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最終更新日:2019.08.16 公開日:2019.08.16

子どもの車内閉じ込め。JAF救援要請は200件以上

子どもを車内に残したままロックして保護者がクルマを離れてしまう行為があとを絶たないようだ。JAFが7月24日に発表したデータによると、昨年8月の1か月間で、車内に子どもが残されたままだった救援要請件数は、全国合計でなんと200件以上だったという。この時期、日中の車内は生死に関わる高温になる。子どもだけを車内に残してその場を離れる危険性について、改めて認識したい。

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 クルマは、構造的にビニールハウスのような温室効果があるため、真夏の炎天下で窓を閉め切っていると、あっという間に車内温度が上昇する。JAFでは2012年に、8月の日中(12時から16時)に、炎天下に停車したクルマの車内温度を計測するユーザーテストを実施。それによれば20~30分で40℃を超え、その後も上昇は止まらない。黒のように太陽光を吸収しやすいボディカラーの場合は1時間もかからずに50℃を突破してしまったのである。太陽光を反射しやすい白であっても、2時間ほどで50℃に達してしまうことが確認されている。

 真夏の車内温度の上昇を決定的に防止できる方法は、ほぼないといっていい。同テストでは比較として、窓を数cm開ける、サンシェードを利用するなどの温度上昇対策を施したクルマも炎天下に停車。その結果、温度上昇を遅くすることはできても、最終的には高温になってしまうことが確認された。仮に日陰に駐車したとしても、炎天下と比較して約7℃の差しか出ないことも判明。つまり、真夏の車内は大人でも耐えられない室温に達してしまうのは不可避である、と強く認識することが必要だ。

 それはすでに周知の事実であるはずだが、昨年のJAFの救援データを見ると、再認識を強く促す理由がわかるだろう。JAFによれば、2018年8月1日から31日までの1か月間で、「子どもを車内に残したままのキー閉じ込み」による救援要請が全国で246件もあったという。中には緊急性が高いと判断され、通常の解錠作業ではなく、ドアガラスを割るなどしたケースも8件あったそうだ。

 このように、危険な車内に子どもを残したまま大人がクルマを離れてしまうケースがあとを絶たない状況だ。置き去りにされた子どもが熱中症で死亡するといった痛ましい事件を、これ以上発生させてはいけない。それは大人の責務である。

エアコンをかけていれば安心、は大きな間違い

 子どもを車内に閉じ込めるパターンは、通常は大きく2パターンありそうだ。ひとつは、「少しくらいなら大丈夫だろう」という大人の勝手な判断で、意図的に子どもだけを車内に残して閉じ込めるパターン。もうひとつは、閉じ込める意図はないものの、何かのきっかけで車内が子どもだけになったときに、子どものイタズラなどで発生してしまう閉じ込みだ。ただ、どちらも車内が子どもだけになる時間を作ったという点では同じで、大人の配慮不足が原因であることに変わりはない。

 なかには、エアコンをかけていれば真夏でも大丈夫と思っている人も多いかもしれない。ただ、それは大きな間違いだ。まず、何かの不調でエアコンが止まる可能性がある。たとえ止まらなくても、車内はガラスを通して直射日光が入るため、車内の空気の温度は下がっていても、日光を直接受けた部分は温度が高くなる。身体に日光が当たっていると、車内は涼しくてもそれが原因で脱水症状や熱射病などになることもあるという。これは、閉じ込められた子どもだけではなく、運転中の大人にもいえることなので注意が必要だ。

 先程のユーザーテストでは、もしエアコンが切れたら、どれくらい急激に危険な状態になるかを「熱中症指数(WBGT)」に基づいて実証した。熱中症指数とは「暑さ指数」ともいい、人体の熱収支に影響の大きい気温、湿度、輻射熱の3要素から導かれる、どれだけ熱中症の危険性が高い環境であるかが確認できる指標だ。単位は「℃」を用いるが摂氏とは異なり、指数が25℃を超した段階で熱中症の危険性が高まる「警戒」領域となり、31℃を超えると生死に関わる「危険」領域となる。

JAFユーザーテストによる、熱中症指数の推移。真夏の炎天下の車内は、窓を閉め切った状態でエアコンが切れると、熱中症指数でわずか15分で危険域に突入してしまう。

 テストではエアコンを停止してから、熱中症指数がどのように変化するかが計測された。その結果、15分で熱中症指数が危険領域に突入してしまうことが確認されたのである。熱中症の危険性が高まる警戒領域への到達に至っては、わずか5分ほどだった(上グラフ参照)。つまり、何かの拍子にエアコンが切れてしまったら、コンビニでの15分の買い物でさえも車内に残した子どもは危険な状態になるわけで、決して車内に放置してはならないことを意味している。

子どものイタズラにも注意が必要だ

 では、子どものイタズラなどで、大人が意図せずに発生する閉じ込みとはどういうものか。現場での聞き取り調査によると、車内に残っていた子ども自身が誤ってロックを操作してしまったことが多いのだという。おそらく、ドライバーがちょっと外に出た瞬間に、子どもがイタズラをしてロックをかけてしまうようなパターンである。

 また中には、「あやすためにリモコンキーを持たせていたら、ロックボタンを押してしまった」というケースも。子どもは大人が大事そうにしているものほど興味を持つし、機械のボタンを押したがるものである。ただ、たとえイタズラをしたとしても、大人が一緒に車内にいればたいていはなんとかなる。とにもかくにも、子どもだけが車内に残るという状況を作らないようにすることが何よりも大切だ。


 痛ましい事故を防ぐのは実は簡単だ。大人がクルマを離れるときは、子どもも必ず連れて行くこと。それだけである。「すぐに戻るから」などという判断は、子どもを大きな危険に追いやる可能性があることを自分事として強く自覚し、大人の責務として子どもを車内に残さないことを確実に実行してほしい。

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