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最終更新日:2019.08.28 公開日:2019.08.28

レジェンドカップ19、往年の名ドライバーが富士でバトル

下は66歳から上は85歳まで、平均年齢74.7歳という往年の名ドライバーたち15人が今年も富士スピードウェイに集結し、「AIM The Legend's Club Cup 2019」で熱いバトルを繰り広げる。レジェンド レーシング ドライバーズ クラブが開催記者会見を8月21日に実施。参加予定ドライバーの半数も出席し、その意気込みを語った。

会見に参加した「AIM The Legend’s Club Cup 2019」の参戦ドライバーによるフォトセッション。前列左から、長谷見昌弘副会長(74)、黒澤元治さん(79)、大久保力会長(レースには参加しない)、戸谷千代三さん(70)、柳田春人さん(69)。後列左から、鮒子田寛副会長兼実行委員長兼リザーブドライバー(73)、寺田陽次郎さん(72)、多賀弘明さん(85)、高橋国光さん(79)、高橋晴邦副会長(今年も昨年同様に解説担当の予定)、片桐昌夫さん(80)。参加予定ドライバーのみ年齢も記した。

 今回、「AIM The Legend’s Club Cup 2019」(以下、レジェンドカップ)の発表を行ったレジェンド レーシング ドライバーズ クラブ(LRDC)とは、モータースポーツにおけるプロ野球の名球会のような組織で、基本的に現役を引退した、以下のような条件の往年のドライバーが入会している。

●1973年(第1次オイルショック)以前の主要ワークスドライバーおよび海外挑戦者
●1973年から始まった全日本F2000からフォーミュラ・ニッポンまでの国内トップフォーミュラ歴代王者
●富士GCシリーズ歴代王者
●全日本耐久選手権/JSPC王者
●そのほか国内モータースポーツの発展に大きく寄与したレーシングドライバー

 日本のモータースポーツは、欧米諸国に比べると数十年から半世紀ほど歴史が浅いのだが、それでも50年を超える。1962年に鈴鹿サーキットがオープンし、翌63年には第1回日本グランプリ(F1とは異なる)が開催。それから今年で56年になる時間が積み重ねられてきたのだ。その時に参戦したドライバーは20歳だったとしても今年で76歳である。

 そんな日本のモータースポーツの歴史を支えてきたのが、レーシングドライバーたちだ。特に初期のレースは文字通り命がけだった。実際、将来を期待されながらも何人もの若きレーシングドライバーが命を落としていった。しかし、そんな危険な状況であっても逃げずに走り続けたレーシングドライバーがいたからこそ、今日の日本のモータースポーツがあるのである。そうした名レーサーを讃え、そして過去のモータースポーツの歴史を後世に伝えていく組織としてLRDCは誕生したのだ。

 そして2018年11月、往年の名ドライバーたちによる「AIM The Legend’s Club Cup」を実施。非常に好評を持って迎えられたことから、2回目が実施されることになったのである。

LRDCの大久保力会長。将来的には「AIM The Legend’s Club Cup」を発展させるだけでなく、高齢者の交通事故の問題などに対しても何らかの活動を行えないか考えているとした。右は副会長であると同時にレジェンドカップの実行委員長であり、さらにはリザーブドライバーでもあることからレースにも参加する可能性がある鮒子田寛氏。

レースは富士スピードウェイを8周

開催サーキットの富士スピードウェイがレジェンドカップも主催。画像は2008年に撮影。霧が出やすいことでも知られる富士スピードウェイだが、晴れるとこのように富士山が間近に見える。画像は、第1コーナーの奥からメインストレート方向を撮影した。現在、第1コーナーはTGRコーナーと呼ばれ、TOYOTA GAZOO Racingの大きなロゴがコーナーの縁石とサンドトラップの間のエスケープゾーンにペイントされている。

