自動運転バスが茨城県の公道で4月から実用化へ。運賃は無料!
茨城県境町は、自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」を町内の医療施設や郵便局、学校、銀行などをつなぐルートにおいて定時・定路線で2020年4月から運行すると発表した。運賃は無料となる予定だ。
自動運転バスの運行開始は4月から
茨城県境町は1月27日、ソフトバンク傘下のSBドライブ株式会社と株式会社マクニカの協力の下、4月から自動運転バスを町内の移動手段として実用化することを発表した。
自動運転バスの走行ルートは、上図の通りで、町内の医療機関や郵便局、学校、銀行などを定時・定路線で運行を予定。境町にある「河岸の駅さかい」を起点とする往復5kmの区間を運行し、定員は11名、運賃は当面無料となる予定だ。自治体による公道での自動運転バスの実用化は国内初(※)という。
ちなみに、自動運転といえども、緊急事態発生時に運転を引き継ぐ運転手と、それを補佐する保安要員は乗車する形で運行するそうだ。
※定員11人以上の車両が一般人の移動手段として、期間を限定せずに大半の区間を自律走行するのは初めて(SB ドライブ調べ)。
自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」とは
今回、自動運転バスの実用化に使われるのはフランスの自動運転バスメーカー「Navya(ナビヤ)」が開発した自動運転専用の電気自動車「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」である。
NAVYA ARMAは、GPSなどで自車位置を認識し、搭載されたレーザーセンサー「LiDAR(ライダー)」で障害物を検知。SBドライブが開発した「Dispatcher(ディスパッチャー)」と呼ばれる遠隔管理システムにより、あらかじめ設定したルートを自律走行することができる。
NAVYA ARMAにはステアリングはついておらず、Dispatcherを介して遠隔地にいるオペレーターが運行状況を管理・監視する。
Dispatcherは、車内天井に取り付けられたカメラやセンサーで乗客の着座状況を確認してから発進するように監視したり、走行中における乗客の車内移動をで検知した際にオペレーターに知らせる機能を備える。また、危険事象の発生箇所や回数をデータとして蓄積して地図上で確認する機能など、安全運行のためのさまざまな機能を有する。
境町ではNAVYA ARMAを3台購入したが4月の運行開始には納入が間に合わないため、当面はSBドライブが保有するナンバー取得済みの車両を借りて運行するという。購入車両は、フランスから日本へ到着後に日本の保安基準に合わせて仕様変更が行われ、ナンバーを取得後、夏ごろに運行に供される見込みだ。
自動運転バス「NAVYA ARMA」の乗り心地は?
筆者は、昨年5月に「人とくるまのテクノロジー展」において開催されたNAVYA ARMAの試乗会に参加した。
試乗会は、SBドライブの添乗員とともにNAVYA ARMAに乗車し、パシフィコ横浜の屋外敷地内のルートを往復340m走行するというもで、その乗り心地は、いたってスムーズで危なさは感じなかった。動き出しはググっと揺れを感じたが、停車する時はかなりゆっくりと停まる印象だった。
この時の客席レイアウトは、前後4席ずつが向かい合うように設置され、スキー場のゴンドラのような雰囲気。乗降口の正面に折り畳みの補助席が3つ、吊り革が4本あった。ただし、境町での導入時のレイアウトやデザインは未定であるとSBドライブはいう。
SBドライブとマクニカによるサポート
今後、境町において自動運転バスが安定的に運行できるよう、SBドライブとマクニカによってサポートが行われる。SBドライブは、導入初期の段階でバスの運行を請け負う事業者のドライバーへのトレーニングを担当。そのために、町内にサテライトオフィスを開設する。一方マクニカは、自動運転ソリューションの知見をもとに各種センサーのメンテナンスやソフトウェアのサポートを担当。地元の車両整備工場と連携して、車両本体の整備も支援する。
境町では、高齢化に伴う免許返納者の増加や鉄道の駅の不足、バスやタクシードライバーの不足などの課題を抱えており、移動手段の拡充が喫緊の課題だという。自動運転バスの運行により、この課題をクリアし、住民の移動の利便性の向上を目指す。