トヨタ・ウェルキャブ編:第46回国際福祉機器展(1)
2019年で第46回を迎えた、数々の福祉機器が出展される国際福祉機器展。毎年多くの国内自動車メーカーも出展しており、今年も3大メーカーなど半数以上が出展した。
今年もダイハツと共同で出展したトヨタ。同社の福祉車両「ウェルキャブ」は大別して、車いすの利用者がシートに乗り降りするのをサポートするタイプ、車いすのまま乗り降りできるタイプ、自身での運転をサポートするタイプの3種類がある。そのほか、介護施設などで利用しやすいよう、ベース車両からシートをひとつ外したりステップを設けたりするなどして、多人数の送迎をしやすくしたタイプもある。
自身で運転するのをサポートしてくれるフレンドマチック取付用専用車
フレンドマチック取付用専用車は、車いすの利用者が自分自身で運転できるようサポートする仕組みを持つ。ベース車は「プリウス」と「アクア」の2車種。どちらも装備が異なるタイプI~IVがあり、全タイプ共通装備が専用パワステとバックドアストラップ。そしてタイプIとIIには助手席前倒し機構&操作ストラップが備えられ、タイプIIIとIVにはウェルキャリーが備えられている。またタイプIIとIVにはリモコン式専用運転席パワーシートを装備している。上画像はタイプIVだ。
車いすを電動で収納してくれる装備が、ルーフに備えられたウェルキャリーだ。内部にボディ保護プロテクターと吊り上げベルトがあり、それを降ろして車いす座面のベルトに吊り上げベルトのフックをかけるだけでよく、上げ下ろしはすべてリモコンで操作可能だ。車いすの利用者が運転席に移乗した後、車いすを容易に収納でき、目的地に着いたらまたすぐ運転席の横に車いすを下ろせて移乗しやすいという装備である。
エアサス搭載による車高降下でスロープ角度は9.5度!
車いすに座ったまま乗り降りできるタイプは、大別してスロープタイプとリフトタイプの2種類がある。トヨタのスロープタイプの大きな特徴は、スロープの登坂角度がわずか9.5度しかないこと。電動ウィンチで車いすの引き上げを採用した場合、スロープの角度が10度以上の車種も少なくない。
しかしトヨタでは、電動ウィンチが故障したときに登坂角度が10度以上もあると、利用者が座った状態の車いすを押し上げる介助者に大変な労力を強いることから、スロープの登坂角度を浅くして手動での乗り降りを行いやすくするという考え方を採用している。今回出展されていたメーカー系のスロープタイプの中では最も浅い角度だった。
9.5度を実現するために手が加えられた部分は大別して3か所。まず、リアサスペンションがエアサスに交換された。これにより、ボタンひとつで後輪の車高を下げられる車高降下(ニールダウン)機能を備えたのである。それに加え、車内後部のフロアをリアに向かって低くなるよう傾斜させているため、開口部をさらに低くできる。その上、リアバンパーが分割されていて、スロープの幅だけ可倒式にしてある。これらにより、利用者が車いすに座ったままでも手押しで乗せることが可能なのだ。
ちなみに数多くの車いすで乗れるが、上画像の専用タイプを利用すればワンタッチでフロアに固定することが可能だ。
車いすのまま最大4人が乗れる「ハイエース」ベースのリフトタイプ
もうひとつの車いす仕様であるリフトタイプは、「ハイエース/レジアスエース」がベース車両だ。ボディサイズは、ロング・標準ボディとスーパーロング・ワイドボディが用意されている。利用者が座ったままの車いすを最大4台まで搭乗できるタイプなど、車内レイアウトは複数を用意。また利用者の要望に応じて車内各所にはハンドレール、グリップ、保護カバーなどの装着が可能だ。
そしてリフトはスイングアーム式を採用。張り出しの長さは1800mm、車いすが乗るプラットフォームは奥行き1200×幅790mm、耐荷重は最大250kgとなっている。プラットフォームへの固定は4か所のフックを使って行い、固定が問題なく完了したことをブザーが知らせてくれるようになっているなど、安全を重視した設計。またプラットフォーム後部の短いスロープは、リフト稼働時に前に立てることで転落防止ストッパーとなる。
福祉車両は販売台数がとても少なく、実はどのメーカーにとっても採算面で難しい車種だ。トヨタであっても全車種にあらゆるタイプの福祉車両を設定できるわけではなく、用途ごとに車種を絞っている。しかし、そうした中でも他社にない独自のコンセプトでもって福祉車両を開発しているのがトヨタだ。万が一家族や、自分自身が車いすを利用するような事態となったとき、車いすでも乗りやすいクルマ、自分でも運転できるクルマがあることは非常に心強い。福祉車両があることが安心や希望につながることを強く感じられたトヨタブースあった。