 レジェンドカップの開催サーキットは富士スピードウェイ。全長4563m、国内最長の1475mのメインストレートを有する、かつてはF1が開催されたこともある国際格式のサーキットだ。10月19日(土)が練習走行および予選が行われ、翌20日(日)が決勝である。当日は、「富士チャンピオンレース」というレースイベントが行われ、その中のレースの1戦としてレジェンドカップは開催される。レースは8周で行われ、現時点で15人が参加の予定だ。スタート方式は、予選時の順番でまず隊列走行を1周してタイヤを温め、そして走りながらスタートを切るローリングスタート方式だ。静止状態からスタートするスタンディングスタート方式は接触などの危険性があることから採用されなかった。

マシンは国産レーシングカー「VITA-01」を借用

 マシンは、三重県鈴鹿市のレーシングカーコンストラクター・ウエストレーシングカーズ社製の「VITA-01」のみを使用。つまりワンメイクレースである。タイヤは横浜ゴムの「ADVAN NEOVA」、ホイールもTWSWS(TAN-EI-SYA WHEEL SUPPLY)製のワンメイクだ。実はこの「VITA-01」は、女性ドライバー限定のプロレースシリーズ「競争女子!KYOJO-CUP」で使用されているマシンであり、オーナーから借りて行われる(同日、競女2019シリーズ第3戦も開催)。スペックは以下の通りだ。

全長×全幅×全高:3712×1600×1070mm
ホイールベース:2200mm
トレッド(前/後):1390/1440mm
シャシー:セミモノコックフレーム+スペースフレーム
エンジン:トヨタ「1NZ-FE」(かつて3代目「ヴィッツ」に設定されていたレース向けグレード「RS」に搭載されていたエンジン)
エンジン種類:排気量1496cc・直列4気筒DOHC
最高出力:109ps/6000rpm
最大トルク:138N・m/4400rpm
トランスミッション:「ヴィッツ RS」用5速
ブレーキ:全輪4ポッドアルミキャリパー/全輪ベンチレーテッドディスク
最高速度:時速200km弱(リミッターが作動)

「VITA-01」。競争女子で使われているマシンで、シングルシーターのオープンボディ。カウルは3種類あり、これはAタイプ。「モータースポーツジャパン2017」競女ブースにて撮影。 ちなみ2019年の競女のトップ選手は、富士スピードウェイを予選で2分1秒台、決勝で2分2秒台で走行。

そうそうたる顔ぶれの参加予定ドライバーたち

 昨年は17人で競われたが、今年は15人で行われる。リザーブドライバー1名を含め、参加ドライバーは以下の通りだ。簡単ながら(4輪)デビュー年と経歴もまとめた(五十音順・敬称略)。

大岩湛矣(おおいわ・きよし)・80歳:1964年第2回日本グランプリにてデビュー。TOM’Sの共同設立者。※
岡本安弘(おかもと・やすひろ)・77歳:1967年にデビューし、マツダワークスにて活躍。ル・マン24時間レースにも挑戦。
片桐昌夫(かたぎり・まさお)・80歳:1965年デビュー。第15回マカオGPでは総合5位・クラス優勝を獲得。※
黒澤元治(くろさわ・もとはる)・79歳:日産ワークスドライバーとして1965年に4輪デビュー。73年全日本F2000王者など。後に初代「NSX」の開発ドライバーを務めた。
桑島正美(くわしま・まさみ)・69歳:1969年デビュー。72年に渡英し、欧州F3、F2で活躍し、帰国後も国内フォーミュラなどで活躍。
清水正智(しみず・まさとも)・72歳:1965年、今はなき船橋サーキットでデビュー。国内トップカテゴリーで活躍した。
関谷正徳(せきや・まさのり)・70歳:1972年にデビューし、国内トップカテゴリーで活躍。日本人初のル・マン24時間レース優勝者。
高橋国光(たかはし・くにみつ)・79歳:日本人初の2輪世界GP優勝者。1964年に4輪に転向し、2輪・4輪で通算71勝を挙げるなど、国内トップカテゴリーで大いに活躍した。
多賀弘明(たが・ひろあき)・85歳:1963年の第1回日本グランプリでクラス優勝。JAFスポーツ委員会のメンバーなども。実は現役のドライバーでもあり、現在もマイナーレースに参戦中。
武智勇三(たけち・ゆうぞう)・79歳:1965年デビュー。ダイハツ・ワークスドライバーとして、プロトタイプカーで活躍した。
寺田陽次郎(てらだ・ようじろう)・72歳:1965年デビュー。マツダワークスドライバーとして活躍し、ル・マン24時間レースには29回出場、複数回のクラス優勝を獲得。「ミスター・ル・マン」と呼ばれる。※
戸谷千代三(とたに・ちよみ)・70歳:1973年デビュー。主に耐久レースを中心に活躍した。
長坂尚樹(ながさか・なおき)・66歳:1972年デビュー。73年鈴鹿シルバーカップ王者のほか、84年全日本耐久選手権、85年・87年の全日本ツーリングカー選手権王者。
長谷見昌弘(はせみ・まさひろ)・74歳:1964年4輪デビュー。日産ワークスドライバーとしてデビュー戦に勝利。76年の「F1世界選手権・イン・ジャパン」にはコジマからスポット参戦。同クラブ副会長。 ※
鮒子田寛(ふしだ・ひろし)・73歳:1965年ホンダワークスドライバーとしてデビュー。70年からは米国など海外のレースに参戦して活躍した。LRDC副会長であり、レジェンドカップ実行委員長。 ※※
柳田春人(やなぎだ・はると)・69歳:1969年デビュー。「雨の柳田」「(フェアレディ)Z使い」として知られる。80年・83年のスーパーシルエットレース王者など。
※ 初参戦(4人)
※※ リザーブドライバー

