阪神高速・6号大和川線、3月29日(日)に全線開通
大阪を中心とした関西の交通を大きく変えると期待されている、阪神高速・6号大和川線。2019年度内の全線開通を目指して工事が進められてきたが、いよいよ3月29日(日)16時に全線開通することが発表された。3月20日(金・祝)には開通記念イベント「大和川線トンネルウォーク」も実施される予定だ。
阪神高速・6号大和川線は三宝JCT~三宅JCT間9.7kmを結び、西側で同4号湾岸線と、東側で同14号松原線と接続する4車線の高速道路だ。1995年に都市計画として決定し、2589億円(大阪府および堺市の街路事業を含まず)の事業費をかけて建設されている。また、4号湾岸線や2号淀川左岸線、近畿自動車道などとともに、大阪都市再生環状道路の一部として位置付けられている重要な高速道路でもある(画像1)。
6号大和川線は、4号湾岸線と接続する三宝(さんぼう)JCTから鉄砲(てっぽう)出入口(西行き入口と東行き出口)までの約1.4kmと、三宅西出入口から14号松原線と接続する三宅JCTまでの約0.6kmの2区間が先行して開通済みだ。阪神高速・15号堺線とも交差しているが、接続はしていない。
今回開通するのは全体の約8割を占めるトンネル区間
3月22日の開通に向けて工事が佳境を迎えているのは、残りの7.7kmのトンネル区間だ(画像2・3)。鉄砲出入口(東行き入口と西行き出口が今回開通)から三宅西出入口(同出入口自体は開通済み)までがつながり、全線開通となる。
画像4は、大和川線の垂直断面図で、トンネル区間が大部分を占めることがわかる。またトンネルの深度は区間によって異なり、JR阪和線、大阪高石線(府道28号)、大阪狭山線(府道26号)をアンダーパスする辺りが深い。また、オレンジの区間は地上から穴を開けて掘る開削トンネルで、青の区間はシールドマシンがモグラのように掘り進めるシールド工法で通したトンネルだ。
今回開通する区間には4つの出入口
今回開通する区間には、4つの出入口がある(ただし、鉄砲出入口の半分と三宅西出入口は開通済み)。鉄砲出入口(フルIC、画像5)と三宅西出入口(ハーフIC)の間には、フルICの常磐(ときわ)出入口とハーフIC(三宅西出入口の逆向き)の天美(あまみ)出入口が用意されている。各出入口で接続する一般道は以下の通り。画像6は、各出入口の詳細図だ。
●鉄砲出入口:国道26号
●常磐出入口:大阪高石線(府道28号)
●天美出入口:大阪狭山線(おおさかさやません・府道26号)
●三宅西出入口:住吉八尾線(府道179号)
→ 次ページ:
6号大和川線開通の効果について
6号大和川線の全線開通でアクセスが大きく向上
最大の利点は、港湾部から、阪神高速・14号松原線、E26近畿自動車道、E25西名阪自動車道、E26阪和自動車道が接続する松原JCTへのアクセスが早くなることだ。例えば、大阪港湾部から一般道、高速道路の従来ルート、そして6号大和川線を使うルートを比較すると、画像7の通りになる。
特に堺浜の場合は、堺大和高田線(府道12号)や大堀堺線(府道187号)を利用する一般道ルートだと45分もかかるところ、6号大和川線だとわずかに16分。およそ3分の1まで時間短縮できる。
大阪南港の場合でも、阪神高速・16号大阪港線⇒1号環状線⇒14号松原線の都心経由ルートが29分かかるのに対し、4号湾岸線⇒6号大和川線ルートは16分。13分、約45%の時間短縮となる。
ネットワークの強化で1号環状線を経由しないルート選択も可能に
現在の阪神高速の道路ネットワークは、1号環状線を中心として放射路線が広がる構造となっている。そのため、放射路線同士を往来しようとする場合、1号環状線を経由しなければならないことが多く、それが都心部の慢性的な渋滞を招く大きな要因となってしまっている。
6号大和川線の全線開通は、そうした都心部の渋滞緩和にも大きく貢献すると見られている。その理由は画像8にある通り、同線の全線開通によって1号環状線を迂回できる新たなルートが形成されるからだ。これにより、例えば奈良県から兵庫県へ向かおうとした場合、松原JCTからは14号松原線⇒6号大和川線⇒4号湾岸線⇒5号湾岸線という、1号環状線を経由せずとも移動できるようになるのである。
堺市~松原市間の一般道における渋滞緩和も期待
現在、大阪府の堺市と松原市を直接結ぶ東西方向の高速道路は存在しない。そのため、大堀堺線(府道187号)や堺大和高田線(府道12号)などの幹線道路で慢性的な渋滞が起きてしまっている。画像9は2015年度道路交通センサスを出典とした、堺市~松原市の混雑時平均旅行速度(※1)だ。大堀堺線も堺大和高田線も、混雑時平均旅行速度が時速20km未満のピンクの矢印が多く、残りの多くも時速20~25kmの青の矢印である。
