野菜も一刀両断のパワーウインドウの力。挟み込み事故を防ぐポイントとは。
パワーウインドウは今やほとんどの車に標準装備されている。簡単に操作できる便利な機能だが、その窓に子どもの指や首が挟まれる事故も起こっている。事故を未然に防ぐために気を付けるべきポイントを紹介しよう。
パワーウインドウの閉まる力は?
スイッチ一つで窓の開閉ができるパワーウインドウは、力の弱い子どもでも簡単に操作できる便利な機能だ。しかしその手軽さゆえに、指や首をはさみ込んでしまう事故も発生している。誤った使い方をすると、重大事故にもつながるパワーウインドウ。その閉まる力とは、どれほどなのだろうか。
JAFユーザーテストが、2017年2月にパワーウインドウの挟み込みにおける実証実験を行っているので紹介しよう。テスト車として用意されたのは、軽自動車、セダン、ミニバンの3台で、それぞれの窓が閉まる力を計測した。各車両の挟み込み防止機能の有無は、セダンにおいてはすべての窓に、ほかの2車両は運転席窓のみに備わっている状態だ。
今回の実験では、まずパワーウインドウのスイッチを入れ続けた状態における、挟み込み防止機能の作動有無が確認された。その結果、スイッチを入れ続けた状態で機能が作動したのはセダンのみだった。軽自動車とミニバンにおいては、挟み込み防止機能が備わっているにもかかわらず、窓はそのまま上がり続けた。
次に、窓が閉まる力をそれぞれ測定した結果について見てみよう。結果はそれぞれ以上の表のとおりとなった。挟み込み防止機能が作動したセダンでは平均8.4kgf。軽自動車は約26.4kgf、ミニバンは約28.1kgfで、これらは挟み込み防止機能が作動している状態の3倍以上の力となる。また、後者2車両においては、7歳児の平均体重である約24kgの男の子が窓にぶら下がっても、そのまま持ち上がってしまうほどの力である。当然、子どもが自力で閉まる窓を止めようとしても難しく、成人女性でも両手を使わなければ止められないことが、実験からも明らかとなっている。
さらには、その威力を証明するため、大根とゴボウを使った実験も実施されている。実験では、軽自動車には大根、ミニバンにはゴボウをパワーウインドウにあてがい、閉まる力を検証した。いずれの野菜もほとんど抵抗もなく切れている様子は、JAFのWebサイトに掲載されている動画でも確認できる。
事故を防ぐためには
前項でいかにパワーウインドウの閉まる力が強く、危険であるかということが分かったと思う。政府広報オンラインによると、意外にも事故の大半が大人の不注意により発生しているのだという。つまり裏を返せば、大人が注意してあげることで防ぐことが可能だということだ。どのようなことに注意すべきなのか、以下にまとめてみたのでしっかりと参考にしてほしい。
●パワーウインドウの操作前には声掛け確認を
運転席のスイッチで、後席のパワーウインドウを操作すると時は、まず子どもが窓から顔や手を出していないかを確認するようにしたい。運転中に振り返って後席の状況を確認することは危険なので、その場合、後席の窓の操作は安全な場所に止まってから行うようにする。
運転中で確認もできず、どうしてもすぐに閉めたい場合は、パワーウインドウを操作することを知らせる声掛けを徹底しよう。ただし、子どもは声がけをされると、逆にふざけて窓から手を出すこともあるので、声がけを繰り返すなど徹底した注意が必要だ。
●チャイルドシートの使用
当然ながら、6歳未満の子どもであればチャイルドシートに着座しているはず。正しくチャイルドシートに座っていれば、子どもの手が窓の上部まで手届く可能性は少なく、挟み込みに対する危険性はぐっと減る。チャイルドシートの有効性は、こんなところにもあるのだ。
●スイッチのロック機能の使用
運転席のパワーウインドウスイッチには、基本的にロック機能が備わっている。声掛けをしても好奇心が抑えきれずに子どもが後席のスイッチを押してしまう可能性は十分に考えられる。子どもを乗せているなら、ロック機能をオンにすることを習慣づけたい。
少しの間だからと、エンジンをかけたまま子どもを残してクルマを離れてしまうのも非常に危険で、絶対に避けたい。
今年は新型コロナの感染予防で、車内のこまめな換気が呼びかけられている。つまり、窓を開閉する機会が例年よりも増えているため、パワーウインドウの使用にもより注意をしたいものである。