埼玉県警交通機動隊のインプレッサ WRX STiパトカー
当サイトでは“カッコいいパトカー”を紹介しているが、オートジャンボリー2019で埼玉県警が展示していたのが、「こんな巨大なリアスポイラーを装着したパトカーなんてあるの!?」という1台。もはや、ラリーカーといってもいいスタイリングをしたスバル「インプレッサ WRX STi」ベースのパトカーだ。その迫力のスタイリングを紹介する。
今回紹介するのは、埼玉県警交通機動隊に2台配備されている、スバルの2代目GDB型「インプレッサ WRX STi」2003年式をベースにしたパトカーだ。現在、「WRX」は独立した車種となっているが、最初は2代目「インプレッサ」のセダンに与えられたシリーズ名だった(「インプレッサ」はセダンとステーションワゴンの2系統がある)。
そしてSTI(当時はiを小文字にして「STi」とも表記していた)とはスバル・テクニカ・インターナショナルのことで、スバルのパフォーマンス/モータースポーツ部門のこと。スバルとSTIは当時、WRC世界ラリー選手権を戦っていた。このSTIの名が入ったスバル車はそうしたモータースポーツで鍛えられた技術が導入され、走行性が大きく高められているという証なのだ。
ちなみに、2代目「インプレッサ」が登場したのは2000年8月のこと。そして初代同様に「WRX」の中に「STi 」モデルが追加されたのは、その2か月後のことだった。その後、「インプレッサ」は2002年11月のビッグマイナーチェンジが行われ、多岐にわたって性能が強化されると同時に、デザインも一部が変更。今回のパトカーは2003年式ということなので、ビッグマイナーチェンジを受けた後のモデルだ(2003年9月のさらに一部改良が施されたことから、そちらの可能性もある)。
「インプレッサ WRX STi」専用に開発されたメカニズム
「インプレッサ WRX STi」は、単に「インプレッサ WRX」の足回りを固めてマフラーを大径化したというようなレベルのクルマではない。エンジンでは、セミクローズドデッキ型シリンダーブロックや押しねじ式コンロッドの採用、ピストン冠面の形状変更などが行われるなど、数々の専用設計が施された。それによりエンジン自体の強度や剛性が高められ、また軽量化も実現したのである。
そしてターボは排気ガスの流路を2分割構造とし、タービンの稼働効率が向上するツインスクロールターボを採用。これによりタービンを小径化でき、アクセルレスポンスの向上(ターボラグの解消)も実現。さらにターボの出力を上げるため、インタークーラーやボンネットのエアインテークも大型のものに変更され、より冷却効果が高められた。
さらに、駆動系では剛性をより高めた新開発の6速トランスミッションを搭載。「インプレッサ WRX」の中で、6速MT車はこの「インプレッサ WRX STi」だけである。またスバルのMT車としては初となる電子制御式4WDシステム(当時はAWDとはいわず、4WDだった)の「ドライバーズ・コントロール・センター・デフ(オートモード付き)」を搭載した。センターデフの効き具合をドライバーが調節でき、トルクを前輪と後輪のどちらにより多めに割り振るかが調節できる仕組みだった。EJ20型エンジンと6速MTなどの組み合わせは、8000rpmのレッドラインまで引っ張ると、1速で時速65km、2速で時速95km、3速で時速130kmという速度を出せた。
空気抵抗の低減と冷却効果を追求したフロントデザイン
2002年11月のビッグマイナーチェンジでは、空気抵抗を減らすことを目的に、フロントバンパー、フロントフードの傾斜が強められた。ボディ先端からフロントウインドーまでを連続感のある滑らかな形状としたのである。また、冷却効果を高めるため、フロントバンパーの開口部も形状が変更された。
ラリー直系のマシンともいえる車種だったGDB型「インプレッサ WRX STi」。15年以上前の車両ではあるが、今でも性能もスタイリングも色あせていない1台である。