
読み方:とくしまひけたせん
本線
起点所在地:東かがわ市坂元(ひがしかがわしさかもと)
起点交差点名:なし(徳島県との県境)
終点所在地:東かがわ市坂元
終点交差点:大坂峠入口
別線
起点所在地:東かがわ市引田(ひがしかがわしひけた)
起点交差点名:なし
終点所在地:東かがわ市引田
終点交差点名:なし
延長(香川県内):6.0km
総延長(徳島・香川):32.1km
徳島県徳島市から香川県東かがわ市までをつなぐ徳島引田線。香川県区間は6.0kmと、全体の5分の1ほどになる。路線名の引田とは、現在は東かがわ市内の地域名として残っているが、かつて存在した町の名だ。2003年4月1日に、引田町は白鳥町(しろとりちょう)と大内町(おおちちょう)と合併して東かがわ市が誕生したのである。その東かがわ市で東側の県境に位置していたのが引田町だった。徳島引田線は、徳島市とこの引田町をつなぐ路線だったのだ。
香川県区間の起点も終点も、同じ東かがわ市坂元(さかもと)だ。坂元はかつては引田町に属していた町だった。起点は県境、終点は国道11号と接続する大坂峠入口交差点(おおさかとうげいりぐちこうさてん)。起点と終点は直線距離なら1.1km強しかないが、道のりに進むと5.1kmにもなる。それだけ道がつづら折りになっているという証しだ。香川県区間は右に左にカーブが連続し、中にはヘアピンカーブのようなRのきついものもあり、その複雑さは徳島区間を上回るといっていいだろう。全国の都道府県道1号の中でも1、2を争う山道だ。
また香川県区間には、この山道とは接続していない別線がある。E11高松道の引田ICの東側にあり、片側1車線ずつの直線路だ。この通りは、両端が交差点ではないところで突然市道に変わっており、ほかの県道や国道とは一切つながっていない。今後整備を行って県道1号へと格上げする計画なのかもしれないが、2019~2028年度に予定されている香川県の「道路の整備に関するプログラム」には徳島引田線に関する記載はないようだ。香川県にも問い合わせたが、確認はできなかったため、なぜぽつんと存在するのか不明である。
【愛媛県】欠番
かつては存在したが国道494号に昇格して県道1号は欠番に
かつて愛媛県には県道1号があった。愛媛県上浮穴郡久万高原町(かみうけなぐんくまこうげんちょう)とかつて高知県にあった池川町(いけがわちょう)を結んでいた久万池川線である。愛媛県に確認したところ、残念ながら詳しい話は不明ということだったが、高知県で教えてくれたのが、久万池川線などが1993年に国道494号に昇格したということ。愛媛県道1号および高知県道1号の久万池川線は、国道に昇格したことで欠番となったのである。
【高知県】欠番
1993年、県道1号は+県道24号で国道494号に昇格
高知県に確認したところ、高知県内にかつて存在した県道1号久万池川線に関する話を聞かせてもらうことができた。愛媛県の項で既述したように、かつて愛媛県上浮穴郡久万高原町(かみうけなぐんくまこうげんちょう)から、高知県内にかつて存在した池川町までをつないでいたのが、久万池川線だ。なお池川町は愛媛県との県境で2005年7月31日まで存在したが、吾川村(あがわむら)と仁淀村(によどむら)と合併。吾川郡仁淀川町となった。現在は、池川大渡という地名に残るほか、学校名や橋などの施設名などに残っている。
久万池川線に話を戻すと、同路線に、須崎市(すさきし)から佐川町(さかわちょう)までをつないでいた県道24号須崎佐川線を加えて1993年4月1日に誕生したのが、国道494号の高知県内区間である。現在、国道494号は、須崎市内の国道56号との交差点(名称不明)から佐川町を経由して仁淀川町の県境まで続き、その先は愛媛県区間となる。
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九州地方・沖縄県を紹介
九州地方・沖縄県の県道1号・8路線(1路線欠番)
【福岡県】豊前万田線
1.3kmという最短の都道府県道1号
読み方:ぶぜんまんだせん
起点所在地:築上郡上毛町大字吉岡(ちくじょうぐんこうげまちおおあざよしおか)
起点交差点名:八ツ並(やつなみ)
終点所在地:築上郡上毛町大字垂水(ちくじょうぐんこうげまちたるみ)
終点交差点:なし(大分県との県境、市場橋上)
延長(福岡県内):1.3km
総延長(福岡・大分):2.8km
