このステッカーのクルマは自動運転です。自動運行装置に関する安全基準が策定
国土交通省は、自動運転車の開発や実用化、普及を図るため、その安全性能や作動状態の記録項目等を定めた自動運行装置の安全基準を策定した。同時に周囲へ自動運転車であることを識別しやすくするために、車体へ貼付するステッカーのデザインを公表した。
4月1日の法改正により、自動運行装置に関する安全基準を策定
2019年5月に公布された「道路運送車両法の一部を改正する法律」(令和元年法律第14号)で、保安基準の対象装置に「自動運行装置」が追加されることになった。
そして2020年4月1日に令和元年法律第14号が施行されることを受けて、国土交通省は「道路運送車両法の保安基準」(昭和26年運輸省令第67号)などの改正を行った。その中で「自動運行装置」の安全基準の策定も行っている。
安全基準と同時に、周囲が自動運転車であることを識別するステッカーのデザインも発表。このステッカーが一般に浸透すれば、今後は周囲のドライバーも自動運転車を識別しやすくなるだろう。
今回の改正する法律と安全基準は、国際議論を踏まえつつ策定・施行されたもので、国際基準が成立した際には、速やかにそれを国内に導入するという狙いもある。今回策定された自動運行装置の安全基準に関する概要は下記のようになっている。
自動運行装置の安全基準
[性能]
(1)走行環境条件※内において、乗車人員及び他の交通の安全を妨げるおそれがないこと
(2)走行環境条件※外で、作動しないこと
(3)走行環境条件※を外れる前に運転操作引継ぎの警報を発し、運転者に引き継がれるまでの間、安全運行を継続するとともに、引き継がれない場合は安全に停止すること
(4)運転者の状況監視のためのドライバーモニタリングを搭載すること
(5)不正アクセス防止等のためのサイバーセキュリティ確保の方策を講じること 等
※場所(高速道路のみ等)、天候(晴れのみ等)、速度など自動運転が可能な条件。 この条件は車両によって異なる。
[作動状態記録装置]
自動運行装置のON/OFFの時刻、引継ぎ警報を開始した時刻、運転者が対応可能でない状態となった時刻等を6か月間にわたり(または2500回分)記録できること
[外向け表示]
自動運転車であることを示すステッカーを車体後部に貼付(メーカーに要請)
走行環境条件の付与手続き
(1)場所、天候、速度など自動運転が可能となる状況等を記載した申請書等を国土交通大臣に提出
(2)国土交通大臣は当該状況における自動運行装置の性能が保安基準に適合すると認めたときは条件を付与
サイバーセキュリティとドライバー監視が安全基準に盛り込まれる
自動運行装置には従来にない安全基準が盛り込まれている。その1つがサイバーセキュリティに関することだ。昨今のクルマはコネクテッドカーなどのように通信回線を備えたクルマも多い。また今後は高度な自動運転を実現するために、渋滞や信号、工事などといった道路情報も通信によって活用することが研究されている。そのような通信回線からハッキングされる危険性は以前から指摘されていたが、今回の策定では安全基準に必要なものとして [性能]の(5)に加えられている。
また自動運転中のドライバーの状態をカメラやセンサーなどで監視することも、[性能]の(4)に「運転者の状況監視」として盛り込まれている。「装置に監視されている」と考えると気分を害する人がいるかもしれない。しかし、装置と人が相互チェックを行うことで、より安全な自動運転を実現させようというのが、今回の狙いの1つでもある。