F1&WEC&WRC、3大世界選手権の2019年を振り返ってみた
F1、WEC世界耐久選手権、WRC世界ラリー選手権、モータースポーツの3大世界選手権の2019年を順位表と共に振り返る。
F1、WEC世界耐久選手権、WRC世界ラリー選手権はFIAが統轄するモータースポーツの3大世界選手権だ。ここでは、ドライバーズランキングとチームランキングの両方の順位表を掲載し、2019年がどのようなシーズンだったのか、また日本勢がどう活躍したのかを振り返ってみよう。
2019年もメルセデスのハミルトンが強かったF1
オープンホイールのシングルシーターのレーシングカーである「フォーミュラカー」。その最高峰であるF1は、2019年に全20戦が開催され、11勝を挙げたメルセデスのルイス・ハミルトン(34歳・画像1)が、合計413点で王者となった(画像2)。2017年からの3連覇達成で、通算では6度目。歴代最多で7度の王座に輝いたミハエル・シューマッハ(引退)に迫っている。またハミルトンは通算勝利数を84勝に伸ばし、こちらもまた歴代最多のシューマッハ(91勝)を射程にとらえたといえるだろう。
また2019年はこのほかにハミルトンのチームメイトであるバルテリ・ボッタスが4勝、レッドブル・レーシング・ホンダのマックス・フェルスタッペンが3勝、フェラーリのシャルル・ルクレールが2勝、そのチームメイトのセバスチャン・ベッテルが1勝を挙げた。
ポイント制度はドライバーとコンストラクターと共通で、画像3の通りだ。
2019年のF1には10チームが参加し、コンストラクター(製造者)選手権が競われた。1チーム2台の合計得点が加算されるので、1レースで最大43点の獲得が可能だ。メルセデスはハミルトンとボッタスが「W10」(画像4)を駆って20戦中15勝を達成。739点を獲得して5連覇、通算6度目の王座に輝いた(画像5)。
日本勢はレッドブル・レーシング・ホンダが417点で3位、レッドブル・トロロッソ・ホンダ(スクーデリア・トロロッソ・ホンダ)が85点で6位となった。ホンダは今シーズンからトップチームのレッドブル・レーシングと組んだことで、第4期初勝利を挙げることに成功。合計3勝を挙げ、通算74勝となった。2019年は、ホンダが上位陣として久々に活躍したシーズンだったのである。
2020年のF1は、3月13日(金)~15日(日)開催のオーストラリアGP(メルボルン/アルバート・パーク・サーキット)から開幕だ。
→ 次ページ:
続いてはWEC
WECはトヨタがシーズン初制覇&ル・マン初優勝。中嶋一貴は自身初の世界王者に
プロトタイプ・レーシングカー2クラスと、スーパーカー/GTカーベースのレーシングカー2クラスによる合計4クラスの混走で競われるWEC世界耐久選手権。世界3大レースのル・マン24時間レースを擁する選手権としても知られている。
TOYOTA GAZOO Racingは、WECに2012年から参戦しており、2018-19スーパーシーズンはライバル不在の速さを見せつけた。中でも、中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ組(画像6)の8号車は8戦中5勝を挙げ、198点を獲得して世界王者に。結果、中嶋一貴(画像7・34歳)は自身初の世界王座を戴冠した。チームメイトの小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペス、マイク・コンウェイ組の7号車は2勝を挙げ、157点でシーズン2位となった。
また2018-19スーパーシーズンは、毎年6月に開催されるル・マン24時間レースを最終戦とするため、シーズンの開始時期を調整するための”スーパー”なシーズンだった。そのため、特別に1シーズン中にル・マン24時間レースが2回も開催されたのである(第2戦と最終第8戦)。そしてその2回とも制したのが8号車のトリオだ。これにより、中嶋一貴は「日本車でル・マンを制した初の日本人」や「ル・マン2連覇を達成した初の日本人」、「日本人初のWEC世界王者」など、日本人としていくつもの「初」を達成した。
WECの得点システムは、F1とは大きく異なる(画像8)。WECは耐久レースのため、2人もしくは3人でチームを組んで走るからだ。そのため、F1のように個人でランキングを競うのではなく、チームメンバーと共に競う形となる。ただし、必ずしも1シーズンを固定したメンバーで走るチームばかりではないため、同じレーシングカーに乗っていても、得点が異なるドライバーも多い。
そして得点システムは画像9の通り。セブリング1000マイルレース(1000マイル=約1600km、東京~広島を往復する距離)と、ル・マン24時間レースは通常のレースよりも長丁場であることから得点が高く設定されている。また毎戦11位以下でも完走した全選手が得点できる点もWECの特徴だ。予選も重視しており、ポール・ポジション(PP)を獲得したマシンに乗る全選手に1点ずつが加算される。
WECの4クラスのうち、TOYOTA GAZOO Racingが参戦するのは、プロトタイプ・レーシングカーが参戦する最上位のLM P1クラスだ。その下には同じプロトタイプ・レーシングカーだが性能が低いLM P2クラス、さらにその下にはスーパーカー/GTカーベースのレーシングカーで走るLM GTEクラスがある。LM GTEは参加するドライバーのレベルでLM GTE-ProとLM GTE-Amaに分けられている。