豊前万田線は、福岡県築上郡上毛町(ちくじょうぐんこうげまち)から、大分県中津市(なかつし)までをつなぐ総延長2.8kmの県道1号。福岡県内の区間は1.3kmで、東日本から西日本まで全国都道府県道1号の中で最短だ。
路線名に豊前とあるのに、その南東側の隣町である上毛町が起点となっている。なぜ豊前市が起点でないのか、それとも起点は国道10号と重複しているのでわからないのか、福岡県に確認してみた。すると、かつては豊前市に起点があったが、豊前万田線の多くの区間が国道10号の指定を受けたことから、1996年4月1日に起点を現在の上毛町垂水(たるみ)の八ツ並交差点に移したとのことであった。
豊前万田線は八ツ並交差点から東の大分県との県境へと向かっていく。県境は、両県の間を流れる一級河川の山国川(やまくにがわ)だ。豊前万田線は垂水にある市場橋(いちばばし)を渡っていき、その中間地点が福岡県区間の終点となる。
【大分県】豊前万田線
延長は福岡区間に次いで全国2位の短さ
読み方:ぶぜんまんだせん
起点所在地:中津市高瀬(なかつしたかせ)
起点交差点名:なし(福岡県との県境、市場橋上)
終点所在地:中津市大字万田(なかつしおおあざまんだ)
終点交差点:新万田(しんまんだ)
延長(大分県内):1.5km
総延長(福岡・大分):2.8km
福岡県築上郡上毛町(ちくじょうぐんこうげまち)から大分県中津市大字万田(なかつしおおあざまんだ)までをつなぐ豊前万田線の大分県区間。福岡県区間の1.3kmに次いで、大分県区間も1.5kmと、都道府県道1号の中で第2位となる短い延長だ。総延長2.8kmも、2県にまたがる都道府県道1号の中では最も短い。
県境を流れる山国川(やまくにがわ)に架かる市場橋(いちばばし)の中間地点を起点とし、所在地は中津市高瀬(なかつしたかせ)。そこから南東に向かい、国道212号に接続する新万田交差点で終点となる。
福岡県区間も大分県区間も、豊前万田線の沿線には田園風景が広がる。夏の青空の下で走ればさぞかし爽快に感じることだろう。
【長崎県】佐世保嬉野線
日本最西端の都道府県道1号
読み方:させぼうれしのせん
本線
起点所在地:佐世保市三川内本町(させぼしみかわちほんまち ※11)
起点交差点名:三河内駅前(みかわちえきまえ ※11)
終点所在地:東彼杵郡波佐見町永尾郷(ひがしそのぎぐんはさみちょうながおごう)
終点交差点:なし(佐賀県との県境)
支線
起点所在地:佐世保市三川内本町(※11)
起点交差点名:三河内駅入口(※11)
終点所在地:佐世保市三川内本町(※11)
終点交差点:なし(佐世保嬉野線本線との合流交差点、牛石橋西詰の交差点)
別線
起点所在地:東彼杵郡波佐見町村木郷(ひがしそのぎぐんはさみちょうむらきごう)
起点交差点名:なし(県道107号との交差点)
終点所在地:東彼杵郡波佐見町宿郷(ひがしそのぎぐんはさみちょうしゅくごう)
終点交差点:なし(県道4号との交差点)
延長(長崎県内):16.0km
総延長(長崎・佐賀):20.4km
長崎県佐世保市(させぼし)から佐賀県嬉野市(うれしのし)までをつなぐ佐世保嬉野線は、日本で最も西に位置する都道府県道1号だ。総延長は20.4kmで、長崎県区間は16.0km。およそ4分の3を占める。
起点はふたつあり、本線と支線、どちらも佐世保市三川内本町(させぼしみかわちほんまち)からだ。本線の起点は、JR佐世保線の三河内駅前交差点(みかわちえきまえこうさてん)からで、いったん西側に向かうが半円を描いて東へ向かい、JR佐世保線と、それと並走する国道35号兼202号(重複区間で、国道2路線の道路標識が掲げられている)をオーバーパスする。そのまま東へ向かい、東彼杵郡波佐見町永尾郷(ひがしそのぎぐんはさみちょうながおごう)で佐賀県との県境となり、長崎県区間は終点となる。
一方の支線の起点は、国道35号兼202号の三河内駅前交差点のひとつ南側に位置する三河内駅入口交差点だ。眼前のJR佐世保線の踏切を渡って駅の東側に出て、小森川(こもりがわ)の手前で本線と合流する。佐世保嬉野線の本来のルートはこちらだったと思われるが、交通の円滑化のために踏切をオーバーパスする新ルートを設けたと推測される。
そして佐世保嬉野線の長崎県区間には、本線から離れた別線があるのも特徴のひとつ。東彼杵郡波佐見町(ひがしそのぎぐんはさみちょう)の村木郷(むらきごう)にある県道107号との交差点から、宿郷(しゅくごう)にある県道4号との交差点まで、本線と並走する直線路がその区間だけ佐世保嬉野線となっている。長崎県に確認したが、今となってはなぜこの区間が唐突に佐世保嬉野線なのかは、不明とのことだ。