しかし6号大和川線の全線開通により、交通が同線に転換されると予想されている。東西方向の一般道における渋滞緩和や事故の減少に大きく寄与するものと期待されているのだ。
奈良県の製造業にとっても大きなメリットが
さらに6号大和川線の開通は、奈良県内の製造業にも大きく寄与するという。同県の製造業にとって、船積みする場合は大阪港の利用率が9割に及ぶ。そして、松原JCTから大阪南港への所要時間は13分短縮できることは既述の通り。松原JCTには奈良県内を通るE25西名阪道が接続しており、同高速の沿線地域の製造業は、製品出荷額ベースで奈良県内の50%以上を占める。つまり、奈良県の製造業の多くにとって、6号大和川線の開通は大いにメリットがあることなのだ。
CO2やNOxなども大きく削減して周辺環境にプラス
そのほか、6号大和川線の開通で、並行して走る東西方向の一般道の渋滞が緩和されれば、周辺地域の環境面も大きく改善すると見込まれている。CO2の排出量は、年間約6.8万トンの削減になり、仁徳天皇陵約747個分の面積の森林が吸収するのに等しい効果があるという。そしてNOxは年間80トンの削減(開通前より約24%減少)で、SPM(浮遊粒子状物質)も年間約5.8トン削減(開通前より28%の減少)になると試算されている。
→ 次ページ:
日本初の技術を2種類採用
大地震に備えた新開発の「損傷制御型鋼製セグメント」
6号大和川線は上町断層系と交差していることから、同断層系を震源とする兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を超える大地震を想定した新技術が投入されている。部分的に損傷を制御し、地震のエネルギーを吸収することで、シールドトンネル全体の損傷を防げる「損傷制御型鋼製セグメント」だ(画像10)。
「損傷制御型鋼製セグメント」は「軸力伝達材」と「変位吸収材」で構成されており、例えるなら、シールドトンネルの一部がダンパー構造のようになっているということ。軸力伝達材は縮むことでシールドトンネルに加わるエネルギーを吸収し、変位吸収材は変形してもセグメントの形状を保持するという仕組みだ(画像11)。
常磐出口(東行き)では国内初の矩形シールドトンネルマシンで掘削
シールドマシンは、地中を掘り進みやすいことと、トンネルとして構造力学的に圧力に強いことから円形をしているものが一般的だ。しかし円形であることでの課題もある。高速道路として必要な空間を確保するためには、矩形(ハコ型)と比べると大きく掘らないとならないという点だ。それだけ用地を必要としてしまうということである。
6号大和川線の常磐出入口は、大阪高石線(府道28号)に接続しており、その下には地下鉄御堂筋線も走っている。そのため、6号大和川線のトンネルは御堂筋線をアンダーパスするために深度が20mある。常磐出入口は当初、地上から20mの深さまで開削工法で建設される予定だったが、交通量の多い大阪高石線を一定期間通行止めにする必要があるなど、交通への影響が大きいことから、シールド工法に切り換えられることとなった。
しかし今度は常磐出口(東行き)に関して、円形のシールドマシンを通せるだけの十分な幅がないことが判明(施工可能な範囲からはみ出してしまう)。そこでより狭いスペースで利用できる特殊な「矩形シールドマシン」が国内初採用されたのである(画像12)。ハコ型でも強度を保てるよう、セグメントにも工夫が施されて、常磐出口(東行き)は建設された(画像13・14)。
全線開通記念イベント「大和川線トンネルウォーク」は3月20日に実施
同イベントは、感染経路を特定できない可能性のある新型コロナウイルスの感染症例が複数認められる状況の中、多くの参加者が来場するイベントの開催は困難であるとの判断から、中止とすることが主催の阪神高速、大阪府、堺市より2月25日付けで発表されました(2月28日加筆)。
最後は、6号大和川線の全線開通を記念して、沿線地域と一体で開催されるイベント「大和川線トンネルウォーク」について。堺会場と松原会場の2か所で実施される。詳細は以下の通りだ。
開催日:3月20日(金・祝)※雨天決行(荒天中止)
開催時刻:10時~16時
参加費:無料
【堺会場】
場所:鉄砲出入口(堺市堺区鉄砲町付近)より出入場
募集定員:当日自由参加
【松原会場】
場所:天美出入口(松原市天美北一丁目付近)より出入場
募集定員:3000名(事前申込制、阪神高速ホームページより)
関西圏の交通の流れを大きく変える阪神高速・6号大和川線。その効果や最新技術などを紹介した。あと2か月弱、その開通を期待して待とう。