WECでのチームポイントは、1レースで参戦したマシンの台数分を合計するのではなく、そのチームの最上位車の得点だけを加算する。チームランキングはクラスごとに設定されており、LM P1の王座は7号車と8号車で合わせて8戦中7勝し、216点を挙げたTOYOTA GAZOO Racingが獲得した(画像10)。
WEC2019-20シーズンは第4戦が終了してトヨタの1-2
続いては、WEC2019-20シーズンについて。今シーズンから夏の終わりに始まって翌年6月半ばのル・マン24時間レースで終わるという年をまたぐ形で開催されるようになった。TOYOTA GAZOO Racingは今シーズンもLM P1クラスに唯一ハイブリッド車「TS050 HYBRID」(2019年仕様)で参戦しており、チャンピオン候補最右翼だ。実際、第1戦シルバーストーン4時間レース(英国)は7号車が、第2戦富士6時間レース(日本)は8号車がそれぞれ勝利し、順調な滑り出しを見せた。
しかし、2019-20シーズンはハイブリッド車に対してこれまでにない厳しい性能調整が施されており、ノンハイブリッド車との性能差を抑制している。さらに、前戦の獲得ポイントによって性能調整が行われるサクセス・ハンディキャップが導入されたことから、第3戦上海4時間レースでは、さすがの「TS050 HYBRID」も勝てず、2-3位フィニッシュとなった。
12月14日(土)に決勝が行われた第4戦バーレーン8時間レース(画像11)もレベリオン・レーシングの追撃が予想されたが、蓋を開けてみればTOYOTA GAZOO Racingによる今シーズン3回目の1-2フィニッシュ。7号車の小林、ロペス、コンウェイ組が2勝目を挙げてトップの97点で2020年を迎えることとなった(画像12)。中嶋らの8号車はアロンソが抜けて新たにブレンドン・ハートレーが加わり、89点で2位につけている(画像13)。
ポイント制度は2018-19シーズンから変更があり、さらに長距離のレースに比重が置かれるようになった(画像14)。
2019-20シーズンのLM P1クラスは参戦車両が少なく、実質的にTOYOTA GAZOO Racingの2台に対し、どれだけノンハイブリッド車のレベリオン・レーシングが迫れるかが焦点となっている。3位のチームLNTはこれまでのところ順位以上の差があるといわざるをえず、「TS050 HYBRID」に食らいついていくのは難しそうだ。
2020年最初のレースは、2月22日(土)・23日(日)に米テキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われる第5戦ローン・スター・ル・マンだ。
→ 次ページ:
最後はWRC
WRCもトヨタが活躍! オィット・タナックが遂にドライバーズ王座を獲得
WRC世界ラリー選手権は、公道に設定された競技区間を1台ずつラリーカーでタイムアタックし、誰が最も速く走れるかを競う内容だ。トヨタは20世紀に20年以上もWRCに参戦していたが、F1参戦のために1999年限りで撤退。そして18年ぶりとなる2017年に「ヤリスWRC」(画像16)で復帰したのだった。その年に早くも勝利を挙げると、2018年にはラリーのチーム選手権であるマニファクチャラーズ王座を獲得した。
そして、ドライバーズとマニファクチャラーズのダブルタイトル獲得を目指して臨んだ2019年。結果は全13戦(最終第14戦ラリー・オーストラリアは森林火災の影響で中止)で6勝し、263点を挙げたオィット・タナックが王座を獲得した(画像17・32歳)。2018年まで6連覇していた”帝王”ことセバスチャン・オジェらを突き放し、見事なドライバーズ王座獲得だった(画像18)。このほか勝利を挙げたのは、ティエリー・ヌービルとオジェが3勝ずつ、ダニ・ソルドが1勝だ。
WRCの選手権には、ドライバー選手権と、その相棒で助手席に同乗してペースノートを読み上げるコ・ドライバー選手権、そしてメーカーを対象としたマニファクチャラー選手権がある。ドライバーとコ・ドライバーの両選手権は、1~10位までにF1と同じ得点が与えられる(画像19)。
そして、F1にないのがボーナスポイントを獲得できるパワーステージの存在。各大会のパワーステージ区間のタイムで、上位5選手に順位の高い順に5点から1点までが与えられる。これにより、ドライバーとコ・ドライバーは各大会で最大30点を獲得できることになる。ただし、マニファクチャラー選手権にはこのボーナスポイントはつかない。
またマニファクチャラー選手権は、マニファクチャラーがあらかじめ登録した3選手のうち、上位2選手の得点が加算される。TOYOTA GAZOO Racingはタナックの奮闘はあったがマニファクチャラーズは伸び悩み、362点で2位となり、2連覇達成はならなかった(画像20)。
ちなみに1位のヒュンダイとは18点差あったが、TOYOTA GAZOO Racingが最終第14戦で1-2-3フィニッシュを達成すれば逆転して自力での王座獲得の可能性もあっただけに(※1)、第14戦が中止になったことは残念だった。
WRCの2020年は早くも1月から始まる。23日(木)~26日(日)に開催される、伝統の第88回ラリー・モンテカルロが開幕戦だ。