会見に参加したドライバーのコメント

 レジェンドカップ開催会見には複数名の参加予定ドライバーが参加し、レースに対する意気込みを語った。さすがに、現役当時のようにギスギスした真剣勝負は考えていないようで、お客さんと共に楽しむというスタンスである。

片桐昌夫氏。「今回、LRDCに入りまして、レースにもチャレンジしたいと思います。よろしくお願いします」

黒澤元治氏。「30数年前にホンダと初代『NSX』の開発をしまして、来年30周年になるのですが、この30年、オーナーたちとスポーツドライビングということで、その素晴らしさを楽しんでもらってきました。その中で実際に自分も走ってその素晴らしさを再確認するという意味と、自分自身が楽しみたいということで、また今年も走りたいと思います。スポーツドライビングの楽しさが、誌面やインターネットを通じて少しでも広げてもらえればと思います」

高橋国光氏。「参加したいのですが、実は健康状態がよくないので、まだ何ともいえません」

多賀弘明氏。「お暑いところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ご覧いただきましたように私は参加者中最高齢でして、ただいま85歳とちょうど6か月になります。とはいいましても、特別、自分では80歳を超えても何とも思っていない部分もありまして、8月末には信州で毎年恒例の軽自動車のレースに参加して、1時間走る予定です。モータースポーツを広げていくためにも、自分の中で火を消したくないという思いがあります。そうしたことから、参加させていただきます。今年もよろしくお願いします」

寺田陽次郎氏。「昨年はイベントが重なってしまって、出たくても出られなかったのですが、今年はスケジュール的に問題がないので参加させていただきます。僕個人としては、もっと長いレースをしたいという思いがありますが、いずれにしろ楽しみにしております。よろしくお願いします」

戸谷千代三氏。「昨年、28年ぶりにレースに参加しまして、クルマがとても難しかったです。今年は昨年の雪辱を果たしたいと思います」

長谷見昌弘氏。「自分も寺田君と一緒に別のイベントに出ていて出られませんでした。とにかく一生懸命走ります。8周ですからね(笑)」

柳田春人氏。「子どもがお世話になっております(笑)。昨年も出場しましたが、こんなに(ドライビングが)難しいクルマでレジェンドカップをやっていいのかというほど手強いマシンでしたね。皆さん、気をつけて運転しましょう」

 当初、年齢によるハンディキャップの話もあったという。しかしそれはなくなり、全員が同一条件の下に走ることとなった。参加予定の15人の平均年齢は74.7歳(リザーブドライバーの鮒子田副会長兼実行委員長も含めると、74.6歳)。往年の名レーサーたちによる熱いバトルを期待したい。

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