【佐賀県】佐世保嬉野線
直線的で走りやすい区間が多い
読み方:させぼうれしのせん
起点所在地:武雄市西川登町大字神六(たけおしにしかわのぼりちょうおおあざじんろく)
起点交差点名:なし(長崎県との県境)
終点所在地:嬉野市嬉野町大字下宿乙(うれしのしうれしのまちおおあざしもじゅくおつ)
終点交差点:嬉野総合支所前
延長(佐賀県内):4.4km
総延長(長崎・佐賀):20.4km
長崎県佐世保市から佐賀県嬉野市までをつなぐ佐世保嬉野線の佐賀県区間。佐賀県内の起点は、県境の武雄市西川登町大字神六(たけおしにしかわのぼりちょうおおあざじんろく)。そこから4.4kmで終点の嬉野市嬉野町大字下宿乙(うれしのしうれしのまちおおあざしもじゅくおつ)の嬉野総合支所前交差点となる。総延長20.4kmのうちのおよそ4分の1が佐賀県区間だ。
佐世保嬉野線は、山や丘、森林などを切り開いて通したようで、長崎県区間も佐賀県区間も町中など一部を除くと、比較的直線的である点が特徴だ。長い直線を大きなRのカーブでつないでいるところが多く、走りやすい道といえる。若干ながら佐賀県区間の方が市街地を抜ける際にカーブが多いようだ。
【熊本県】熊本玉名線
九州で最も延長のある県道1号
読み方:くまもとたまなせん
起点所在地:熊本市中央区南坪井町(くまもとしちゅうおうくみなみつぼいまち)
起点交差点名:藤崎宮前(ふじさきぐうまえ)
終点所在地:玉名市大倉(たまなしおおくら)
終点交差点:玉名市桃田(たまなしももだ)
総延長:30.5km
熊本玉名線は、熊本市中央区の藤崎宮前交差点(ふじざきぐうまえこうさてん)から、熊本市の北に位置する玉名市大倉(たまなしおおくら)の玉名市桃田交差点までをつなぐ路線だ。九州の県道1号の中で最も総延長がある。
熊本玉名線は、ひとつの県内の路線ではあるが、所有と管理が大きくふたつに分かれている点が特徴だ。熊本市区間は政令指定都市である熊本市が担当しており、玉名市区間は熊本県の担当である。
基本的には1本道で構成されているが、玉名市に向かう途中、熊本市の北西部にある金峰山(きんぼうざん、きんぽうざんとも)などの山岳部を抜ける辺りでは、ところどころに現1号から離れては戻る旧1号区間がいくつか残されている。旧1号の曲がりくねった部分をショートカットする形でより直線的につないで誕生したのが現1号というわけである。熊本市に確認したところ、それら残されている旧1号の延長は、合計すると1.9kmになるという。現道だけだと熊本玉名線の総延長は28.6kmだが、そこに1.9kmが追加されるので、道路台帳上では30.5kmとなる。それら現在も残っている旧1号については、熊本市が運営する地図情報サービスで確認することが可能だ。
【宮崎県】小林えびの高原牧園線
日本初の国立公園を抜ける山道
読み方:こばやしえびのこうげんまきぞのせん
起点所在地:小林市細野(こばやししほその)
起点交差点名:西町(にしまち)
終点所在地:えびの市末永(えびのしすえなが)
終点交差点:なし(鹿児島県との県境)
延長(宮崎県内):24.1km
総延長(宮崎・鹿児島):35.6km
宮崎県小林市細野から、えびの市のえびの高原を経由し、鹿児島県霧島市までをつなぐ、総延長35.6kmの路線が小林えびの高原牧園線だ。宮崎県内の延長は24.1kmである。九州内の県道1号の中では、路線名に唯一経由地の入る路線だが、その経由地が市町村名ではない点も特徴的といえるだろう。えびの高原とは、霧島山地の最高峰・韓国岳(からくにだけ)の裾野に広がる標高1200mの高原のことで、日本初の国立公園である。都道府県道1号の中では、このような観光地の名称を入れているのは小林えびの高原牧園線のみである。
起点は、小林市細野(こばやしほその)において、国道221号と接続する西町交差点(にしまちこうさてん)だ。沿線は緑がとても多く、途中からは住宅もまばらとなり、山中を切り開いた道路となっていく。道中、E10宮崎道の小林IC入口交差点から終点側は、「えびのスカイライン」の愛称がつけられており、進むにつれて標高も上がり、その名の通り山々の稜線が見渡せるようになってくる。そして、小林市とえびの市の市境が近づく頃には右に左にカーブが連続し、本格的な山道に突入。ただしセンターラインのある2車線道路なので圧迫感もなく、比較的走りやすい山道といえるだろう。
