実車モデルが増えてきた最近のミニ四駆事情
自走可能なクルマの小型プラモデル「ミニ四駆」は1980年代初頭にデビューし、すでに40年近い歴史を持つ。これまでオリジナルデザインのクルマが主流だったが、近年は実車をモデルにした製品が登場し、注目されている。
タミヤの人気ホビー・ミニ四駆(画像1)は、単三電池2本で自走する1/32スケールのクルマのプラモデル。本体価格は1000~2000円台で、子どもでも買い求めやすいことから、1980年代初頭の発売よりこれまで幾度かのブームが訪れ、今でも人気を誇る。
別売のコース用パーツを組み合わせて自由にサーキットを組み立てることができ、複数台によるレースが可能だ。さらに、マシンのさまざまなパーツを交換することで性能をアップさせられ、チューニングも楽しめる。そんな要素を備えていることも魅力となり、実は大人もハマる奥の深いホビーだ。
近年は実車をモデルにした製品が増えつつある
ミニ四駆は、少年マンガとそのアニメで人気を博したことなどもあり、基本的には子どもたち目線を意識したオリジナルデザインのクルマが多い(画像2)。しかし近年は、レーシングカーや市販車など、実車をモデルとした製品もリリースされるようになってきた。
9月に開催された全日本模型ホビーショーでは、TOYOTA GAZOO Racingの「TS050 HYBRID」や「ヤリスWRC」、トヨタ「GRスープラ」(画像3)など、実際のレーシングカーやラリーカー、そして市販スポーツカーなどをモデルとしたミニ四駆が展示されていた。
TOYOTA GAZOO Racingは、レーシングカーやラリーカーが子どもたちの人気を得てこそ、日本においてモータースポーツが真の人気を得ていくと考えているのだろう。これらのミニ四駆だけでなく、この11月から12月にかけてはレーシングカー「TS050 HYBRID」のラジコン(画像4)やスケールモデルなどの新商品が複数ラインナップされている。
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ミニ四駆ならではの勝負も!
ミニ四駆なら「TS050 HYBRID」と「ヤリスWRC」の対決も可能!
TOYOTA GAZOO Racingは現在、WEC世界耐久選手権と、WRC世界ラリー選手権に参戦している。WECに2016年から参戦させているプロトタイプ・レーシングカーが「TS050 HYBRID」(画像5)で、WRCに2017年に復帰した時から参戦させているWRカー(※1)が「ヤリスWRC」(画像6)だ。
「TS050 HYBRID」は2018-19スーパーシーズンでドライバーズとチームのダブルタイトルを獲得したマシン。「ヤリスWRC」も2018年にマニファクチャラーズを獲得したのに続き、2019年は遂にドライバーズ王座に輝いたマシンだ。
王者マシン同士で勝負させてみたいところだが、レギュレーションが大きく異なるので、イーブンな条件は難しいのが現実。何しろ、「TS050 HYBRID」はサーキット専用に開発された1000馬力もあるハイブリッド・レーシングカーだし、「ヤリスWRC」は悪路を全開で駆け抜けられるよう市販コンパクトカー「ヤリス」(※2)をベースに開発されたラリーカーだからだ。
ただし、ホビーなら話は別だ。幸いなことにミニ四駆には「TS050 HYBRID」だけでなく、「ヤリスWRC」もラインナップされており(画像7)、夢の対決を行えるのだ。
「TS050 HYBRID」も「ヤリスWRC」も、ミニ四駆PROシリーズの製品だ。ABS樹脂製の「MAシャーシ」にポリカーボネイト製のボディカウルを被せて本体を完成させる(基本的に塗装の必要はなく、ヘッドランプやウインドーなどもステッカーを貼るだけで済む)。動力は単三電池2本で動作するモーターで、性能的に同一。ボディカウルの重さも大差ないと思われ、走行性能の差はほぼないものと思われる。
唯一差があるとしたら、実車同様に「TS050 HYBRID」の方が空力的に有利そうに見える点だ。しかし、ホビーショーのブースでスタッフに聞いてみたところ、ミニ四駆の速度域では空力性能の差はほとんど出ないとのこと。つまり空力的にもイーブンであり、どちらが速いかはまさに勝負してみないとわからないようだ。あとは、どれだけ自機(愛車?)に愛情を注いだかで差がつくのだろう。
そもそも、レーシングカーとラリーカーで勝負をするという発想自体がナンセンスかもしれない。例えるなら、同じ球技とはいえ、野球とサッカーのチームでどちらが強いかを比べるようなものだろう。
しかし、どうしても「TS050 HYBRID」と「ヤリスWRC」のどちらが速いのか見てみたい人もいるはず。その時は、ミニ四駆で決着をつけてみるのもありなのではないだろうか。