ニュージーランド航空がカプセルホテルみたいなエコノミークラスを発表
ニュージーランド航空(以下NZ航空)が、新たなエコノミークラスの試作品「スカイネスト」を発表した。そのレイアウトは、まるでカプセルホテルのようだった。足を伸ばせるという常識破りなエコノミークラスが、また1つ増えそうだ。
6つのベッドを内包するエコノミークラス「スカイネスト」
NZ航空は、エコノミークラスの試作品として、フルフラットの睡眠エリアを6つ備えたスカイネストを発表した。その睡眠エリアは、3段ベッドを2つ並べたレイアウトで、まるでカプセルホテルのようだ。睡眠エリア内のスリープポッドと呼ばれるベッド部分のサイズは全長200㎝以上、全幅が肩部分で58cm以上とのこと。カプセルホテルの平均的な部屋のサイズは全長200cm、全幅100cm。寝台列車サンライズ瀬戸・出雲のB寝台シングルのベッドは全長196cm、全幅70cm。地上のものよりは、少し狭いようだ。
現在は特許と商標を出願している段階で、2021年までに、長距離フライトへの本格導入を決定するそうだ。なおNZ航空は2020年10月から、オークランド―ニューヨーク便という飛行時間が約17時間という路線の就航を予定している。スカイネストの開発が順調に進めば、この路線から本格導入される予定となっている。
スカイネストを開発した理由として「長距離フライトをエコノミークラスでご利用するお客さまにとって、体を伸ばせないことは苦痛の種になっている。この課題に真っ向から向き合ったのがスカイネストである」とNZ航空はコメントしている。
「can do」(実現できる)がNZ航空のスローガン
エコノミークラスによる長距離フライトで感じるのが、シートの狭さなどからくる身体の窮屈さ。縮こまった体を伸ばそうにも、エコノミークラスは座席ピッチ(座席と座席の間隔)や通路の幅が狭く、体を伸ばすことが難しい。エコノミークラスで体を伸ばせるスペースといえば、トイレ前か出入口付近くらいという機体がほとんど。座ったままでは眠りも浅く、目的の空港に降り着いた時には、疲労困憊なんてことも。
そうした課題に立ち向かっているのがNZ航空だ。2010年に3席が並んだエコノミークラスのシート座面がフルフラットになる「スカイカウチ」を同社が導入したときも話題となった。その後ANA(全日空)など各国の航空会社で、スカイカウチは「カウチシート」という名称で普及していった。今回のスカイネストもエコノミークラスの常識を変える起爆剤となるかもしれない。
NZ航空は「スカイカウチのときも、当局から認可が下りるまでに、大人2人で横になった際のシートベルト装着方法や、乳児・幼児が利用する際の安全対策など、さまざまな規制を乗り越えてきた。スカイネストは、そのときと比較にならないほど、ハードルが高い規制を乗り越えないと認可が下りないだろう」と述べている。
このような常識を打破するような新サービス開発にNZ航空が取り組むのは、「can do」(実現できる)という同社のスローガンが原動力となっている。エコノミークラスはガマンするものという常識にとらわれているようでは、ライバル航空会社たちと「横並び」の状態で、リーディングカンパニーやゲームチェンジャーにはなれない。スカイネストやスカイカウチのような視点を変えて新たなサービスを創出することは、自社のビジネスを成長させるのに不可欠なことである。だからこそNZ航空は「can do」精神を貫いている。巨大な機体や豪華なファーストクラスよりも、「エコノミークラスでも快適」という航空会社を支持する人も多いはずだ。