なお2020年5月現在、小林えびの高原牧園線は一部の区間が通行禁止区間のため、鹿児島県まで行くことはできない。理由は、霧島連山は火山帯であり、そのひとつである硫黄山から人体に有害な火山ガスが噴出しているためである。それにより、甑岳(こしきだけ)の登山道入口付近から県道30号との交差点(名称不明)までの約2kmは、車両の通行禁止区間となっている。県道30号との交差点からさらに350mほど小林えびの高原牧園線を進むと、鹿児島県との県境である。
【鹿児島県】小林えびの高原牧園線
温泉地へと誘う紅葉も鮮やかな道
読み方:こばやしえびのこうげんまきぞのせん
起点所在地:霧島市牧園町高千穂(きりしましまきぞのちょうたかちほ)
起点交差点名:なし(宮崎県との県境)
終点所在地:霧島市牧園町高千穂
終点交差点:霧島温泉丸尾(きりしまおんせんまるお)
延長(鹿児島県内):11.5km
総延長(宮崎・鹿児島):35.6km
宮崎県小林市細野から鹿児島県霧島市までをつなぐ、小林えびの高原牧園線。鹿児島県区間の延長は11.5kmで、総延長の3分の1にあたる。鹿児島県区間は起点も終点も霧島市牧園町高千穂(きりしましまきぞのちょうたかちほ)にあり、起点は宮崎県との県境、終点は霧島温泉丸尾交差点(きりしまおんせんまるおこうさてん)だ。温泉地へと向かう県道なのである。
小林えびの高原牧園線の「牧園」(まきぞの)とは、現在は霧島市内に地域名として残る、かつて存在していた町名だ。霧島市は2005年11月7日、国分市(こくぶし)、溝辺町(みぞべちょう)、横川町(よこがわちょう)、霧島町(きりしまちょう)、隼人町(はやとちょう)、福山町(ふくやまちょう)に、牧園町を加えた1市6町が合併して誕生。牧園町は現在の霧島市においては北部に位置し、宮崎県と接していた。
なお、小林えびの高原牧園線の鹿児島県区間も「えびのスカイライン」の愛称のまま終点まで続く。えびのスカイラインは紅葉も見所として知られている。
【沖縄県】欠番
かつての軍用道路「合衆国一号線」との混同を避けるため
沖縄県道1号は欠番だ。その理由について沖縄県に確認したところ、太平洋戦争後に米国の統治下に置かれた時代まで遡る話を聞かせてもらった。沖縄に侵攻した米軍がまず実施したのが、軍用車両の通行が可能な幅員を備えた「軍道路」の建設。そして最初に設けられたのが、西海岸南部を走る「合衆国一号線」で、それは徐々に延伸されていった。日本から切り離された沖縄には、1952年(昭和27)4月に琉球政府が設けられ、道路の管理も行うことに。琉球政府時代は、米国にならって右側通行、制限速度の表示などはマイルだったという。
そして1972年(昭和47)5月15日、27年ぶりに日本に復帰して沖縄県となると、それまで琉球政府が行ってきた道路管理は、日本国政府と沖縄県庁に引き継がれることになった。琉球政府時代は、琉球政府道、市町村道、軍道の3種類の道路があったが、それらは整理され、国道、県道、市町村道の道路体系に改められたのである(そのまま軍道となっている道路もある)。その中で軍道区間と琉球政府道区間を併せ持っていた合衆国一号線は国道58号として指定を受ける。合衆国一号線で使われていたことから同じ番号は使用せず、県道1号を欠番としたそうである。混同してしまうことを避けたようだ。
ちなみにこの国道58号は、沖縄の日本復帰を象徴するもののひとつとされている。それは、国道58号は海を越えて鹿児島県に起点があるからだ。鹿児島市山下町の、国道10号との中央公民館前交差点を起点として東へ向かい、海に当たってそこで一度終了。次はJAXAのロケット打ち上げ施設があることで知られた種子島を縦断し、さらにその次は奄美大島を通過。そして沖縄本島には北部の国頭村(くにがみそん)に上陸し、西部の海岸沿いを南下して南部の那覇市内の久茂地交差点(くもじこうさてん)で分岐。内陸ルートは明治橋交差点で、海側の那覇西道路は国道332号空港通りと接続してそれぞれ終点となる。国道58号の沖縄県内の延長は146.8km、鹿児島県も含めた総延長は274.9km。洋上を含めると約800kmにおよぶ、唯一無二といっていい国道である。
都道府県道1号の西日本編をお届けした。西日本の県道1号もさまざまな特徴があることを知っていただけたことと思う。また、県道1号の欠番理由も多岐にわたっていることも、興味深く読んでもらえたのではないだろうか。道には歴史があるのである。